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2019-10-01
※2019年10月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。
新規事業創出プロジェクトにおいて、海外先進事例調査を行った際の体験談をお送りします。
少し前の情報となりますが、今春、北欧のフィンランドとエストニアのスタートアップ企業を訪問した際に、現地でデジタルサービスのフィールドスタディも行ってきました。
最初に、なぜフィンランドなのか、という質問が出そうなので回答すると、「国家レベルでスタートアップのエコシステムを有しているから」ということになります。
日本国内最大級のスタートアップイベントとしてSlush Tokyo(スラッシュ・トウキョウ)を聞いたことがある人もいると思いますが、実はもともと2008年にフィンランドで始まったものです。出展企業も若いのですが、運営組織も平均年齢22歳という若いチームにより運営されており、このこともスタートアップ企業のエコシステムの一環となっています。
本家のSLUSHには世界130カ国からの大学・企業、行政の参加があり、世界最大級のスタートアップイベントになっています。しかも、SLUSHを生み出した母体がアールト大学(旧 ヘルシンキ工科大学)に併設されたスタートアップインキュベーションセンターで、国家を上げて取り組んでいました。
もともと北欧諸国は人口も少ないうえに、国内最大企業であったノキアが経営悪化でマイクロソフトに買収されるという事実に直面し、大企業であっても安泰ではなく、世界中とつながっていかないと自国の発展もないという危機感が発端になっているように感じられました。
また、フィンランドには「失敗してもいいからとりあえずやってみる」という意識や挑戦者を周囲が支援する姿勢があり、この点も多くのスタートアップを引き付けている点ではないでしょうか。
政府の外郭団体で、企業を支援する「ビジネスフィンランド」を訪問しましたが、日本企業がフィンランド企業と日本または別の国で事業を起こすのであれば、それすらも資金的にも支援するという発言もありました。
企業がどこで活躍しようがフィンランドの国益になればよいという考えが根付いていました。
ビジネスフィンランドオフィス。日本でいう経済産業省の出先機関
MaaSで今最も注目されているといっても過言ではない、マース・グローバルは2017年からスマートフォン向けアプリ「whim(ウィム)」を提供しています。月額制で鉄道やバスなどの公共交通機関やタクシー、自転車などが乗り放題となるサービスですが、一観光客として使用してみると、単なるタクシーの配車アプリやgoogle mapとの大きな違いは感じられなかった、というが正直な印象です。
もともとは、公共交通機関のヘルシンキ地域交通局(HSL)向けのアプリからスタートしたことから公共交通機関とタクシーや自転車が一括予約できることが強みだといえますが、月額制を使用しない限りは2つのアプリで独立して予約することとそれほど利便性は変わらないためです。また、欧州だと日本とは異なり、電車とバスが同一エリアであれば紙の切符1枚で双方使用できる都市が多いことも一因といえます。
しかしながら、whimよりももっと驚いたのが、電動キックボードのレンタルサービスです。キックボードは名前のとおり子供のおもちゃの商用版だと思ってください。日本でも大学のキャンパス内や一部自治体などで実証実験を行っていますが、ヘルシンキ市内ではいたるところに電動キックボードが放置され、アプリで予約して好き勝手に使用することができました。
蓄電池で稼働し、電池の残量が20%以下など少ないものは予約できない仕組みになっているなど利便性にもこだわっているところを感じました。最高速度は19km/hで、ハンドルを握るだけで自転車と同レベルのスピードが出ます。課金の仕組みですが、レンタル開始時に基本料として1ユーロ(約120円)、その後は従量課金で1分当たり0.15ユーロ(約18円)となります。
ヘルシンキ中央駅前に停車する電動キックボード。駅の構内など特定のエリアにおいてはGPSで判定し、停車できない仕組み
タクシーの代わりに、電動キックボードで訪問企業間を移動しながらふと頭をよぎったのがEaaS(Energy as a Service)という言葉です。自分が使っているサービスはあきらかに「電気」の利用ですが、kWhを全く意識せずに時間単価で契約しています。単純計算ですが、仮にkWhで試算すると約160円/kWh程度で契約していることになります。
このサービス、短距離の移動であればバスと同程度ですが、1時間使用したとすると、1ユーロ+0.15 x 60分=10ユーロ(約1,200円)となり、レンタサイクルどころかカーシェアよりも高額になります。
このサービスの特徴を3つ挙げるとすると、
です。
今回利用したサービスは、Voi Technologyというスウェーデンの新興モビリティ企業が展開していましたが、電力・ガス企業が提供してもよいのではないかと考えました。電力・ガス企業の新サービスを考える際にエネルギーのみにとどまっていては新たな収益源は得られないため、1つの発想の転換になりました。
※補足
驚いたことにこの電動キックボードのシェアリングサービスですが、ここ1年で世界的に広まっているようで、帰国してから周囲に聞いたところ、カルフォルニアやベルリン、ソウルなどでも同様のサービスが行われているとのことでした。日本では道路交通法上の問題や、道路や公園などに無造作に放置される機材が一昔前の駅前の放置自転車を彷彿させるなど良いイメージがなく難しそうですが、ぜひ実施してほしいです。
エストニアはバルト三国の1つで、人口約130万人の小国家ですが、ブロックチェーン技術を活用した「電子国家」として有名です。
1991年までソビエト連邦に併合されていたため、独立回復時に国家の仕組みをゼロから作ることになったことを機に、国民には共通IDが付与されており、行政サービスはもとより健康情報までもが一元管理されています。
そして、最も注目を浴びているのが世界初の電子国民プログラム「e-Residency」です。誰でも100ユーロ支払えばe国民として登録でき、30分もあれば会社設立もできるとのこと。
また、電子政府のシステムをオープンにすることで「デジタル官民連携」が進んでおり、電子政府のデータ連携基盤(X-Road)と連携したサービスの数は3,000を超え、その中に多くのスタートアップも含まれていることからも、視察や業務提携の対象になっています。
例を挙げると、日本でマイナンバーを活用した健康サービスを立ち上げようとすると、大いなる規制が壁となり何年後にリリースできるかさえ見通せない状況となることは容易に想像できます。しかしながら、先行して、エストニアで実証事業を行うのであれば今年中にできる可能性もあります。
エストニアとしても、もともとITプラットフォームの輸出を狙っているという背景もあります。すでに、X-Roadはフィンランドへ提供しており、EU圏外からも引き合いがあるとのこと。そもそもエストニア国内の需要は限られているので、外資を呼び込む国家戦略のしたたかさを垣間見ることができました。
このような背景から、日本企業のエストニア視察が絶えまなく続いたこともあり、「日本人は情報収集に来るだけで、何も見返りがない」という話を聞きます。これは、とあるWeb記事が発端となっており、現地のJETRO関係者と会話した際にも本件について意見交換を行いました。
実態としては、この噂は一方的な視点であり、あまり気にしないでほしいとのこと。理由としては、きちんとしたビジネスプランをもってエストニアのスタートアップとコンタクトを行い、業務提携や出資が成立している例をいくつも見てきているからだということでした。
そして、うまくいった事例は当面は機密保持の対象となっているため対外的に会話に上ることはなく、先に挙げたような悪い噂ばかりが広まってしまっている状態となっているのではないかとコメントをいただきました。
もちろん、日本企業が単なる冷やかしで訪問しているようであれば態度を改めるべきですが、情報収集のステップは必要であり、エストニアとしても今後も受け入れていく姿勢はあります。実際に、今回訪問したスタートアップ企業も、業務提携や日本進出の可否などについて前向きに意見交換をすることができました。
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