
AI Agentの特徴と製薬企業における活用事例
生成AIの利用機会の増加に伴い実現可能なこと・不可能なことが明確になる中、実施困難なタスクや業務を解決するテクノロジーとしてAI Agentが注目を集めています。製薬企業において期待される活用事例と合わせ、AI Agentの特徴を解説します。
メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)という職業は、1960年代の米国で生まれました。MSLの役割は、KOL※1である医師、研究者との最新の治療法や医薬品についての情報のやり取りを通じて、自社製品の適正使用や最適な治療法の普及を促進することとされています。日本でも、2000年ごろから外資系製薬企業を中心にMSLを配置する動きがみられるようになり、2011年の臨床研究に絡む不正事件を契機に内資系を含む多くの企業にも浸透しました。2019年4月に運用が始まった「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(以下「GL」)」では、MSLは医薬情報担当者としてGLの適用範囲に含まれました。
このようにMSLの活動が確立しているにも関わらず、実際にはGL施行に至る過程のパブリックコメント※2にて、「我が国においてMSLは、その位置づけ及び活動が一律に定まっているものではない現状」と付されたことからもわかるように、MSLの役割はいまだ不明確であるとの認識が広くもたれています。本ニュースレターでは、MSLの先進地である米国の現状からグローバルな視点で「MSLに求められる役割」を紐解き、紹介します。
※1 KOL:Key Opinion Leader。業界内で科学的影響力を持つ医師や研究者
※2 引用元:「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(案)」に関する意見募集の結果について 厚生労働省
米国におけるMSLの役割は、「MEDICAL SCIENCE LIAISON GUIDELINES, 2018」によると(医療従事者との)科学的交流、エビデンス創出、インサイト収集とされています。しかしながら、実際の活動はKOLや研究者との関係構築、学会や医学会議への参加、営業職(Medical Sales Rep)への教育や支援と多岐にわたります。営業職の役割と比較すると、MSLが科学的データに関連した情報発信、外部との連携、教育、計画立案に携わるのに対し、営業職は売上につながる情報提供やデータ分析などに従事しており、その役割は明確に分かれています。
米国においても2000年以降、コンプライアンスや情報提供に関するガイドラインが相次いで発効されたこともあり、Medical Sales Repの人数は減少傾向にあります。一方でMSLの人数は増大し、大手製薬企業の多くは100名以上のMSLを擁しているといわれています。各MSLが担当するKOLは平均30人程度で、その顧客との関係構築においては、営業部門との連携が望まれますが、相互の理解不足が問題視されています。MSLが所属するメディカルアフェアーズ(MA)部門は営業部門と適切な関係を構築し、コンプライアンスを遵守した情報共有が求められていると言えそうです。つまり、MSLには科学的専門性とともに、コミュニケーションを含む各種ビジネススキルやコンプライアンスルールの理解が求められます。また米国においては、MSLに顧客中心、医療経済の観点からの論議技術、さらには製薬業界でのメディカル/サイエンス関連業務の経験など幅広い知識・スキルを持つことも望まれています。
米国のMSLの課題をあげると、コンプライアンス対応のための教育体制が不十分であること、また、なかにはMA部門内において、製品の臨床開発の計画・実施を担うメディカルリードなど他職とMSLの役割分担が不明確といった事例がみられます。日本とあまり変わらない状況にあるのかもしれません。
新規治療の高度先進化に加えて医療データの飛躍的な拡大が見込まれるのに伴い、サイエンスデータに基づく業務に従事するMSLへの期待は今後一層高まり、MSLの人員数は引き続き増加していくことが予想されます。MSLの多くが所属するMA部門のデジタルケイパビリティ向上に資する投資に意欲的な企業も少なくないようで、MSLにはデータ利活用やデジタルスキルの向上が不可欠となりそうです。あわせて将来においても、広範化しつつある社内外のステークホルダーとの関係強化、科学的見識の深化、利用情報の拡大などが期待されます。
米国においてもMSLの成否の鍵は、社内外の顧客との良好な関係構築にあるといえます。MSLが内外顧客に適切なインパクトを与え続けることが、自社製品の科学的価値最大化と疾患予後・患者転帰の改善の達成につながるからです。米国・日本の国の違いに関わらず、MSLのゴールは、常に公正で高度な科学を追求し、内外で信頼されるパートナーとなることといえそうです。
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