
AI Agentの特徴と製薬企業における活用事例
生成AIの利用機会の増加に伴い実現可能なこと・不可能なことが明確になる中、実施困難なタスクや業務を解決するテクノロジーとしてAI Agentが注目を集めています。製薬企業において期待される活用事例と合わせ、AI Agentの特徴を解説します。
昨今、市場が株高に沸いていますが、これは皆様はもちろん、各経営者、東証、その他多くの方々の努力によるところが大きいです。そして、そのきっかけは通称「伊藤レポート」(日本企業のROE向上の必要性を言及)の発出にあります。中心的テーマとして無形資産を有効活用することの必要性が訴えられ、さらにその中で重要無形資産として「顧客基盤」が挙げられています。
売上・利益は顧客から生まれるため、持続的成長の実現には顧客基盤の質の向上が重要であることに異論を持つ方は少ないと思われます。つまり、顧客基盤価値は競争優位の源泉となり得るのです。
以下の図表はNikkei225(日経平均に組み入れられている企業)のうち負債資本倍率(D/Eレシオ)が2σ(シグマ、標準偏差)以内の企業について、決算説明会資料(有価証券報告書・適時開示においてTDnetに公表された資料)に「顧客基盤・顧客ベース」「顧客ポートフォリオの強化や拡大」が書かれているか否かで、その企業を顧客基盤強化に注力しているか否かのフラグを立て、その記載の有無にしたがって2023年3月期のROE(自己資本利益率)を比較したものです。
この比較から示唆されるように、顧客基盤創りは企業の成長に重要な意味を持ちます。仮に中期経営計画などで顧客基盤創りに言及している企業が実際にそれに重点的に取り組み、それが着実に進んでいるとすれば、顧客基盤を創ることがROEの向上に大きく貢献していると言えそうです。
なお、この考え方は製薬メーカーにおいてさらに重要性を持つでしょう。いずれのメーカーも営業・マーケティング活動の「量から質」への転換と活動のデジタル化を進めながら効果的に顧客基盤を形成していくことが求められているからです(むしろ製品の利益率の高さゆえシェアオブボイス志向が強く、これまでは他業界よりこの意識が低かったと言えます)。
顧客基盤価値マネジメントとは「どの顧客からどの程度の利益を得ていくか」「その結果から全社・事業全体として中期的にいくらの利益を得ることになるのか」を可視化し(可視化の結果が「顧客基盤価値」)、その拡大計画を策定した上で、それをしっかり実行していく(顧客基盤の価値をマネジメントする)ことを指します。つまり、①顧客別の価値の可視化、②その価値の最大化策の検討、③時間軸の考慮の3点から構成されます。
以下は弊社のご支援事例(製薬業界含む)からのサンプルで実際に見られることが多い傾向を示していますが、顧客(アカウント)別のROIにおおきなばらつきがあることが分かります。
顧客別の価値(リターン)と各顧客別の投下コスト(ROI)を可視化することは非常に重要です。その違いを埋める施策を検討することが、事業全体の成長スピードアップにつながるからです。
ここで重要なことは「HVC (High Value Customer、優良顧客)」を設定し、そこへの資源配分にフォーカスすることです。どの顧客・施設をHVCと設定して、「いくらの売上・利益を積み上げていくか」「そのためにどのような施策を行うか」「どのような顧客ポートフォリオ(HVC、HVC候補、未顧客など)」を構築していくかを検討することとなります。
以下も弊社の支援事例(製薬業界含む)からのサンプルですが、Advanced Analytics(AI)を活用しHVCおよびHVC候補を選定し、そこにフォーカスして活動した結果、効果的に製品売上を伸ばせたことが分かります。HVCの選定が業績に大きく影響し得ることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
顧客基盤はすぐにできあがるものではありません。もし、すぐにできあがるものだとすれば、競争優位の源泉になり得ません。したがって、どのような時間軸で何を行うことによって顧客基盤の価値を向上させていくのかを計画する必要があります。その計画を持つことが「手遅れ」を回避し、中期の目標達成可能性を高めることにつながります。
特に製薬メーカーにおいては単年度の売上最大化に向けたプランニングが中心となっており(中期プランは市場と製品シェアの成長予測から策定し、そこに顧客戦略の視点はない)、さらには営業現場では「いかに早く処方を増やしてもらうか」といった目先のことに集中しているのが実態であり、その重要性は高いと言えます。
まずは顧客基盤価値の可視化から取り組むことが望ましいです。できれば、上にある「顧客基盤価値ツリー」を作成することにチャレンジしていただければと思います。ファクト(実際の数字)は非常にパワフルであり、関係者で現状に対して共通認識を持った上で有意義な議論ができるのではないでしょうか。
また、顧客別のROIを可視化するダッシュボードを構築・活用することも有用です。実際に必要以上に営業リソースを投下してしまっている顧客(施設など)も存在し、その結果、より厚くケアしたいHVC(優良顧客)の育成が手薄になるなど、機会損失が生じているケースもあります。
顧客基盤価値の可視化、HVCの抽出を中心とした顧客戦略立案(Advanced Analytics含む)、顧客別ROIダッシュボードなど、当社では「顧客基盤価値マネジメント」の導入を総合的に支援しています。皆様が携わる事業の継続的成長に貢献できる機会があれば喜ばしく思います。
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持続的成長には顧客基盤の質の向上が重要であり、顧客基盤価値は競争優位の源泉となり得ます。顧客基盤創りに取り組み、着実に進んでいるとすれば、それはROEの向上に貢献していると言えそうです。この考え方は製薬メーカーにとって重要な意味を持つでしょう。