
「調達ROI」:調達のパフォーマンスを最適化するための共通言語
企業の調達部門は、社内と社外の窓口としての役割を果たすだけでなく、事業継続性や法令順守に関わることも求められています。同部門が抱える課題を解決し、これまで以上にその力を発揮するためには、自らの実績や貢献度を可視化する「調達ROI」を活用することが重要です。
2024-10-29
PwCコンサルティング合同会社の調達高度化チームは、新書籍『経営のための「調達」見落とされてきた活用戦略』(中央経済社)を発刊しました。
調達は企業の総コストの7~8割を占め、社内の関連各部門と社外の多様なサプライヤーおよびその背後にあるサプライチェーンとの重要な接点の役割を担うものです。社内と社外の両面に働きかけることで、事業の収益性と安定性の向上に貢献することが可能となります。すでに調達改革に取り組んでいる企業は多いものの、その多くは調達システムを導入し、調達業務の効率化(=業務コストの低減)を狙うもので、企業価値を高めるほどの大きな経営インパクトの創出までには至っていません。このような「調達の効率化」にとどまることなく、「調達の高度化」に踏み込むことにより大きな価値創造の実現が期待できます。
本書では、調達高度化をテーマに、陥りがちな課題を概観した上で、調達によるさらなる経営貢献の創出を目指した「調達の高度化」の考え方、進め方を、具体的な事例を交えながら紹介します。また戦略、組織・人材、業務、システムなどのさまざまな観点から、改革の要諦について解説します。
本書は以下の章から構成され、各分野のプロフェッショナルがそれぞれの経験・知見をもとに執筆しています。
1章 見落とされてきた「調達の力」の可能性
「経営に貢献する調達」という視点で、変革レバーとしての調達について論じます。単なる機能としての調達ではなく、戦略的な意味合いを含めた調達機能まで踏み込み、その活用について解説します。
第2章 経営アジェンダとしての「調達の高度化」
「調達の高度化」が「なぜ経営アジェンダなのか?」「大事なことはわかっていても何から始めればよいのか?」といった疑問に答えるべく、経営と調達をつなぐ共通言語として「調達ROI」という枠組みを紹介します。
第3章 改革の両輪 ~ 調達業務の高度化と購買業務の効率化
調達改革の構成要素を概観した上で、コアになる業務改革において効率化と高度化を目指す際の留意点や陥りがちな罠について考察します。
第4章 高度化のための組織配置・機能権限設定
調達機能を高度化するにあたり、日本企業によく見られる組織配置や機能権限を設定する上での3つの罠を紹介します。
第5章 高度化に向けたスキル継承
足元のスキル喪失の危機をどのように乗り切るかについて解説し、その上で高度化に向けた論点として、中長期的な事業展開を見据えたリソースプランニングと優秀な人材の獲得・維持について考察します。
第6章 高度化のための調達データの活用
調達ROIを使って可視化された調達活動のボトルネックに対し、打ち手の検討、データを活用した戦略策定の進め方、事例を紹介します。
第7章 高度化に向けた調達機能へのサプライヤーの巻き込み
調達機能への外部取引先の巻き込みとその実現方法について解説することで、サプライヤーを含めた「生態系全体」の最適化について考察します。
第8章 調達変革 ~ Procurement Transformationの実現に向けて
最終章では、「調達の高度化」に必要な要素やポイントを今一度整理し、Procurement Transformationの世界観と実行上の留意点を紹介します。
企業の調達部門は、社内と社外の窓口としての役割を果たすだけでなく、事業継続性や法令順守に関わることも求められています。同部門が抱える課題を解決し、これまで以上にその力を発揮するためには、自らの実績や貢献度を可視化する「調達ROI」を活用することが重要です。
今後、10年以内を目途に多くのベテラン人材が定年を迎えるなか、調達領域におけるベテラン人材が持つ貴重なスキルを効果的かつ短期間で継承するための実施ステップ・要諦、さらに、その先の高度化を実現するうえでの論点を解説します。
PwCは58カ国の調達専門家1,000人の回答をもとに、世界各国における調達活動のデジタル化の現状と将来像を調査しました。グローバルおよび日本における調達領域のDXの動向と、グローバル企業との比較から見えてきた日本企業が直面する課題と調達改革への示唆を考察します。
従来にも増して調達が事業運営の中核的な役割を担うなか、この度の「デジタル調達実態調査」では、日本企業の回答から得られた示唆も含め、調達部門のデジタル変革・DXに対する認識の変化を明らかにし、業界別の将来像やロードマップを提示します。