【開催報告】価値創造の源泉としての“無形資産”

10年先まで持続的に企業価値を向上させる、マネジメントの3つの鍵

  • 2023-08-28

PwC Japanグループは2023年6月15日、「価値創造の源泉としての“無形資産”10年先まで持続的に企業価値を向上させる、マネジメントの3つの鍵」と題したオンラインセミナーを開催しました。

ESGやサステナビリティが強く認識されるようになった昨今企業の取り組みとしては、過去や現在の財務数値のみならず、自社の成長と企業価値向上の源泉となる無形資産を経営の根幹と位置付ける企業が増えており、統合報告書を通じて非財務情報を開示するケースも増加しています。

一方で、まだ多くの企業が価値創造の実現や、そのための仕組み化に苦労しているのが現状です。価値創造のための視点や取り組みに悩む経営者も少なくありません。

このような背景を踏まえて、PwC Japanグループは「価値創造経営」の実現をテーマとするセミナーを開催し、価値創造経営の課題を踏まえながら、無形資産の創出によって企業価値を高めるシナリオ作りに結びつくマネジメントの在り方について解説しました。

第1部

セミナーは3部構成とし、第1部では「統合思考による価値創造」をテーマとし、神戸大学大学院の國部克彦教授が特別講演を行いました。

講演では、サステナビリティを戦略と統合することが価値創造に結びつくこと、そのためには未来を起点に取り組むことを考える「プランニング」だけではなく、今の自分たちに何ができることを起点として将来を考える「クラフティング」が必要であることを説明しました。

神戸大学大学院経営学研究科教授
國部克彦氏

特別講演「統合思考による価値創造―経営戦略にサステナビリティを組み込むには―」

サステナビリティと企業活動を統合する

サステナビリティの取り組みを価値創造に結びつけるためには、この2つを統合する「統合思考」が求められます。統合思考は、企業の戦略にサステナビリティを埋め込み、企業の目的を変化させることです。

企業は社会とつながっているので、自社の価値を高めるためには、他者に向けた提供価値を高めていく必要があります。重要なのはそのための戦略です。

昨今、日本企業の多くが統合報告書にてサステナビリティと企業目的の統合を示していますが、うまく統合できている企業は少数です。統合するビジネスモデルを導き出すための戦略が十分に機能してないのが現状です。

図表1:統合報告フレームワークが考える価値

出典:「IIRC 国際統合報告<IR>フレームワーク」ホームページ(https://www.integratedreporting.org/wp-content/uploads/2015/03/International_IR_Framework_JP.pdf)をもとに國部氏作成

戦略は試行錯誤のプロセスで作られる

日本企業は既存の戦略をなぞったり改善したりするのが得意である一方、ゼロから戦略を作るのが苦手な傾向があります。その理由としては、戦略に対する考え方が一面的である場合が多いからです。

その考えから抜け出すためには、カナダの経営学者であるHenry Mintzberg氏の考えが参考になると考えます。

Mintzberg氏は、「戦略には2種類ある」と言いました。

1つは戦略のプランニングで、これは戦略の実行と実行部隊となる社員などをコントローすることへと展開していきます。プランニングは計画することを意味するので、まずは将来的にたどり着きたいゴールがあり、そのゴールにたどり着くための道を考えます。バックキャスティングの考え方も、未来像と現実の差から足りない要素を見つけ出し、補完していくという点でプランニングの一種となります。

2つ目は戦略のクラフティングです。クラフティングは工作のクラフトと同じ意味で、何かを作り出すことを意味し、戦略を創造するもので、コントロールを排除します。手元に何もなければクラフトはできません。クラフティングの特徴は、「今私たちができることは何か」を起点として考えることです。

Mintzberg氏は、「戦略は試行錯誤しながら形成されていく」と語っています。試行錯誤しながら戦略を形成することが重要であり、その過程を経なければ戦略は単なるプランにとどまるということです。

多くの日本企業は、「戦略は決めたとおりに実行しなければならない」と考え、コントロールする方向へと展開してしまうのも、クラフティングの考えが欠落しているためです。そのため、サステナビリティの取り組みについても、効果があると分かっていることをコントロールすることによって実行するだけにとどまり、形骸化してしまうのです。

図表2:プランニングとクラフティングの時間軸

出典:「価値創造の教育 神戸大学バリュースクールの挑戦」(神戸大学出版会)第9章 國部克彦 鶴田宏樹 祗園景子 編

自分のパーパスに目覚めることが大事

クラフティングは現在を起点に将来を考えます。そのためには今自分に何ができるのかを考える必要があります。これは昨今の大きなキーワードである「パーパス経営」にも通じます。

ハーバードビジネススクール教授のRebecca Henderson氏は、パーパス経営で成功する企業には2つの共通要素があると述べています。1つ目は、社会で果たすべき自分たちの使命を明確に自覚していること。2つ目は、全ての従業員に尊厳と敬意を持って接し、1人の人間として自立を促し、価値を尊重する組織を構築することにコミットしていることです。

また、そのための企業の姿勢として、従業員に権限を与え、信頼と敬意を持って接し、意義を共有することが重要だと語っています。

ここで重要なのは、会社がパーパスを掲げて従業員をコントロールするのではなく、従業員一人ひとりが自分の存在意義に目覚め、パーパスを持つことです。そして、それらパーパスの共通項が会社のパーパスになることです。

例えば、ある大手百貨店は、あらゆる状況で最良の判断をすることを第一で唯一のルールとしています。会社が社員に指示するのではなく、何をすれば良いか、何が最良なのか自分で考えるということです。

このようなルールを与えることが価値創造に結びついていきます。なぜならサステナビリティは新しい価値の創造であり、将来どうなるかが分からないことを前提として、「何が大事なのか」「何が大切なのか」を自分で考える必要があるからです。

一方の経営者には、サステナビリティの取り組みが長期的に価値創造に結びつくと信じ、その取り組みを継続することが求められます。また、そのための施策として試行錯誤を継続できる制度を作っていくことが価値創造経営の実現において極めて重要です。

第2部

第2部では、PwCコンサルティング合同会社執行役員パートナーの小林たくみが登壇し、基調講演「過去の延長に未来があるという前提からの脱却、業績管理から価値創造経営へ」を行いました。

基調講演では企業価値向上や価値創造に向けた3つの要諦を紹介しました。

PwCコンサルティング合同会社
執行役員パートナー
小林たくみ

価値創造経営が求められている背景

なぜ「価値創造経営」が必要なのでしょうか。そこには3つの背景があります。まず、国内企業の経営者が将来に対して強い危機感を持っている、という調査結果です。PwCの第26回世界CEO意識調査によると、現在のビジネスのやり方を継続した場合、10年後に自社が経済的に存続できないと考えているCEOの割合は、世界全体が39%であるのに対し、国内企業のCEOは72%に及ぶことが分かりました。

次に、企業価値の定量評価結果です。経営や株価の主要な指標の1つであるPBR(1株当たりの簿価に対して株価が何倍かを示す指標)を見ると、市場には1倍を割り込んでいる企業が多く存在しています。PBR1倍未満ということは、企業の保有資産などの合計額よりも株価が安い状態であることを示しており、事業性、成長性、将来性を反映する株価が低く評価されていることを意味しています。

最後に、日本企業を取り巻く開示制度の変化です。国内では、自主開示である「統合報告書」が普及していますが、それとともに2022年からプライム市場上場企業に対しては、TCFD 気候関連財務情報開示タスクフォース の提言に基づいて気候変動リスクの開示が要請されています。また、2023年3月31日以後に終了する事業年度からは有価証券報告書に人的資本開示が義務づけられています。欧州では、CSRD 企業サステナビリティ報告指令 が2022年11月にEU理事会で採択されたことで、EU企業だけではなく、一定の条件を満たせば、日本企業を含む域外企業も非財務情報の開示が段階的に義務づけられることになりました。

サステナビリティや人的資本といったテーマに企業がどう向き合っているかが、ステークホルダーにとって世界的にとても重要な関心事となったことから、開示制度が大きく変わったのです。将来の社会・環境に配慮した経営を行わなければ、将来の企業価値が損なわれかねません。会計ビックバンの時がそうであったように、経営者の成績表に相当する開示制度が変われば、それに併せて経営も変わらなければならない時が到来していると言えます。

これら3つの背景を踏まえて、この状態を抜け出すためには、さまざまな経営資源を投入して企業の足腰を鍛え、顧客や社会に価値提供し、企業の価値創造に段階的に結びつけていくことが重要です。反面、多くの企業が結果もしくは結果の見通しとしての財務数値、しかも今期や来期という短期の業績管理に多くの時間を費やしており、価値創造のための長期的なシナリオや、そのための「足腰」に相当する無形資産に十分な関心が払えていません。それこそが日本企業の企業価値を低迷させている、または毀損してしまっている要因の1つではないかと考えています。

このような日本企業の経営実態から、企業においては変化の必要性が高まっています。それに加えて、日本企業のマネジメント変革の必要性と軌を一にして、開示制度の変更により企業内外から「経済的価値と社会的価値の両面での経営」が求められています。これらが、いま「価値創造経営」が必要とされる理由なのではないでしょうか。

そこで、社会的要請や開示内容の変化をとらえて、企業が真に価値を創造・継続・発展させるためには、従来のような短期的な業績管理にとどまらず、人的資本や知的資本などの無形資産や、価値提供先である顧客、社会、環境にまで目を向け、企業の価値構造を拡張する「思考の変革」が求められます。そして、過去と現在だけを見る短期的な業績管理から、将来・未来の価値創造に目を向け、時間軸を拡張する「志向の変革」が必要となります。この2つの“シコウ”の変革を実現した経営を実践することが重要だと考えています。

変革に必要な3種類の鍵とは

では、価値創造経営を実現し、変革を成し遂げるために日本企業が考慮すべき3つの鍵とは何でしょうか。

「価値創造経営」の要諦は、2つの“シコウ”の変革であり、価値構造と時間軸を拡張することだと申し上げましたが、それを「経営管理」するための要諦は、戦略プランニングと戦略クラフティングを具備することです。

戦略プランニングには、「価値構造」と「時間軸」という2つの拡張要素をいかに管理し、いかに戦略を実行するか、つまり「仕組み」に関しての視点が求められます。価値構造の拡張については、業績など数値化できる要素のみならず、財務諸表に現れない無形資産、価値、活動などの要素を含めることが重要です。これが1つ目の鍵です。

また、時間軸の拡張については、「志向の変革」を管理するために、現在に加えて将来の見通しを加味し、「科学的」に判断する「意思決定構造」を具備する必要があります。社会課題や経営環境は常に変化しているため、価値創造ストーリーの各要素の相関関係を持続的かつ科学的に分析しながら変化を捉えることが重要です。そのためには、KPIの相関関係や傾向をストーリーの見直しに結びつけるためのプラットフォームを持つことが求められます。これが2つ目の鍵です。

これに対して、戦略クラフティングとは、「戦略は試行錯誤しながら形成される」「戦略的意図は、事後的にしか読み解けない」という視座に立ち、単に戦略を管理・コントールするのではなく、いかに戦略を創り上げるか、つまり「仕掛け」です。価値創造をマネジメントできても、価値創造を生み出せなければ意味がありません。そのため、試行錯誤を許容しながら価値創造経営の戦略を創り上げるイネーブラーの強化が重要です。これが3つ目の鍵です。

外部パートナー活用で価値創造を推進

最後に、価値創造経営の実現に向けたアプローチの順序と外部パートナーの活用方法はどのようなものであるべきかを検討します。

価値創造に取り組む順番として、PwC Japanグループは、前述した3つの鍵について、順番どおりに取り組むことを推奨しています。まずは価値創造ストーリーの可視化からスタートし、次に科学的な検証を行うことによって暗黙知を目に見える形式知とし、アジャイルでイネーブラーを強化していく仕掛けによってプランニングとクラフティングを両立させ、最終的に価値創造を実現していくことが重要です。

確かに、実務的であることを理由に2つ目の鍵である「科学的な管理」から開始するということも考えられます。しかしその場合、多くの企業は「その管理は何のために必要なのか」という根本的な疑問を解消できず、価値創造の根幹である「共感」を生む仕掛けを構築できないでしょう。ダッシュボードや企業価値向上のモデルという、目に見える2つ目の施策は、取り組み成果が目に見える形で創出されるため、施策推進の一歩として採用されがちです。しかし、PwC Japanグループは、1つ目の鍵から着手することを推奨しています。

また、アジャイルアプローチによる検討が不可欠です。社会課題や経営環境は常に変化しているため、それに合わせて必然的に価値創造ストーリーも変化します。そのため、1段階ずつ創り上げて次のステップに進む、という従前のウォーターフォールアプローチは価値創造経営の実現には相応しくありません。

各ステージにおける外部パートナーの活用についてですが、価値創造ストーリーを可視化するにあたっては、外部パートナーが持つフレームワークを自社の価値創造に当てはめるのではなく、フレームワークなどを材料として提供してもらうのが良いでしょう。これは、フレームワークに当てはめるだけでは、企業ごとに千差万別の価値創造を可視化できないからです。

外部パートナーの役割は、客観的な分かりやすさや議論のファシリテーションを通じ、気づきを与える意図を持った問いかけを行うことによって、手触り感やシズル感のある変革への道筋を引き出すことであるべきです。

また、科学的な検証を行う際には、外部パートナーには、先行事例や他社事例の知見と経験を踏まえて科学的なプラットフォームを構築してもらったり、テクノロジー活用の知見や経験、実証済みのモデルやアセット群を提供してもらったりすることを期待すべきでしょう。

3つ目の鍵に相当するクラフティングのステージでは、外部パートナーはイネーブラーを強化するための壁打ち相手となり、価値創造を推進する伴走者として活用できます。単なる他社の事例提供者ではなく、伴走者となり得るかどうかをパートナー選定の判断基準にすることが良いでしょう。

第3部

第3部では、「無形資産を価値創造につなげる企業経営のあり方と整備事項」をテーマに、第1部の特別講演で登壇した國部克彦教授と、PwC Japanグループのパートナー2名によるパネルディスカッションを行いました。

神戸大学大学院
経営学研究科教授
國部克彦氏

PwCコンサルティング合同会社
執行役員パートナー
森本朋敦

PwCコンサルティング合同会社
執行役員パートナー
駒井祐太(ファシリテーター)

短期目線、マネタイズ、マーケティングが課題

パネルディスカッションの第1のテーマとして、日本企業が価値創造できない原因についてPwCコンサルティングの駒井祐太がパネラーに問いかけました。

それに対してPwCコンサルティングの森本朋敦は、まず1つ目の原因として「短期的な成果を求める傾向が強い」ことを挙げました。

森本は決算を例に挙げ、「日本企業は四半期ごとの業績開示が一般的となっているため、経営の目線も短期化しやすくなり、今期や来期に目が向きがちです。経営の役割は企業の未来を作ることですが、短期的な成果を挙げることに時間を使っている現状があり、中長期的な価値創造に時間が使えないのが実態です」と述べました。

また、海外の企業と比べてインクルージョン&ダイバーシティ(I&D)の考えが薄いことも、コラボレーションによる価値創出に結びつかないことの原因となっていると指摘。その点、PwC JapanグループではI&Dに関する取り組みなどを部門単位ではなく、グループ全体のプロジェクトとして推進しているといい、「部門内でプロジェクトを進めると部門ごとに垣根が生まれ、専門性を持つ人材のコラボレーションが起きにくくなります。グループ全体で取り組むことにより、プロジェクトの目的や規模が小さくなってしまうことを防ぐことができます」と、そのメリットについて説明しました。

また森本は2つ目の原因として、価値のマネタイズができていないことを挙げ、「日本企業の多くはコスト競争を意識するため、異なる商品の組み合わせによって付加価値を高めるような施策や、これまでにない新しいプライシングモデルを構築するケースが少ない。そのような視点でマネタイズすることに重点を置いてこなかったという経緯があり、価値のマネタイズを得意としていません」と解説。

最後に3つ目の原因として、商品のマーケティングに一生懸命取り組んでいる一方で「企業価値のマーケティングができていない」ことを挙げ、「経営者や経営層は企業価値を投資家や社会に訴求する重要な立場であり、企業価値をマーケティングする意識と活動を重視する必要があります」と語りました。

サプライチェーンの制限を超えた協業が重要

日本企業が価値創造できない構造的な問題について神戸大学大学院教授の國部克彦氏は「サプライチェーンの問題」を指摘し、「製造業を中心として、日本企業の多くはサプライチェーンでつながっています。そのため、既存事業と近い領域に進出することは技術的には簡単ですが、そうすると既存の顧客企業と事業内容が競合するリスクもあります」と述べました。

言い換えれば、既存事業に近い領域だけでなく、遠い領域も視野に入れて、新しいつながりを考えた上でコ・クリエーションによって新たな事業を創り出すことができれば、サプライチェーンの課題を乗り越えてイノベーションを起こすことができるということです。

その一例として、國部氏はファイナンスやDXを挙げました。

「どの商品の販売もファイナンスが関わりますし、企業も消費者もファイナンスと深く関わっています。そこまでビジネスモデルを拡大して、サブスクリプションなどを活用する新たなエコシステムを構築する。あるいは昨今の大きなキーワードであるDX領域でコ・クリエーションを考えることができれば、新たな価値創造を実現する1つの方向性となる可能性があります」(國部氏)

コ・クリエーションの取り組み方の一例として、PwCコンサルティングの森本はPwCにおける国・地域、法人や部門をまたいだ協働を例に挙げました。森本によると、PwCは多様なプロフェッショナルが持つそれぞれの能力や専門性を組み合わせて課題解決に取り組む「Community of Solvers」となることを目指しているといい、「前述したI&Dの話にも通じますが、自分の専門とかけ離れた分野の専門家を巻き込むことができるリーダーシップを発揮することや、そのようなカルチャーを醸成する知見を活用することも価値創造に結びつく要素の1つです」と強調しました。

自分たちの価値を信じ、継続して取り組む

最後に議題となったのは、価値創造に向けた変革を実現するために経営や各部門の責任者が果たす役割についてです。

この点について國部氏は「一般論としてですが」と断りを入れながらも、現在の日本企業の経営幹部は会社から求められた責任を果たすことで出世してきた人が多い点を指摘。その上で「組織の中での期待に応えることに意識が向きがちであり、組織外の期待にどう応えていくかを考えることは得意でないため、その課題を克服することが大事です」と述べました。

また國部氏は、日本企業の社員の多くは社内の期待に応えようと、あらゆるリスク対策の要素を考慮に入れ、失敗の可能性をできるだけ抑えようとする点に問題があると説明。何かに取り組むにあたって、検討すべき要素が多くなりすぎてしまうため、焦点や本質が分からなくなり、大きな価値創造につながりづらくなるとのことで、「経営の考え方としては、従来のように足りないものを付け加えていくのではなく、企業価値の本質と関係が薄い要素を全部排除し、残るものが何かを見極めることが大事です。自分の仕事を価値創造の視点で考えた時に、最も大事なことは何かを考えることができれば、新しい価値創造の道が見えてくるはずです」と力を込めました。

さらに國部氏は、経営層が自分たちの未来と価値を信じることの重要性についても言及しました。國部氏は、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学でコネクティング・ドッツの話をしたことを例に挙げ、若い頃に取り組んだことがさまざまなものとつながり、大きな価値に結びつく可能性があることに触れ、「価値創造は短期の成果ではなく、中長期で大きな価値を創り出すもの。その取り組みを継続していくためには、『いつかはできる』と信じることが大事です」と語りました。

つまり、経営層が自分たちの価値を信じる姿勢が伝われば、部下も心理的安全性を持って日々の業務に取り組むことができるようになるはず。國部氏は「そのような環境を作り出せるのは社長だけです。また、価値創造のプラットフォーム構築も含め、そのような環境に変化させていくことが価値創造の仕組み作りの基礎になります」と強調しました。

パネルディスカッションの最後には総括として、森本が変革の実現に向けた具体的な取り組み方として“仕組みづくり”と“仕掛け作り”の重要性に触れ、「仕組みは制度に落とし込めるもので、一定のフレームワークの中で見直していくことが大事です。仕掛けは、価値創造を地道に続けていくことによって染み出すものであり、これは経営者の意思で行っていくものといえます」と説明しました。

その上で、「経営者には、前向きでイノベーティブな姿勢をもち、仕組みと仕掛けを両輪で回していくことが求められます。PwC Japanグループは、その取り組みの伴走者としてクライアントをご支援していきたいと考えています」と述べました。

主要メンバー

小林 たくみ

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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森本 朋敦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

駒井 祐太

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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