
各国サイバーセキュリティ法令・政策動向シリーズ(4)メキシコ
各国サイバーセキュリティ法令・政策動向シリーズの第4回目として、メキシコ政府のデジタル戦略と組織体制、セキュリティにかかわる法律とその動向などについて最新情報を解説します。
山陰酸素工業株式会社(以下、山陰酸素工業)、株式会社スペースシフト(以下、スペースシフト)、PwCコンサルティング合同会社の3社は、衛星データを活用した地方創生およびGX推進をテーマに実証試験の活動を進めています。その取り組みや見えてきた課題について議論しました。
(左から)榎本 陽介、永作 俊氏、小笹 翔太氏
登壇者
山陰酸素工業株式会社
グループ経営部CVC推進室
主任
小笹 翔太氏
株式会社スペースシフト
事業開発部
セールスエンジニア
永作 俊氏
PwCコンサルティング合同会社
シニアマネージャー
榎本 陽介
榎本:まず、初めにそれぞれの会社の概要をご紹介いただけますか。
小笹氏:当社は山陰地方を中心にガスおよびエネルギー供給事業を70年以上営んできました。山陰酸素グループは当社を中核にエネルギー、食品、自動車の事業を展開する10社2組合で構成されています。近年はカーボンニュートラルのLPガスの受け入れ開始や、ガスセンターに太陽光発電や省エネ機器を導入してカーボンニュートラルに取り組むなど、脱炭素化を加速化しています。
また、2023年にCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)推進室を立ち上げ、地域課題の解決と脱炭素をテーマにスタートアップとの共創に取り組んでいるところです。
永作氏:当社の設立は2009年で、衛星ベンチャーとしては老舗になります。現在は第2創業期を迎えており、衛星データとAIを活用して地球上の「変位検知」と「変化検知」を主軸としたソリューションを提供し、さまざまな事業領域をサポートしています。
ソリューションとしては、地表面の変位検知や新規建物の検知、浸水域判定、農作物育成モニタリング、森林モニタリングなどがあり、インフラ管理や災害対応、環境保護などの分野で利用されています。そして、ソリューションを最終的に使っていただく保険会社やインフラ管理会社などのお客様が、実際の業務で活用できる形にするところまで伴走型でお手伝いしています。
PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー 榎本 陽介
榎本:山陰酸素工業は山陰エリアを中心に事業展開されているということですが、地域の課題についてどのように捉えているのでしょうか。
小笹氏:鳥取・島根の両県は日本で最も人口が少ない1位と2位です。当然ながら少子高齢化や雇用機会の減少、買い物難民、インフラの整備・維持の問題など、課題が山積している「課題先進地域」です。ただ、別の視点で考えると、この厳しい地域で成功させたビジネスモデルは、他の地域でも成功できると考えており、ピンチはチャンスであると捉えています。
さらに、山陰エリアは非常にコンパクトで人口も少ないため、産官学のキープレーヤーが密に連携し合っているという側面があり、スピード感を持って事業を推進できる利点があります。
また、鳥取砂丘を月面フィールドに見立て、宇宙ビジネスの企業を誘致するなど、宇宙ビジネスを地方創生の柱の一つにする動きも盛んです。こうした動きを見ても、山陰は課題先進地域ではあるものの、課題解決の先進地域になるポテンシャルが十分あると考えています。
山陰酸素工業株式会社 グループ経営部CVC推進室 主任 小笹 翔太氏
榎本:山陰エリアは宇宙ビジネスなど新しい産業をフックに地方創生につなげていく、地域を盛り上げていくという熱意がある方々が集まっているという印象です。課題解決を地域GXの観点で見るといかがですか。
小笹氏:地域のエネルギーを支える企業として、地域GXについて中心的な役割を担いたいと考えています。具体的には、ガスを供給する多種多様なお客様のカーボンニュートラルを支援してまいります。
ただ、課題もあります。1つはカーボンニュートラルの活動を中心的に先導する人材が不足していること。もう1つは、都市部に比べるとGXに関する情報や技術の面で格差があることです。これらの課題解決には、スタートアップとの連携が有効であると考え、CVC推進室を立ち上げました。
例えば、非接触の電力センサーを開発している大阪の大学発ベンチャーに投資しています。そのベンチャーは工場の製造ライン・設備の電力量の把握やCO2排出量の把握を簡単にできる技術があり、すでに当社のお客様が導入しています。
このほか、低温排熱で効率よく発電できる技術を持つスタートアップに投資し、製造業の脱炭素に向けた連携を進めているところです。全国のスタートアップの先進技術を山陰に取り込むことにより、脱炭素のエコシステムが構築できると考えています。
榎本:GXの取り組みをお話しいただきましたが、現在、山陰酸素工業、スペースシフト、当社の3社で衛星データを活用したGXソリューションの実証試験の活動を進めているところです。その概略を説明します。
テーマは2つあり、1つは「衛星データを活用した森林由来のJ-クレジット創出支援検証」、もう1つは「衛星データを活用した再生可能エネルギー(太陽光発電)のポテンシャル把握検証」です。1つ目の森林由来のJ-クレジットについては、現地調査や航空レーザーで実施している森林の材積量、CO2吸収量の算定調査に衛星データを活用する方法へと代替する検証を行い、J-クレジット創出の促進につなげるものです。
2つ目の再エネのポテンシャル把握は、衛星データを活用してより精緻に太陽光発電量を予測・可視化することで、再エネ導入を推進し、脱炭素化に貢献するものです。
2023年11月から実証試験を進めており、衛星データに対する期待とギャップなど、見えてきた課題もあると思います。小笹さんはどう感じていますか。
小笹氏:当社としては異業種からの実証試験参加です。私の知識不足もあり、実証試験前の認識では、衛星からリアルタイムにデータを収集でき、鮮明な解像度でデータが得られると思っていましたが、実際はギャップがあり、衛星データ取得の難しさを実感しました。
当初は好きな場所、好きな日時のデータを得られると思っていましたが、実際はかなりの制約があることがわかりました。例えば実証試験では間伐前後の衛星データを取得して間伐したかどうかを判別したかったのですが、間伐の直前、直後のデータはなく、あっても1、2カ月前のものでした。また、雲がかかって衛星データの解析が行えないこともあり、実際にお客様のニーズを満たすためには乗り越えなくてはならないハードル、いくつもの課題があるというのが率直な感想です。
榎本:実証前に森林事業者の方々にインタビューして森林管理の課題を伺ったりしてきました。衛星データの活用シーンは見えているものの、データの量や精度の問題も浮かび上がっています。スペースシフトは衛星データを活用したソリューションを開発する立場から、こうした課題にどう向き合っていけばいいのか、お聞かせいただけますか。
永作氏:小笹さんが指摘された衛星データをリアルタイムに取得することと、雲がない状態で衛星データを解析することはなかなか難しい面があります。
一方、光学衛星(対象物に反射した太陽光の情報から地上の情報を観察する衛星)に加え、他の情報を組み合わせることで現在の弱点を取り払うことができると見ています。近年は小型の人工衛星がたくさん打ち上げられています。衛星の数がどんどん増えていくことで障壁を乗り越えられると思います。
榎本:確かに、衛星データだけで何でもできると考えがちですが、衛星データは手段の1つとして捉え、他のデータと組み合わせていくことが重要なポイントになります。そして、永作さんが指摘されたように今後、打ち上げられる衛星の基数が増えてくれば、データ量、画像解析の精度も改善され、AIの学習精度も高くなると見込まれます。
衛星データの技術的な課題を踏まえつつ、今後、地域のGX推進や地方創生を推進するにあたり、衛星データ活用にどんなことを期待するか、率直な意見を聞かせてもらえますか。
小笹氏:今、期待しているのは、衛星を使って森林の材積量を把握することです。森林由来のJ-クレジット創出の手法として認められるようになれば可能性が広がります。例えば、地域の森林由来のカーボンクレジットを使い、当社のガスをオフセットしてお客様に供給するなど、地域の脱炭素エコシステム構築が可能になると見ています。先ほどお話しした「課題先進地域」だからこそ、「課題解決先進地域」になるポテンシャルがあると感じています。
榎本:J-クレジットの創出とともに、実証試験では太陽光発電量の予測の精緻化にも取り組んでいます。再エネに期待することは何でしょうか。
小笹氏:再エネのビジネスでは平置き型太陽光パネルを販売していますが、平置き型のスペースがとれないお客様もおり、垂直型パネルの取り扱いを始めています。さらに壁掛け型パネルやペロブスカイト太陽電池など、さまざまなタイプの設備が登場しており、発電量を事前に予測することが設備を選択する上で重要なポイントになります。
今回の実証試験で3Dデータと衛星データ、気象データを組み合わせてシミュレーションするといった取り組みをしており、再エネの推進につながることを期待しています。
榎本:スペースシフトでは、これまでさまざまな実証を行っていますが、衛星データの活用に関してGXや地方創生に期待することや目標はありますか。
永作氏:GXは森林事業に関係するので、ミクロに樹木の1本1本の状態を把握したいという要望が結構あります。一方、衛星データの強みは、広域にマクロで地上の状態を検知、把握できることと、過去のデータを把握できることです。
こうした強みを活かせる領域を考えると、やはり衛星データで広域を把握しつつ、時系列に変化点を見る。例えば森林の材積量が大きく変化した場所を確認する場合、衛星データとドローン、航空機などのプラットフォームを組み合わせることにより、新たなソリューションを提供できると見ています。すでに衛星データとドローンを組み合わせたソリューションの商談を進めているところです。
株式会社スペースシフト 事業開発部 セールスエンジニア 永作 俊氏
榎本:3社の実証試験はまだ続きますが、GX推進および地方創生、地域の脱炭素化に向けて今後の目標をお話しいただけますか。
小笹氏:まず、CVC推進活動を通じ、全国各地の革新的な技術を持つスタートアップと積極的に連携していきます。そうした技術を山陰エリアに取り込むことにより、山陰における脱炭素エコシステムを作っていく。その結果として、お客様のビジネスに役立つGXソリューションを確立していきたいと考えています。
永作氏:当社は衛星データを解析する技術に特化して事業を進めていますが、そのなかでエンドユーザーの方々と話をする機会が増えています。確立した技術でソリューションを作ることはできますが、なかにはエンドユーザーのニーズに沿った形で提供することが難しい場合もあります。
エンドユーザーにサービスを提供している山陰酸素工業さんのような事業者の方々と一緒にビジネスを進めていくことにより、エンドユーザーのニーズに応じた技術を提供していきたいです。加えて、光学衛星とSAR衛星(衛星自ら照射した電波の反射情報から地表面を観測する衛星)など複数種の衛星データを組み合わせて解析するバーチャルコンステレーション技術など、幅広い選択肢を用意している強みを生かし、エンドユーザーの皆さんに価値あるソリューションを提供したいと考えています。
榎本:PwCコンサルティングでは2024年2月に宇宙・空間産業推進室を立ち上げ、宇宙ビジネスに関する活動を広げています。衛星データのみならず、「空間」の言葉が組織名に入っているように、3次元の空間情報もうまく活用しながら、山陰酸素工業のような地域の事業者や、衛星データの解析技術を持つスペースシフトのようなスタートアップの方々と協力し、地域のGX推進や地域協創に貢献する取り組みを推進していきたいと思います。本日はありがとうございました。
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