
COOやオペレーションリーダーが取り組むべきこと PwCパルスサーベイに基づく最新の知見
本レポートでは、世界の大企業の経営幹部673人を対象に、経営の戦略や優先順位を調査しました。COOはAIの活用拡大に強いプレッシャーを感じており、関連する人材の採用・育成に注力する一方で、業務に追われ将来のビジョン策定に注力できていない状況が明らかになりました。
PwCコンサルティング合同会社は2024年12月20日、株式会社セールスフォース・ジャパンと共同で「製造業のためのサステナビリティ情報開示ガイド〜プロジェクトの進め方とシステム選定」と題したセミナーを開催しました。
近年の気候変動対策に関する社会的要請から、企業は非財務情報開示が求められるようになりつつあります。社会的に評価される正しい情報開示を行うためには、各種規制を把握しつつ、業務・システムも再設計する必要があります。このような背景から、近年の情報開示の動向と業務・システムの在り方について講演を行いました。本稿ではその概要をお伝えします。
セミナーは三部構成とし、第一部ではPwCコンサルティング合同会社シニアマネージャーの金子多希がカーボンニュートラルに向けた政策・規制について講演を行いました。
PwCコンサルティング合同会社
シニアマネージャー
金子多希
現在の気候変動の状況を踏まえ、カーボンニュートラルに向けた規制が強力に推進されています(図表1)。各国政府がGHG排出削減目標を掲げることに加え、モビリティ業界では電動化規制や排出規制など、さまざまな規制によって脱炭素の取り組みを推進しようとしています。サステナビリティ情報開示もそのような規制の中で、各企業に対応が求められる一つのテーマです。
従来の情報開示は財務情報が中心であり、サステナビリティ情報のような非財務情報の開示は各企業の独自取り組みとして捉えられてきましたが、これからは規制によりあらゆる企業に対応が求められてきます。
図表1:GHG排出に係る主なステークホルダーと関係(例:モビリティ業界)
COP:Conference of the Parties(締約国会議)、WMB:We Mean Business、SEC:U.S. Securities and Exchange Commission(米国証券取引委員会)、EPA:Environmental Protection Agency(米国環境保護庁)、CARB:California Air Resources Board(カリフォルニア大気資源局)、CDP:Carbon Disclosure Project(炭素開示プロジェクト)、SBTi: Science Based Targets initiative(科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ)、IFRS:International Financial Reporting Standards(国際財務報告基準)、SSBJ:Sustainability Standards Board of Japan(サステナビリティ基準委員会)、GHGP:Greenhouse Gas Protocol(温室効果ガスプロトコル)、GLEC:Global Logistics Emissions Council(グローバル物流排出評議会)、VCCTP: Vehicle Certification and Compliance Testing Program(車両認証およびコンプライアンステストプログラム)、WBCSD:World Business Council for Sustainable Development(持続可能な開発のための世界経済人会議)、WRI:World Resources Institute(世界資源研究所)、UN Global Compact:United Nations Global Compact(国連グローバル・コンパクト)、UNFCC:United Nations Framework Convention on Climate Change(気候変動に関する国際連合枠組条約)、WP29:World Forum for Harmonization of Vehicle Regulations(車両規制の調和に関する世界フォーラム)
出所:PwC作成
情報開示は各国政府が規制化しているものの、その制定背景や基礎となる考え方には共通する箇所が多いため、国際的基準であるISSB基準なども参考にしつつ地域横断的に規制を捉えて対応することが求められています。
さらに、具体的に開示への対応を行うためには企業活動の実績データ収集やそのための体制準備、収集したデータの加工・算定など多岐にわたる準備が求められます。そのため、サステナビリティ情報開示の観点で新たに業務・システムを検討する必要があります。
セミナーの第二部では、PwCコンサルティング合同会社ディレクターの小林信一朗がカーボンニュートラルに向けた規制に対応する業務・システムの在り方について講演を行いました。
PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
小林信一朗
EUのCSRD指令や米国のSEC気候関連情報開示規則では第三者保証を必須としており、また日本のSSBJ基準案においても、第三者保証の義務化が予定されています。さらに、具体的に期日は明示されていないものの、より財務情報の保証に近い合理的保証に移行することも発表されています。
図表2:開示における保証のポイント
合理的保証は、主に
①排出量算定プロセスの内部統制に依拠するための、ITシステムを含めた整備・運用状況の評価が保証手続きの対象
②保証手続きの対象となるサンプル数が増加
という点において限定的保証と異なります。
このような合理的保証への移行を視野に、データ収集・承認・管理、および内部統制プロセスの見直し・再構築に加え、同プロセスを支えるシステム基盤の確立が求められます。
多くの基盤はサステナビリティなどの「業務に特化した機能」と、「ITプラットフォームとしての基本機能」の2階建て構造です。保証要件をシステム/業務が統合的に満たす必要がある中、より複雑な要件が求められる合理的保証に効率的に対応するためには、システム基盤を選定する観点として「ITプラットフォームとしての基本機能」がより重要になってきます。
セミナーの第三部では株式会社セールスフォース・ジャパン(以下セールスフォース)の西田一喜ディレクター、大能勇気Specialist SEにご登壇いただき、同社のソリューションをご紹介いただきました。
株式会社セールスフォース・ジャパン
インダストリーアドバイザー本部サステナビリティソリューション推進室 室長/ディレクター
西田 一喜 氏
株式会社セールスフォース・ジャパン
ソリューション統括本部 Cloud Specialist & Architect本部Lead, Specialist SE
大能 勇気 氏
セールスフォースではNet Zero Cloudというソリューションを用いて、お客様のサステナビリティ関連業務をご支援しています。このソリューションは非財務情報のデータ基盤・業務プラットフォームとして活用いただけるよう、データ収集から情報開示といったサステナビリティ業務の全体に対応しております
特にデータ収集、指標算定・見える化、情報開示においては想定される業務を一通りカバーしております。
例えばデータ収集においては社内外に散在する非財務情報をさまざまなソースより収集し、ダッシュボードの形で見える化できます。また情報開示においても欧州CSRD/ESRSに標準対応する他、カスタマイズを行うことでISSB/SSBJにも対応いただけます。
また、ハーバードビジネスレビューの調査では、現状サステナビリティ関連業務のなかで規制遵守対応やデータ収集・開示対応に多くの時間が割かれていますが、本来時間を費やしたい分野としてはステークホルダーとの関係構築や社内教育・文化醸成・組織改革、さらには意思決定メカニズム改革などがあげられています。
サステナビリティ業務のご担当者様がこのようなお悩みを抱えられている中、セールスフォースのプラットフォームにおいてより効率的に情報開示・CO2削減を進めていただくことでより本来的な業務に注力いただけると考えています。
PwC Japanグループに属する各法人から専門人材を集めた横断組織「Life Cycle Assessment Consulting Initiative」ではLCAの多岐にわたる課題に対してサービス提供を行っております。
本レポートでは、世界の大企業の経営幹部673人を対象に、経営の戦略や優先順位を調査しました。COOはAIの活用拡大に強いプレッシャーを感じており、関連する人材の採用・育成に注力する一方で、業務に追われ将来のビジョン策定に注力できていない状況が明らかになりました。
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