
欧州・豪州の国別報告書の開示制度への実務対応における留意点:BEPSニュース
国別報告書の開示制度がEU加盟国各国およびオーストラリアにおいて法制化され、日系企業においても対応が求められています。本ニュースレターでは、本対応にあたって留意すべき観点と、実務対応におけるポイントについて多面的に紹介します。
2023年6月7日
PwC税理士法人
PwC税理士法人は2023年4月20日、デジタル経済課税と国際課税をテーマとしたパネルディスカッションを開催しました。パネルディスカッションでは、前OECD租税政策・税務行政センター局長で、現在はBrunswick Groupのパートナーを務めるパスカル・サンタマン氏をはじめ、キヤノン株式会社の菖蒲静夫氏(理事 経理本部 税務担当上席)、三菱商事株式会社の幸福健太郎氏(主計部 部長代行 兼 税務チームリーダー)、一橋大学大学院法学研究科教授の吉村政穂氏、経済産業省の垣見直彦氏(貿易経済協力局 投資促進課長)、PwC税理士法人パートナーの白土晴久が議論し、同じくPwC税理士法人パートナーの山口晋太郎がモデレーターを務めました。
はじめに、日本を含めた各国で第2の柱の立法作業が進む中で、これまでの国際課税を取り巻く環境の変化について意見交換がされました。金融危機以降のグローバル化が進んだ世界においては、税が政治の領域として捉えられ、これがもはや二国間ではなく、多国間の課題となっていったことが語られました。
次に、パネリストから第2の柱の政策的意義である底辺への競争の防止と、政策手段である第2の柱の制度の関係性について問題提起があり、ディスカッションが行われました。ここでは、OECD/G20などによる画期的な国際合意が図られたと言っても、各主権国家に対して税率の引き上げを強制することはできないことを確認した上で、合意をした最低税率まで各国が税率を上げて税率に底を設ける方法では、影響力のある国々がこのような合意に参加しない場合に政策上の効果に限界が生じる点が指摘されました。一方、今回の第2の柱の仕組みによると、仮に一定の国々が第2の柱を導入しない場合においてもIIR(所得合算ルール)とUTPR(軽課税所得ルール)を組み合わせることで政策目標が達成できる旨が説明されました。
また、国内ミニマム課税(QDMTT)が制度として重視されていることを踏まえ、第2の柱が各国の投資や雇用に与える影響について議論が進みました。その中で、第2の柱による途上国やタックスヘイブンに対する投資誘致への影響と、これらの国によるQDMTTを含めた最低税率課税から生じる税収の予測を比較して、途上国にとって第2の柱の影響はポジティブであることが示唆されました。
さらに、現状CbCR(国別報告事項)を活用することで簡素化が図られている一方、第2の柱が複雑な制度となった経緯や、複雑な制度を運用する企業側・行政側のコストをどのように効率化していくかについても言及されました。
最後に、Public CbCRなど税務情報開示が諸外国において進んでいく中で、ステークホルダーとの関わり方について議論が及びました。ここでは、ESGの意義や、ESGと税の関係を踏まえて、企業と市民社会との関わりや、税務担当者が経営陣にいかにこれらの意義を伝えていくかについて意見が交わされ、税務情報は今後、企業の経営層におけるマネジメントアジェンダになることが示されました。
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