
持続可能な化学物質製造への道筋
化学産業の脱化石化は、世界的なネットゼロを実現する上で最も重要な要素の1つといえます。本レポートでは、基礎化学物質の脱化石化に向けた具体的な道筋を示し、予想されるCO2排出削減効果や必要な投資について説明します。
価値ある統合報告のあり方を日本において普及推進するWICIジャパンが、2024年11月、「WICIジャパン統合報告[向上]セミナー2024」を開催しました。当セミナーにおいてPwCコンサルティング合同会社の小倉健宏が講師として解説した内容を紹介します。
セミナーの主催者であるWICIジャパンは、民間部門から事業会社、財務アナリスト、投資家、さらに官公庁や大学などの研究者が参加し構成されているWICI(World Intangible Capital Initiative )の日本における活動拠点として、2008年に設立された組織です。
「WICI ジャパン 統合リポート・アウォード」の表彰などを通じて、ステークホルダーが当該企業の価値創造活動を一層適確に捉えられるようになる報告書の作成を企業に促す活動を推進しています。
2023年、有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄が新設され、サステナビリティ情報の開示が求められることとなりました。いま、環境や社会との関係においてサステナビリティのある経営が求められており、非財務情報開示の流れは加速の一途をたどっています。今後も、日本のSSBJ(サステナビリティ基準委員会)やSEC(米国証券取引委員会)気候関連開示規則、EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)の影響により、法定開示媒体におけるサステナビリティ情報開示の潮流はさらに加速することが予想されます。
このような潮流の中、多くの企業は、統合報告書やサステナビリティレポートなど任意で複数の媒体を発行していますが、各媒体の情報量が増大し、内容の重複や不整合が発生していることを課題と感じる企業が増えています。開示媒体ごとの役割を明確にすることをはじめ、効果的な情報開示を実現するための取り組みが今後より一層求められると考えられます。
IRフレームワークに準拠すると、統合報告書は「財務情報と非財務情報の両方を記載し、価値創造ストーリーを発信する媒体」です。将来性や独自性を盛り込むことが肝要です。
IRフレームワークでは、統合報告書に含まれるべき(価値創造ストーリーの発信に必要な)要素として以下の8項目が挙げられています。
図表1:統合報告に含まれるべき8つの要素
出所:IFRS財団,2021.「国際統合報告<IR>フレームワーク」をもとにPwC作成 https://www.integratedreporting.org/wp-content/uploads/2021/09/IR-Framework-2021_Japanese-translation.pdf
8つの要素と価値創造のプロセスに基づき、財務資本および非財務資本(自然資本、人的資本、社会関係資本)をどのように活用し、どのようなアウトカムを社会に創出しているかを説明することが、価値創造ストーリーそのものとなります。
私たちは、日本の上場企業における統合報告書の現在地と課題を把握するため、調査を実施しました。
統合報告に含まれるべき8つの要素のうち、以下4点が統合報告書にどのように記載されているかに着目して調査しました。
A.組織概要/外部環境
C.ビジネスモデル
D.リスクと機会
E.戦略と資源配分
日本の上場企業のうち売上7,000億円以上の会社からランダムで200社を抽出し、2023年11月時点の最新の統合報告書を対象としました。
Step1
以下4つの観点でレベル分けしました。
図表2:統合報告書のレベル
1 |
経営計画 |
長期経営計画と中期経営計画の位置づけを確認 |
2 |
外部環境・社会課題 |
記載内容が全社レベルのものか事業レベルのものかを確認 |
3 |
アウトプット・アウトカム |
記載内容が全社レベルのものか事業レベルのものかを確認 |
4 |
強み(資本) |
記載が全社レベルのものか事業レベルのものかを確認することに加え、無形資本を具体的に特定できているかを確認 |
Step2
Step1で全ての要素が事業レベルで記載されているとされた統合報告書のうち、インプットからアウトカムまでが具体的なストーリーで記載されているか(例:インプットを単純に従業員数ではなく、「デジタル人員」のような価値創造に必要な特定の能力を有した従業員数としてアウトカムにまでつなげているか)を確認しました。
調査を経て、各統合報告書の価値創造ストーリーを以下の5段階に振り分けました。
図表3:統合報告書に関する調査結果
浮かび上がってきた課題は、「開示の質を上げるための課題」とその裏にある「実質の課題」に分類できると考えられます。
図表4:調査結果から示唆される課題
各課題を解決するための方向性として以下の各3点が挙げられます。
説得力のある価値創造ストーリーを作成するためには以下のようにポートフォリオ戦略、事業戦略、投資戦略の全てを連携させていく必要があります。
図表5:価値創造ストーリーを充実させるための留意ポイント
各戦略において、以下の留意ポイントを抑えることをおすすめします。
統合報告書の重要性がますます高まる中、企業はこれを単なる情報開示ツールとしてではなく、価値創造ストーリーを伝えるための重要なコミュニケーション手段として活用することが求められます。
PwC Japanグループは、国内外の動向理解、サステナビリティ先進企業の統合報告書の分析・理解に関する知見を基に、戦略の整理、無形資本の特定と評価、ステークホルダーとの対話など、企業のニーズに合わせた統合報告書の企画立案や価値創造ストーリー作成を支援します。
化学産業の脱化石化は、世界的なネットゼロを実現する上で最も重要な要素の1つといえます。本レポートでは、基礎化学物質の脱化石化に向けた具体的な道筋を示し、予想されるCO2排出削減効果や必要な投資について説明します。
国内外でショッピングモール事業を展開するイオンモールで代表取締役社長を務める大野惠司氏と、サステナビリティ・トランスフォーメーション (SX)を通じた社会的インパクトの創出に取り組むPwCコンサルティングのパートナー屋敷信彦が、サステナビリティ経営をどのように実現するかについて語り合いました。
総合建設会社大林組の「デジタル変革」に伴走し、単なるシステムの導入ではなく、ビジネスプロセスの抜本的な変革を推し進めたPwCコンサルティングの支援事例を紹介します。
本レポートでは、世界の大企業の経営幹部673人を対象に、経営の戦略や優先順位を調査しました。COOはAIの活用拡大に強いプレッシャーを感じており、関連する人材の採用・育成に注力する一方で、業務に追われ将来のビジョン策定に注力できていない状況が明らかになりました。