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2020-04-03
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、世界はこれまでに経験したことのない、大きな困難に直面している。銀行・証券会社は、顧客や従業員、そして自らの存立基盤である地域社会とともに苦悩している。
外出禁止や都市封鎖(ロックダウン)により、経済活動が縮小するとともに、経営破たん、雇用機会の喪失、デフォルト(債務不履行)のリスクが高まっている。現在は、直接的な影響を受ける旅行・ホスピタリティ業界などが注目されているが、他人との一定の距離(ソーシャルディスタンス/社会的距離)を確保する動きが拡大していくことで、在宅勤務が困難な工場などにも影響が広がっていく可能性がある。
差し迫った失業のリスクにさらされている人々は、インターネットなどを通じて単発で仕事を請け負う「ギグワーカー」と呼ばれる労働者である。彼らは、旅行業など、ホスピタリティ業界における労働力の大きなウェイトを占めている。また、景気後退になれば、中小企業や自営業者が受ける影響は計り知れない。銀行・証券会社は、立場の弱い顧客を守りながら、最も必要とされる信用供与および金融取引を継続していかなければならない一方で、不良債権が増加するリスクを防ぐ必要がある。この非常事態がどれほど継続するのか不透明な状況で、これは非常に困難なタスクと言える。
また、自社の従業員の健康と安全を守りつつ、銀行・証券会社としての基本的なサービスを提供し続けることも同様に重要である。銀行・証券会社が提供するサービスの多くは既にデジタル化されている。例えば住宅ローンの助言や承認などに代表されるような対面でのサービスは、規模を縮小するか、デジタルチャネルに切り替える必要があるだろう。もし、既にデジタルチャネルによる業務遂行能力を十分に有しているのであれば、それは明らかにアドバンテージとなり得る。また、金利の低下を受け、ローンの借り換え需要なども急増する可能性がある。このような顧客ニーズの変化に対応するために、銀行・証券会社はいかにリソースを再配分すればよいのだろうか。
不透明な状況が続く中で事業を継続するには、次に挙げる4つの課題に重点的に取り組むことが重要である。
事業継続計画の整備が必要である。感染症のパンデミック(世界的大流行)は、直近の事業継続計画には含まれていなかったかもしれないが、事業継続計画は、絶えず評価、改訂、改善を行うことで、新たなリスク要因を考慮した内容にしていく必要がある。(参考資料:『Seven key actions business can take to mitigate the effects of COVID-19』[English])
自社の従業員が外部との接触を最小限に抑え、オフィス外でも柔軟に勤務できるように、必要な機器、ツール、業務プロセス、アクセス権、テクノロジーを整備することが肝要である。
承認手続きや業務のプロセスを滞りなく遂行するためには、監督者の関与とコミュニケーションルートを明確に定めることが重要となる。顧客の要求や、不安定な市場、また、使い慣れ整備されたオフィス以外で業務を行うことから発生するさまざまな問題により、従業員のストレスレベルは上昇する可能性がある。
リモート勤務の増加に伴い、サイバーセキュリティにかかるリスクも高まる。自社のサイバーセキュリティポリシーや、フィッシング詐欺、データ侵害などの脅威に対する態勢強化・注意喚起が極めて重要となるだろう。
顧客対応における当面の優先事項は、対話をして安心してもらうことである。先般、PwCが発刊した消費者金融に関するレポート『Consumer lending institutions play an important role in the coronavirus response』にも紹介しているように、顧客への配慮には、対面で提供されるはずだったサービスが今後どのように行われるかについての説明も含まれる。支店従業員の業務をデジタルに切り替えるとどうなるか。また、自動審査モデルのような手法を導入することで、与信業務が不必要に遅れたり停止したりすることを防ぐ方法を検討するのも一案である。
ビジネスや雇用へのプレッシャーが高まる中、誰が最もリスクにさらされているのかを見極め、支払期間の延長や融資の提供などに積極的に取り組み、顧客がこの困難な局面を乗り越えるための支援を行うことが重要である。多くの顧客は、信用スコア(個人の信用力を数値化したもの)の変化や、資金調達の選択肢が制限された場合、何が起きるかを知りたいと考えるだろう。明確な説明と透明性の確保は、顧客および市場全体における信頼を維持するために極めて重要である。
また、財務上のストレスや困難も、危機に対する備えと事業継続計画における重要な検討事項である。繰り返しになるが、これらの検討を踏まえ作成される事業継続計画には、不安を抱える顧客からの問い合わせに対応する支店従業員の再配置などが含まれるだろう。
現在の困難な状況における最大の課題は、一時的に問題を抱えた事業や、またそのような事業で生計を立てている人々の生き残りと回復を図りながら、いかに高い流動性と活発な金融取引を維持していくかにある。
最も必要とされる領域で流動性を確保するためには、綿密なモニタリングと先を見越した流動性管理が必要である。また、顧客への支援と賢明な経営判断との間で、慎重にバランスを取ることも求められる。
これらの決定を行う際には、いくつかの組み合わさった要因を比較検討する必要があるだろう。例えば、経済のさまざまな分野にかかるストレスや、政府が実施するプログラムを提供する仕組みとして銀行・証券会社が担う潜在的な役割などが挙げられる。また、行動上の変化も現れてくるだろう。例えば、資金調達を最大化するために、一部の企業は、リボルビング・クレジット・ファシリティ契約の限度額まで利用しようとするかもしれない。また、市場の変動は、ボラティリティの高まりやバリュエーションの変動につながる。その他に考えられる脅威として、特定の業種における業績の悪化や債務不履行が、別の業種における健全性や流動性に波及する可能性が挙げられる。これらの要因が銀行・証券会社のバランスシートや所要自己資本に及ぼす影響については、銀行・証券会社自身のビジネスを守りながら、流動性の維持と経済活動への支援について適切なバランスを保つために、十分に検討する必要があろう。