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ブロックチェーンをめぐる現状は?世界15の国・地域における600人の経営幹部を対象にPwCが実施した2018年の調査では、84%の企業がブロックチェーン技術に少なくとも何らかの関与をしていると回答しています。おそらく企業はラボに駆け込み、PoC(概念実証)を実施したのでしょう。今や誰もがブロックチェーンを話題にし、そして誰もが取り残されたくないと思っています。
理由は簡単です。分散された改ざん耐性のある台帳として適切に設計されたブロックチェーンは、単に仲介業者を排除し、コストを削減し、スピードとリーチを高めるだけでなく、多くのビジネスプロセスにおいて、透明性とトレーサビリティを高めるものだからです。ITの調査会社であるGartnerは、ブロックチェーンは2030年までに年間3兆米ドルを超える事業価値を生み出すと予測しています。同年までに、世界経済のインフラの10~20%がブロックチェーンを基盤とするシステム上で稼働していることでしょう。
業界内の企業が共通の基準に合意し、共に運用できるビジネスモデルをどのように生み出せば良いのでしょうか?その答えは、信頼を築くことにあります。ブロックチェーンの初期の取り組みにおいて、4つの重点分野に焦点を当てることによって、企業は成功への道のりに向けた一歩を踏み出すことができます。
ブロックチェーンがビジネス環境を根本的に変化させている兆候は、数多くあります。ここでは、いくつかの重要な変化を示します。
ブロックチェーンの構築は、第三者が加わるとより複雑になります。移転価格や財務管理のような企業間プロセスを管理するためのブロックチェーンを構築する多国籍企業を考えてみましょう。その企業はこれまで、数十ものERPシステムや一貫性のないデータやプロセスに苦しんできたかもしれません。各グループ企業が1つの集中管理台帳を持つ代わりに、単一の分散台帳にグループで参加することによって、取引・残高照合の必要性を排除することができるようになります。企業は、事業単位間の移動の合理化を目指し、内部デジタルトークンをどのように使って現金やその他の資産をトークン化するかを模索しています。時間がかかる(そして費用がかかる)銀行送金、通貨の両替および各取引に関する複数の電子メールの代わりに、トークン化された資産の移転は、スマートコントラクトを介してほぼリアルタイムで行うことができ、利用者はそれぞれの取引の進捗を追跡することができるようになります。
ブロックチェーンを自前で作り出す企業は、間違いなく、内部の同意、データの同質性の確保、規模に関する課題に直面するでしょう。それでも現在のERPと同様、ブロックチェーンのルールを設定し、実行することができます。とはいえ一般的に言って、ブロックチェーンへの投資が自社だけのものであれば、最大の収益を実現することはできません。
ブロックチェーンの利点は、異なる業界の参加者が集まり、共通のプラットフォームを構築するときに最大化されます。もちろん、第三者に参加を働きかけ始めたら、自社のみでルールを設定することはできなくなります。
本調査の回答結果からは、規制の不確実性(48%)、利用者間の信頼不足(45%)、ネットワークをまとめる能力(44%)がブロックチェーン導入の最大の障害となるという懸念がうかがえます。
ブロックチェーンは、まさにその定義から、信頼を生み出すはずです。しかし実際には、企業はほとんど全ての局面で信頼の問題に直面しています。1つは、テクノロジー自体に対して利用者の信頼が築かれなくてはならないことです。その他の新たなテクノロジーと同様、ブロックチェーンにも信頼性、スピード、安全性、拡張性に関する課題と疑義が存在します。また標準化の欠如や、他のブロックチェーンとの相互運用性に問題がある可能性が懸念されています。
また、理解不足もブロックチェーンの信頼性の欠如を生んでいます。今でも多くの経営幹部は、ブロックチェーンが実際のところ何なのか、そして企業のあらゆる側面をどのように変えつつあるのかをはっきり理解していません。ブロックチェーンをめぐる最近の一般的な話題は、ビットコインを越えて、ICOに焦点が当てられるようになってきていますが、それもブロックチェーンがもたらす潜在的な影響を示唆しているにすぎません。ブロックチェーンは、新しいインフラとして、また仮想通貨を含むトークンを通して資産をデジタル化する新しい方法として、二面的な変革推進の役割を担っていますが、その説明は容易ではありません。他の新技術について考えてみましょう。バーチャルリアリティのゴーグルは試着することができるし、ドローンは飛んでいるところを見ることができます。しかし、ブロックチェーンは抽象的、技術的で、舞台裏で使われているものです。
ブロックチェーンのもう1つの課題は、ネットワークの中で信頼を構築することです。コンセンサスをもたらすためのテクノロジーが、ルールと基準を設計する初期の必要性についての障害にぶつかっているのは皮肉なことです。銀行業務における決済システムと仕組みを活用するべきです。今日では、全ての人が既存のシステムのルールに従っていますが、ブロックチェーンに基づく代替モデルの設計・運用方法について必ずしも意見が一致しているわけではありません。
同様に、規制に関しても不確実性が存在します。規制当局の過半数は、いまだにブロックチェーンと仮想通貨について検討中の段階にあります。多くの国・地域では、特に金融サービスに関連する問題を研究し議論し始めていますが、全体的な規制環境は依然として未解決のままです。
コンセンサスをもたらすためのテクノロジーが、ルールと基準を設計する初期の必要性についての障害にぶつかっているのは皮肉なことです。