気候対策への意欲向上に向けて

インターナショナル・カーボンプライス・フロアの分析

PwCと世界経済フォーラムが共同で作成したレポートは、グローバルなカーボンプライシングによって、採算を取りながら排出量を12%削減する方法を示しています。

インターナショナル・カーボンプライス・フロアの導入は、経済や環境にどのような影響をもたらすでしょうか

世界経済フォーラムと共同で作成された今回のレポートでは、インターナショナル・カーボンプライス・フロア(ICPF)のシナリオが経済や産業に与える影響を評価し、炭素排出量削減に向けた解決策を模索している政府、企業、市民社会に情報と識見を提供します。また、本レポートではカーボンプライシングによる収入を試算しており、収入は移行を容易にするために活用することができます。

国際通貨基金(IMF)は2021年6月に、参加を促進する方法として、各国の経済発展の段階に応じた排出量の価格を設定するICPF導入の枠組みを提示しました。

カーボンプライシングは、ネットゼロの未来への移行を目指す政府や企業を支援するツールの一つです。気候変動が人間と地球に最悪の影響を及ぼす前に排出量を世界的に削減できるよう、今回の研究によって公共政策担当者に役立つ情報を提供できると考えています。

Bob Moritz

「ICPFの導入による効果は、世界的には地域によって異なりますが、生活や経済に深刻な影響を及ぼすことなく導入できることが分かりました。ICPFを導入しないほうが、社会と経済が被る損失が大きくなります。政治的・技術的な難題はありますが、気候変動が人間と地球に最悪の影響を及ぼす前にネットゼロを達成できるよう、今回の研究によって各国政府がカーボンプライシングを検討してくれることを期待します」

ロバート・E・モリッツ、PwCグローバルチェアマン

主な調査結果

レポート全文のダウンロードはこちら。本レポートの基礎となる経済モデルの詳しい説明については、PwCの技術的補足(英語版)をご参照ください。

ICPFは最大12.3%の排出量削減をもたらす可能性があります

  • ICPFは、国が決定する貢献(NDC)として各国が表明している排出削減の公約と合わせれば、産業革命以降の平均気温上昇を2℃未満に抑制する支援となります。
    さらに、気候対策への意欲と行動を強化することで、1.5℃達成の可能性を高めることも可能です。
  • 今回の分析では、ICPFが広く導入された場合、炭素価格が低い地域に排出源となる活動が移動するリスクはほとんどないことが判明しました。
  • 気候危機を解決できる単独の手段は存在しませんが、本レポートはカーボンプライシングが重要な役割を果たせるということを示しています。

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ICPFの採算性は良好です

  • カーボンプライシングによる収入を世帯に還元した場合、テストした全てのシナリオにおいて、GDP減少は1%未満となります。
  • 長期的には、海面上昇、労働・農業生産性の低下、健康被害など、地球温暖化による経済的損失が軽減されるため、GDPの損失の全てとは言わないまでも、大半は相殺されると想定されます。 
  • 行動を起こさないことで社会と経済が被る代償のほうが、はるかに大きいのです。

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ICPFによる収入は、社会的弱者を支援するために使うこともできます

  • ICPFは、国によっては最大でGDPの3%の収入を生み出すため、それを世帯に再分配することで、公正な移行の実現に役立てることができます。
  • 低所得国でICPFを導入する際のGDPコストを相殺するには、高所得国におけるカーボンプライシングの収入のごく一部があれば十分です。このような国際的な気候変動ファイナンスが、公正な移行のカギとなります。
注:気候に関するIMFの活動は、カーボンプライシング、公共投資、開示基準、公正な移行という4つの柱で構成されています。

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ICPFには課題もあります

  • カーボンプライシングは、政府や企業がネットゼロの未来へ移行するためのツールの一つに過ぎません。
  • カーボンプライシングを成功させるには、国際的な合意が必要です。各国の合意を取り付けるのは容易ではありませんが、行動に結びついた先例があります。最近では、多国籍企業グループに対して最低実効税率を課すOECDの枠組みに136カ国が署名しました。これは、このような合意が可能であることを示すものです。

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「グローバルな課題に直面する中、課税分野でも協力と妥協に向けた動きが見られます。最近の例では、多国籍企業グループに対して最低実効税率を課す枠組みの合意があります。気候に関する集団的行動は複雑ですが、地球温暖化による平均気温上昇をパリ協定の目標である1.5℃に抑えるにはどうしても必要なのです」

キャロル・スタビングス、PwC英国 グローバルタックス・アンド・リーガルサービス・リーダー
Carol Stubbings

※本コンテンツは、Increasing Climate Ambition: Analysis of an International Carbon Price Floorを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

主要メンバー

屋敷 信彦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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安田 裕規

パートナー, Japanese Business Network UK Co-Leader, PwC United Kingdom, PwC Japan

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東 輝彦

パートナー, PwCアドバイザリー合同会社

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白土 晴久

パートナー, PwC税理士法人

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