第26回世界CEO意識調査

PwCは2022年10月から11月にかけて、第26回世界CEO意識調査を実施しました。世界105カ国・地域の4,410名のCEO(うち日本のCEOは176名)から、世界経済の動向や、経営上のリスクとその対策などについての認識を聞いています。

調査結果から浮かび上がってきたのは、世界経済の変調と、その成長に対する懐疑的な見方です。世界的なインフレーション懸念は資金調達や投資の環境を大きく変え、ロシアによるウクライナ侵攻は各地域における地政学的対立への懸念を強めています。

今回は調査の中から日本企業のCEO176名の回答を抽出しました。そこから見えてきた特徴は以下のとおりです。

  • 「現在のビジネスのやり方を継続した場合、10年後に自社が経済的に存続できない」と考える日本のCEOは72%(世界全体では39%)に達し、将来に対する危機感が極めて強い。
  • 日本のCEOの65%が「今後12カ月間において、世界の経済成長(GDP)は減速する」と回答した一方、「今後12カ間における売上成長見通しについて、どの程度自信をお持ちですか」との質問に対しては、「極めて強い/非常に自信がある」(25%)、「ある程度自信がある」(51%)との回答が目立ち、足元の自社業績への認識は底堅い。
  • 今後12カ月間において、人員の削減や採用の凍結を「検討していない」とする回答の割合が、世界各国と比較して高い水準にある。
  • 気候変動リスクへの懸念はインフレや地政学的対立に比べて低くなっているものの、ビジネスモデルの脱炭素化への投資意欲は世界全体や米中と比べて高く、気候変動リスクに備えた取り組みも積極的に進めている。

日本を米国・中国や世界全体と比較分析すると、直近の業績に対しては堅調な認識を持ちつつも、特に自社のビジネスモデルの将来性に対して強い危機感を抱いていることが分かります。

以下では、日本のCEOの回答を主な質問項目別にグラフ化し、解説していきます。

世界全体のレポートはこちら(英語)をご覧ください。

世界経済の先行き、どう見通していますか

米国では84%のCEOが「今後12カ月間において、世界の経済成長(GDP)は減速する」と考えており、世界全体でも73%を占める結果となりました。一方、同様の考えを持つ日本のCEOは65%で、反対に「改善する」と考えるCEOも22%いました。中国では強気な見方が多く、過半のCEOが「改善する」(42%)か「現状を維持する」(13%)と回答しています。

世界経済の先行き懸念が強まる一方、足元の企業収益に対しては堅調な見方が続いています。「今後12カ月間における売上成長見通しについて、どの程度自信をお持ちですか」という質問に対して、日本のCEOからは「極めて強い/非常に自信がある」(25%)、「ある程度自信がある」(51%)との回答が目立ちました。「全く自信がない」は5%にとどまり、世界全体(10%)や米国(16%)と比較しても自社業績に対する底堅い認識が伺えます。

ただ、期間を「今後3年間」に伸ばすと、米国では「極めて強い/非常に自信がある」との回答が61%に急増し、世界全体でも53%に伸びます。対照的に、日本は「12カ月間」でも「3年間」でも回答の構成比率に大きな変化はありませんでした。先行きに対して、日本のCEOが自信を持ち切れていないことが分かります。

世界全体のCEOの73%、日本のCEOの65%が
2023年の世界経済の減速を予測

※「減速する」は「大きく減速する」「緩やかに減速する」「わずかに減速する」の合計。「改善する」は「大きく改善する」「緩やかに改善する」「わずかに改善する」の合計

世界全体、米国のCEOが3年後の成長により強い自信を持つ一方、日本のCEOは自信を持ち切れていない

経営上の脅威をどう認識していますか

日本のCEOの回答から浮かび上がってくるのは、インフレおよび地政学的対立への強い懸念です。今後12カ月間における経営上の強い懸念材料として、49%のCEOが「インフレ」を挙げています。また、「地政学的対立」も43%と高い割合に達しており、両項目に対する日本のCEOの懸念は米中や世界全体のCEOを大きく上回っています。

不確実性を増す世界経済の変化への対応策について、日米中および全世界で比較した場合、特に雇用の部分で大きな差異が表れています。日本のCEOは、今後12カ月間に労働力の削減や採用の凍結などを「検討していない」とする回答の割合が極めて高い結果となりました。

日本のCEOは「インフレ」、「地政学的対立」を自社の成長見通しに対する脅威として非常に強く懸念

日本のCEOは経済的な課題や景気変動への対策として、「採用の凍結」、「労働力の削減」を計画していない

気候変動リスクへの備えは

今回の調査では、世界経済の減速や地政学的対立の悪化について懸念する回答の割合が上位を占め、気候変動リスクへの懸念は相対的に目立ちませんでした。ただ、日本のCEOの回答を見ると、気候変動分野で積極的に対応を進めていることが伺えます。例えば、データに基づいた全社レベルでの温室効果ガス排出量の削減および気候変動リスクの軽減に向けた戦略策定について「実行した」または「進行中」とした割合が76%に達し、世界全体の58%を大きく上回りました。他の項目でも軒並み高い割合となっています。

今後12カ月間にうちに投資を行う予定の領域についても、日本のCEOは米中のCEOに比べ、「ビジネスモデルの脱炭素化」を挙げる割合が高くなっています。

日本のCEOは、中国のCEOと並び、気候変動リスクに備えた取り組みを実行している

約半数の日本のCEOが「ビジネスモデルの脱炭素化」への投資を計画している

存続への危機感、変化を後押し

「現在のビジネスのやり方を変えなかった場合、10年後に自社が経済的に存続できない」と考える日本のCEOは72%という結果となりました。世界全体の39%と比較しても圧倒的に高く、生き残りをかけた自社の変革に強い危機感を抱いていることが分かります。

今後10年間の収益性に大きな影響をもたらすと考える事象について、日本では77%のCEOが「労働力/スキルの不足」を挙げています。「規制の変更」や「サプライチェーンの混乱」を挙げる割合も、世界全体と比較して高くなっています。

日本のCEOは「現在のビジネスのやり方」が通用するのは10年以内だと考えている

日本のCEOは「労働力/スキルの不足」が今後10年間の収益性に大きな影響があると考えている

重要なのは、将来を考える時間

「現実でどのように自分の仕事時間を使っているのか」そして「空白のカレンダーがあったら、理想ではどのような仕事に時間を使いたいのか」という質問に対して、日本のCEOが最も多く挙げたのは、現実・理想ともに「将来を見据えた事業戦略の検討および推進」でした。この結果は、他の回答傾向からも読み取れる「将来への強い危機感」の裏返しと言えそうです。

日本を含む世界のCEOは、将来の事業について検討することにより時間を投資したいと考えている

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