今年の調査では、人工知能(AI)のストーリーは、可能性が全てであるということである。
店舗運営者の45%は、今後3年以内にAIの使用を増やす予定と回答している。これは、カスタマーエンゲージメントの改善からソーシャルメディアからの顧客洞察の収集まで、AIが実現できる能力の範囲を考えれば驚くべきことではない。また、一方、58%の回答者は、Amazon Echo、Google Homeには関心がないと回答しており、その割合はいくつかの新興国ではるかに小さかった。
調査の各回答を関連付けて分析することで、AIデバイスをいち早く導入する消費者の特徴が見えてくる。こうした消費者は、18~34歳の男性で、経済の見通しや個人的な支出予定に対して楽観的、毎週モバイルで買物をし、モバイル決済を好む傾向が強く、まとめ買いの傾向が強い。では彼らの期待はどこにあるのか?彼らの25%は、購入した商品の定期的な即日配送を期待している。
ブラジルはAIの普及が最も見込まれる市場として際立っており、回答者の59%がAIデバイスを購入する意思を示した。
アジアの消費者がAIデバイスの購入に前向きなのは、音声による電子機器の操作を好み、オンラインのプライバシーやセキュリティに神経質ではないことに起因をしている。中国では、過半数(52%)が購入を予定している。この状況は、ベトナム(19%が所有、45%が購入予定)、インドネシア(18%が所有、49%が購入予定)、タイ(15%が所有、44%が購入予定)でも同様である。
ネットワークに接続された機器を通じて自宅内の各種機器の制御や監視を行うタッチスクリーンを備えたスマートな冷蔵庫から、拡張現実(AR)を通じて服やメイクを試すことができるアプリまで、今は消費者の利便性をめぐる革新が起きる初期段階にある。そして、消費者は多種多様なことを受け入れる準備が整っており、調査回答者の約40%がドローンを配送手段とみなしている。
2017年秋から、AIを搭載した自動パーソナルアシスタントデバイスの販売が日本でも開始され、注目を集めた。しかし現時点で他国との所有率には大幅な差異がある。最も早く販売が開始された米国が16%であるのに対し、日本は4%しかない。販売時期の影響が大きいと思われるが、日本とほぼ同じ時期(2017年以降)に販売を開始した中国は21%で世界トップの所有率だった。
日本の普及率が低い要因は、販売時期や言語による利便性だけではなく、「そもそも関心がない」人が多いことである。「今後購入する予定もなく、関心がない」と回答した人の日本における割合は約70%と他国よりも高く、中国の27%に対して特に乖離が大きかった。
所有者の傾向としては、18~34歳の男性が多いというグローバルの傾向と大きな差異はなかった。
今回の調査だけを見る限り、日本におけるAIデバイスの普及が世界水準に達することは期待できないと感じられる。しかし消費者が認識していないところでは、既にAIを活用したサービスが展開されており、企業によるAIの活用拡大は期待できる。既にAIを業務に取り入れている企業も多数存在する。最も早く活用された領域として、チャットボットを利用したカスタマー問い合わせ対応がある。他にも接客・店内案内ロボットへの活用や、商品リコメンド・パーソナライズ情報の発信といったマーケティング活動などへも広がりはじめている。先進的な企業においては、配送計画や出店計画への活用も始まっている。