押し寄せる混乱の波に消費者が反応

世界の消費者意識調査2022年6月

消費者は、品質、選択、サービスへの期待を捨てたわけではありません。消費者と向き合う企業は何をすべきでしょうか?

パンデミック初期の消費者は、企業によるサプライチェーンや製品ラインの簡素化、カスタマーサービスの縮小に対し、忍耐を見せていました。しかし、25の国と地域の消費者9,069人を対象とした最新の世界の消費者意識調査によれば、その忍耐も限界のようです。

これはいいニュースとも言えます。複数の混乱の波に同時に対処できる企業なら、この永遠に続くかと思われる激変の時代にもチャンスをつかめるかもしれません。

消費者はオンラインと実店舗の買物で同様の困難に直面

インフレ、サプライチェーンの乱れ、ESGに関する意識や活動、景気後退の可能性が在庫、競争、価値に影響を与える中消費者の期待は変化しています。

本調査の焦点はインフレではありませんが、消費者がインフレ、特に食料品の値上がりを意識していることは明らかです。店内の長い行列、オンラインストアの長い配送日数、商品の在庫切れなど、消費者はすべての購入チャネルで同様の問題に直面しています。

Q

買物をするとき、どの問題が最も影響を与えますか?

(「たまに」「頻繁に」「ほとんど常に」という回答のみ集計)

実店舗
(上位3つの回答の割合)

食料品の値上がり

  • 70%
  • 60%

在庫切れで商品が買えない

  • 50%
  • 40%

購入時に聞いたよりも商品の配送に時間がかかる

  • 30%
  • 20%

オンラインショッピング
(上位3つの回答の割合)

食料品の値上がり

  • 80%
  • 70%

在庫切れで商品が買えない

  • 60%
  • 50%

購入時に聞いたよりも商品の配送に時間がかかる

  • 40%
  • 30%
グローバル オーストラリア ブラジル カナダ 中国 エジプト フランス ドイツ 香港 アイルランド インド インドネシア 日本 マレーシア メキシコ フィリピン カタール サウジアラビア シンガポール 南アフリカ 韓国 スペイン タイ アラブ首長国連邦 アメリカ ベトナム
食料品の値上がり 65%,56% 60%,44% 71%,67% 76%,59% 43%,41% 67%,60% 61%,54% 68%,58% 59%,52% 52%,51% 56%,47% 75%,56% 76%,62% 67%,60% 65%,56% 68%,55% 54%,59% 58%,54% 57%,57% 76%,62% 65%,64% 69%,57% 57%,54% 48%,48% 73%,60% 66%,59%
在庫切れで商品が買えない 37%,43% 55%,52% 25%,30% 46%,47% 26%,35% 24%,35% 34%,47% 40%,40% 49%,49% 31%,44% 41%,44% 46%,51% 44%,50% 42%,44% 30%,39% 29%,38% 35%,39% 30%,38% 36%,47% 35%,51% 30%,39% 34%,35% 33%,34% 29%,38% 56%,58% 38%,31%
購入時に聞いたよりも商品の配送に時間がかかる 20%,42% 18%,49% 22%,44% 16%,44% 30%,46% 22%,43% 25%,40% 15%,38% 20%,44% 24%,39% 20%,44% 16%,45% 15%,31% 19%,45% 16%,41% 21%,51% 23%,44% 28%,41% 17%,41% 15%,38% 28%,44% 16%,39% 24%,42% 25%,43% 20%,40% 24%,48%

サプライチェーンの問題が消費者の行動に直接影響

過去数十年にないサプライチェーンの乱れとインフレの中でも、シームレスなショッピング体験を求める消費者の意欲は衰えていません。

テクノロジーの力を得た消費者は、比較サイトで商品の在庫状況を調べ、複数の小売りを使ってニーズを満たす傾向があります。しかし、サプライチェーンの乱れやインフレによる価格上昇、配送日数の増加により(オンラインでも実店舗でも)、消費者が複数のチャネルを渡り歩くことも少なくありません。これは複数のチャネルに対応する企業に新しいチャンスを与える可能性があります。

Q

このような問題の結果として、どれだけ頻繁に以下のアクションを取りましたか?

(「頻繁に」「ほとんど常に」という回答のみ集計)

  • 比較サイトを使用して在庫を調べる 00%
  • オンラインでの購入に切り替える 00%
  • 複数の小売店をまわってニーズを満たす 00%
  • 実店舗での購入に切り替える 00%
  • いつも購入する小売店/販売店を変える(欲しい商品を買うため) 00%

比較のためのグローバルの値

グローバル オーストラリア ブラジル カナダ 中国 エジプト フランス ドイツ 香港 アイルランド インド インドネシア 日本 マレーシア メキシコ フィリピン カタール サウジアラビア シンガポール 南アフリカ 韓国 スペイン タイ アラブ首長国連邦 アメリカ ベトナム
比較サイトを使用して在庫を調べる 0.4 0.33 0.62 0.29 0.42 0.47 0.32 0.33 0.42 0.31 0.49 0.51 0.24 0.52 0.45 0.46 0.43 0.37 0.37 0.45 0.48 0.35 0.47 0.46 0.31 0.51
オンラインでの購入に切り替える 0.37 0.33 0.56 0.25 0.45 0.4 0.31 0.28 0.43 0.23 0.52 0.6 0.18 0.54 0.45 0.37 0.34 0.37 0.34 0.35 0.47 0.33 0.5 0.37 0.31 0.5
複数の小売店をまわってニーズを満たす 0.37 0.42 0.43 0.35 0.39 0.43 0.23 0.33 0.47 0.41 0.47 0.45 0.15 0.44 0.31 0.4 0.49 0.33 0.35 0.55 0.3 0.28 0.3 0.39 0.41 0.42
実店舗での購入に切り替える 0.29 0.35 0.36 0.27 0.3 0.33 0.27 0.21 0.29 0.29 0.37 0.31 0.12 0.27 0.36 0.24 0.34 0.28 0.27 0.33 0.17 0.38 0.2 0.35 0.32 0.32
いつも購入する小売店/販売店を変える(欲しい商品を買うため) 0.29 0.32 0.38 0.24 0.29 0.35 0.23 0.21 0.24 0.25 0.37 0.37 0.12 0.35 0.34 0.37 0.38 0.29 0.24 0.39 0.23 0.25 0.24 0.37 0.26 0.33

VRを利用する消費者のうち、意外に多くがVRで実体のある商品やラグジュアリー商品を購入

  • 31% VRで試用または店を見て回って商品を購入
  • 31% デジタル製品/非代替性トークン(NFT)(アバター、デジタルアート)を購入
  • 19% ラグジュアリー商品を購入

オムニチャネル体験の重要性が増し、進化しています。

回答者の80%が過去6カ月に3つ以上のチャネルで買物をし、3人に1人はバーチャルリアリティ(VR)を利用していました。VRの用途については、意外に多くの人がVRで小売商品やラグジュアリー商品を購入しています。オムニチャネル環境では特に信頼が欠かせません。消費者がメタバースに移行すれば、おそらくさらに重要になるでしょう。消費者と信頼関係を構築したい小売は、データ分析に投資し、顧客の要望とニーズのほか、行動をよく理解する必要があります。


32%―過去6カ月にVRを使用した消費者…

  • 32% VRで試用または店を見て回って商品を購入
  • 31% デジタル製品/非代替性トークン(NFT)(アバター、デジタルアート)を購入
  • 19% ラグジュアリー商品を購入

ESGへの意識が全消費者の半数に影響

環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素は、引き続き消費者の行動に影響を与えています。

しかし、興味深いことに、社会・ガバナンス要素(人権、多様性、事業運営における透明性への取り組みなど)は、購入決定にあたっては、環境要素よりも強い影響力を持っているようです。若者は特にESGに注目しており、ミレニアル世代やZ世代は、信頼、支持、購入の意思決定に際してESGを考慮する傾向があります。

Q

企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みは、その会社から製品やサービスを購入するあなたの行動にどれだけ影響を与えますか?

(「たいてい」「常に」という回答のみ集計)

  • 環境要素
    カーボン排出量削減の取り組み、再生材料の使用、製品から出るプラスチックごみの削減など
  • 社会要素
    人権の擁護、従業員の多様性やインクルージョンの促進、地域社会の支援など
  • ガバナンス要素
    透明性、倫理、規制へのコンプライアンス、顧客データやプライバシーの適切な管理など
  • 00%
  • 00%
  • 00%

比較のためのグローバルの値

グローバル オーストラリア ブラジル カナダ 中国 エジプト フランス ドイツ 香港 アイルランド インド インドネシア 日本 マレーシア メキシコ フィリピン カタール サウジアラビア シンガポール 南アフリカ 韓国 スペイン タイ アラブ首長国連邦 アメリカ ベトナム
Purchase a product or service  41%,40%,30% 42%,38%,34% 55%,49%,39% 34%,35%,28% 45%,43%,34% 51%,44%,34% 26%,28%,16% 28%,32%,20% 37%,32%,23% 50%,53%,44% 50%,43%,33% 39%,37%,25% 19%,12%,10% 50%,49%,38% 51%,54%,35% 56%,52%,38% 49%,41%,33% 45%,45%,35% 32%,31%,21% 50%,52%,39% 41%,34%,28% 43%,42%,27% 44%,42%,30% 46%,46%,35% 35%,39%,29% 59%,51%,46%

展望

近年起こった混乱の波は、今後新たな波が出現したとしても、消費者行動を形成し続けるでしょう。小売りや消費財メーカーが、早急に適応が必要となるのは、以下の点です。

小売りはあらゆるチャネルで消費者にリーチする必要があるかどうか疑問を持っていたかもしれませんが、パンデミック、サプライチェーンの乱れ、インフレの結果、その緊急性が明確になりました。すでに驚異的なリーチを持つVRチャネルに乗り遅れることはできません。

今後、ESGは混乱と価値創出の両方の原動力として引き続き成長すると予想されます。しかし、インフレによって価格が上がり続ければ、ESGの価値を重視する消費者の姿勢も変わる可能性があります。お金のある人たちは今後も重視するでしょうが、生活の厳しい人はどうするでしょうか?

政治的な分極化や地政学的な状況により、小売りにおいては今後もオンラインセキュリティやプライバシー保護の重要性は高まるばかりです。この業界はデータプライバシーを確保するインフラへの投資を再び増やす必要があるかもしれません。

消費者が愛国心、あるいは品質が高いという認識から国産品を購入することを決めるようになれば、世界の分極化が国際ブランドにマイナスに働く可能性もあります。

主要市場が不況となれば、間違いなく消費者行動に影響を与えるでしょう。しかし需要の縮小によってサプライチェーンにかかる負担が多少軽くなり、インフレ傾向が緩和される可能性もあります。

日本における示唆

日本においても、新型コロナウイルス感染症の発生により起こった変化の多くはすでに定着しています。そして今、戦争、インフレ、サプライチェーンの乱れ、エネルギー危機など世界で生じた新たな混乱の波は、日本の消費者にも襲いかかっており、世界の消費者と同様に、日本の消費者も食料品の値上がりや在庫切れに不満を感じています。今後も、新たな混乱の波は続くでしょう。

しかし、混乱の中でも企業が消費者を理解することは重要です。本調査において、日本の消費者は独特に見えるかもしれませんが、長年の傾向を見ると、遅れてではあっても世界的な兆候に寄っていく傾向があります。新興国で起こった新しい波が、日本に一気に押し寄せる可能性も否定できません。また、海外市場への展開は日本企業にとっての課題ですが、日本の消費者を前提として考えていると、ニーズを外してしまうことがありえます。今後も、世界のトレンドと、その中での日本の市場・消費者を捉えていくことは、重要と言えるでしょう。

PwC Global