強靭かつ俊敏な製造業サプライチェーン実現のための7つのステップ

2022-12-08

グローバルサプライチェーンは過去2年で大きな打撃を受けています。世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックは労働者不足やサプライチェーンの混乱を引き起こし、その後インフレやロシアによるウクライナ侵攻が続いています。製造活動は総じて回復力を維持しているものの、これらの課題により、さらなる回復の可能性が衰退するおそれがあります。

National Association of Manufacturers(NAM、全米製造業者協会)のManufacturing Leadership Council(MLC、製造業リーダーシップ評議会)が実施した最近の調査によると、製造業者の10社中9社が、過去2年間に原材料不足や材料費の高騰、輸送、部品不足でサプライチェーンに深刻な混乱をきたしたと回答しています。2022年にPwCが実施した別の調査でも同様の結果が得られ、米国の製造業者の3分の2以上が、サプライヤーが業務上の問題に直面していることに同意しています。さらに、製造業者は雇用という課題にも直面し続けており、これは成長に影響を与えるだけでなく、永続的なサプライチェーン課題を引き起こしている可能性があるのです。

実際、NAMによると、製造業者のほぼ半数(45%)が、労働者不足により新規ビジネスに取り組むことができず、収益機会の損失につながっていると述べています。

昨今の供給不足、ボトルネック、長期リードタイム、および中間コスト上昇は、順応性のないサプライチェーン環境の中で商品需要が満たされていないことに起因しています。

PwCは、商品やサービスに対する累積された需要が落ち着き、供給が追いつくことで、世界的なサプライチェーンの混乱が2022年までに緩和すると予想しています。しかしながら、供給逼迫の問題は少なくとも2023年まで続く可能性はあるでしょう。実際、MLCの調査によると約3分の1の米国の製造業者が、供給混乱の改善に少なくとも1年は要すると予想しており、14%は2年以上とも回答しています。


%

の製造業者が過去2年間にサプライチェーンを巡る混乱を経験している


%

の製造業者が原材料確保について深刻なリスクを経験している


%

の製造業向けサプライヤーは業務運用上の問題に直面している


出所: PwC, National Association of Manufacturers’ Manufacturing Leadership Council

製造業者の半数以上が、過去2年間にサプライチェーンの深刻な混乱に見舞われている。

過去2年の貴社サプライチェーンの 混乱度合いはどの程度に なるか?
過去2年で経験した最もインパクトのあったサプライチェーンにおける 混乱は何か?

強靭かつ俊敏な状態に向けた7つのステップ

昨今の状況はバリューチェーンのすべてのつながりを弱体化させており、製造業者は現在および将来の混乱を回避するための戦略を練り直すことを余儀なくされています。これらのリスクを軽減するための包括的なアプローチは、レジリエンス(強靭さ)とアジリティ(俊敏性)を強化することです。

以下は、レジリエンスを達成し、オペレーションにアジリティを組み込むための7つのステップです。「ステップ」と言っていますが、これはハイレベルの定義であり、順次的なものとして意図されたものではありません。実際、並行して実施され、ビジネス全体における優先事項をサポートする、サプライチェーンの主導的な業務をガイドすることを目的としています。

レジリエンスとはリスク最小化に向けた計画立案の結果であり、大なり小なりの混乱に直面した際に対応するための計画が準備できている状態である。アジリティは必要に応じて順応性を発揮できる力であり、サプライチェーン設計時に組み込まれているものであり、リスク最小化に向けた計画立案を実行する能力である。

Step 1: サイロ化されたオペレーションを取り除く

コネクテッドなエンドツーエンドのバリューチェーンを構築することは、業務機能間の障壁を取り除き、多機能なコラボレーションを可能にすることを意味します。すべての業務機能チーム(例: 販売・マーケティング、エンジニアリング、設計、研究開発、製造、調達、価格戦略)は協働し、バランスのとれた協調かつ透明性のある意思決定のために、それぞれが何をしているかを把握しなければなりません。第一のステップは、組織内の誰がサプライチェーンのパフォーマンスに影響を与える者および利害関係者であるかを特定することです。これらはサプライチェーンオペレーティングモデルの改革とレジリエントな計画プロセスにつながります。

エンドツーエンドのバリューチェーン構築は、一部の人が推測するような、従来からのサプライチェーンSCORモデルに取って代わることではありません。サイロ型で運営されているサプライチェーン内の業務機能チームが変化を推進する可能性は低いためです。現在の混乱は、これらのサイロ内だけで最適化するのは不十分であることを示しています。サイロ型を作り上げている仮想の壁を取り除き、SCORモデル下の従来のサイロ(依然として非常に関連性が高く有用)だけでなく、サプライチェーンのパフォーマンスに影響を与えるすべての人が調和して働く運営組織への道を開く必要があるのです。

実際、MLCの調査によると、製造業者の3分の1近くがエンドツーエンドのバリューチェーンモデルに移行していると述べており、SCORモデルをいまだ使用しているのはわずか15%です。

サプライチェーンのパフォーマンスに影響を与える者と利害関係者が集まれば、モデリングとシミュレーションを使用して、市場と事業の優先事項と従来からのサプライチェーンの優先事項の間のずれを解決する方法を特定できます。サイロを取り除くことで、エンドツーエンドのバリューチェーン全体の優先順位に基づいて計画と実行を行い、顧客サービスの向上につながる、より良い意思決定を促進することも可能になるでしょう。

今後の展望

サプライチェーンの課題は、個々の企業だけでなく、一国の経済活動にとっても悩みの種であり、企業にとって、サプライチェーンをいかに俊敏(アジャイル)に、そして強靭(レジリエント)にするかは、ますます重要となってきています。また、インフレと地政学的な圧力が続く中、サプライチェーンの改善は、企業が自社のビジネスだけでなく顧客のコストを抑えるためにも、より重要です。MLCとPwCの両調査によると、大半の製造業者は、現在の経済の逆風や混乱、また将来発生する可能性のある逆風に対して、サプライチェーンの強化に取り組んでいると見受けられます。

主要メンバー

田中 大海

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

藤倉 麻実子

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email