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スマートフォンやIoTデバイスといったデジタル機器の普及および多用化、インターネット通信の高速化、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う生活環境の急激なデジタル化――。このように、企業が自社の保有するデータを「資産」として活用し、事業活動に付加価値を創出する「データマネタイゼーション」の機会はますます増加しています。
本稿では「データマネタイゼーションの実態と成功の要諦」と題して、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)のデータ・アナリティクスチームが実施した「データマネタイゼーション実態調査2022」をもとに、データマネタイゼーションの実態や現在の潮流、事例とともに、データマネタイゼーション成功へのポイントを前後編に分けて解説します。
今回は前編です。
「データマネタイゼーション」とは、「企業が自社の保有するデータを『資産』として活用し、事業活動に付加価値を創出するための取り組み」のことを指します。データマネタイゼーションの取り組みは業界・業種を問わず行われており、その市場規模は2026年までに全世界で74.7億ドルに到達すると推定されています(図表1)。
PwCコンサルティングでは、図表2に示す通り、データマネタイゼーションを4つの方向性に分類しています。これらは企業が「目指すゴール」と取り組みを行う上で「優先すべき観点」の2軸によって分類されます。
データマネタイゼーションという概念は以前から用いられていましたが、昨今は「DX3.0」等のキーワードによって、特にデータやデジタルを活用した新たなビジネスモデルの創出、すなわちデータマネタイゼーションに対する関心が高まってきています。この背景として挙げられるのは以下の2点です(図表3)。
これまでのデータ活用では、既存事業や業務等を通じて社内に蓄積された「自社データ」の活用に主眼が置かれていました。一方で昨今では、「DFFT」「包括的データ戦略」「Society 5.0」などの概念、方針が発信され、また異業種間のデータ流通を促すための「データ流通プラットフォーマー」の存在も受けて、自社内だけに留まらない「外部データ」を活用できる機会が増えています。
料理に例えるなら、これまでは自分の畑で採れた野菜(=自社データ)だけでレシピを考えていたところに、他の農家でとれた野菜や肉、魚などの食材(=社外データ)も仕入れられるようになった、というところでしょうか。これにより、企業はこれまでと比べても桁違いに豊富なデータを扱うことができ、結果としてデータ活用の幅が大きく広がりました。
AIや機械学習、データ利活用という取り組みは、既に企業において当たり前のように検討されていますが、これまではその多くがPoC(Proof of Concept:概念実証)と呼ばれる段階でした。しかしながら昨今、様々なPoCを試行した結果、「データを使って何ができるか」をある程度見極めることができた企業では、具体的な効果創出やビジネスへの貢献を意識するフェーズに移りつつあります。
実際にデータを活用したビジネス貢献の事例も多く発信されるようになり、データ活用の価値が社会的に認知されてきたことで、各社もデータ活用による価値創出・ビジネス貢献をより貪欲に求め始めてきています。
前段までの説明の通り、データマネタイゼーションに対する関心は高まっているものの、データマネタイゼーションに関して定量的に調査したレポートは少なく、企業の取り組み状況を把握することは困難でした。このような背景を受け、PwCコンサルティングでは2021年12月に各社のデータマネタイゼーションについての認知度、検討状況ならびにそれにおける課題を明らかにすることを目的とした「データマネタイゼーション実態調査2022」を実施しました。以降ではその調査結果から、データマネタイゼーションに対する国内企業の取り組みの実態と、各社の課題について解説します。
データマネタイゼーションという用語を聞いたことがある、または内容を知っていると回答した企業は全体の76%にあたり、そのうち57%の企業は「既に事業化できている」または「実現に向けて何らかの検討を始めている」と回答しました。一方で残り43%の企業は「未検討・未着手」「分からない」と回答しており、データマネタイゼーションに対する着手状況は大きく二分されていることが分かりました(図表4)。
データマネタイゼーションを検討するに至ったきっかけについて、51%の企業は「新組織・新規事業開発」と回答する一方、46%の企業は「既存事業の延長、データ利活用PoCからの派生」と回答しました(図表5)。後者については、例えばこれまで自社内で使用していた業務用支援ツールを汎用化し、ソリューションとして外部に販売する、などが該当します。データマネタイゼーションを考える際には、新規事業開発の観点に注目が集まりがちですが、実際には社内のアセットや知見にも多くマネタイズの可能性が秘められていることがうかがえます。
データマネタイゼーションを事業化できていると答えた企業では、データを活用したビジネスを立ち上げ提供している割合が最も多く(65.7%)、次いで複数企業との協業によるプラットフォームビジネス(42.9%)、データ利活用に関する協業(42.9%)と続きます。外部企業へデータの販売を行っている企業も存在し(34.3%)、自社が保有するデータのみの活用にとどまらず、外部企業とのデータのやりとりや連携が進んでいることが分かります(図表6)。
データマネタイゼーションを実現できている、または検討・推進中の企業では、回答者の66%が「CxOクラスが推進責任者を務めている」と回答し、データマネタイゼーションの専門組織を有する企業も9割近くであることが分かりました(図表7)。新規性の高い取り組みであることから、推進には多くのハードルが存在することが想像に難くありませんが、実現できている企業あるいは実現に向けて動き始めている企業では、CxOクラスの旗振りと専門組織によるフルコミットの体制をとることで、強力な推進力を得ていることが分かります。
「2022年度に最も取り組みたいこと」についての質問では、未着手・未検討の企業では84%が、検討中・推進中の企業では95%がデータマネタイゼーションを前向きに進めていきたい姿勢を示しました。しかしながら回答の内訳を見ると、未着手・未検討の企業では「マネタイズの可能性を検討したい」の回答が頭一つ抜けている(37.4%)一方、既に検討中・推進中の企業では「データを活用したビジネスを開発したい」(30.4%)と「マネタイズの可能性を検討したい」(25.9%)に回答が分かれました(図表8)。
未着手だけでなく検討中の企業においても「マネタイズの可能性を検討したい」という回答が多く存在していることから、検討は始めたものの、なかなか成功への手ごたえを掴めていない企業が一定数存在していると考えられます。一方で自社における何らかの成功の手ごたえを掴み、具体的なビジネス開発へと進めたい企業も存在することを踏まえると、データマネタイゼーション実現に向けて重要なことは、「早く始めること」よりもむしろ「いち早く自社の勝ちパターンを掴むこと」と言えます。
調査結果を踏まえると、データマネタイゼーションの国内動向は以下の2点に集約されます。
前編では、データマネタイゼーションの基本的な考え方やトレンド、調査結果から解釈できる企業の実態についてご紹介しました。後編では、実際の課題や事例とともに、データマネタイゼーション実現に少しでも近づくための方法を解説していきます。