データマネタイゼーション実態調査2024

はじめに

PwCコンサルティング合同会社のデータアナリティクスチームは、2022年・2023年に、企業が保有するデータの活用と事業活動への付加価値創出を目指す「データマネタイゼーション」の検討状況や課題を明らかにすることを目的に、「データマネタイゼーション実態調査」を発表してきました。

近年は、これまで主流であった「自社が保有するデータのマネタイズ」に加えて、外部データの取得・活用等の「データ流通」を伴うデータマネタイゼーションへの関心が高まっています。また生成AIに代表される新たなテクノロジー等を活用した既存事業の強化・高度化、新たなサービスの開発など、新たな収益源の創出を狙ったデータマネタイゼーションの取り組みが加速しています。今回発表する「データマネタイゼーション実態調査2024」では、これらの外部環境の変化も踏まえ、企業のデータマネタイゼーションの検討状況、活動の実態を明らかにすることを目的としています。

本調査結果が、現在データマネタイゼーションならびにデータ流通に取り組んでいる企業や、今後取り組む予定である企業の一助となれば幸いです。

※本調査におけるデータマネタイゼーションの定義は「データ利活用による事業活動への付加価値の創出」の取り組みです。データの見える化による現状の把握やデータの高度分析によるインサイト発見といった「既存業務の効率化」、そして、データの外部提供(単体・組み合わせ)やデータ利活用による新規ビジネスの開発といった「新たな収益源の創出」に大別されます。

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ハイライト1:データマネタイゼーションはさらに加速。トップダウン型の「新たな収益創出」の検討を促す

データマネタイゼーションの検討状況に関する質問では、データマネタイゼーションを「実現できている」と回答した人が24.5%(昨年から15.4pt増加)に到達し、日本企業のデータマネタイゼーションの取り組みは昨年からさらに進行していました(図表2)。

また、実際に検討している取り組み内容についても、「社内データの一元化、見える化」「社内業務の効率化」などの「既存業務の効率化」を狙ったデータマネタイゼーションに次いで、「既存事業やサービスへのデータ付加による機能拡張・高度化」「データ/デジタル活用の分析/コンサルティングサービス提供」などの「新たな収益源の創出」を狙ったデータマネタイゼーションが多く回答されており(それぞれ40%、38.3%)、データマネタイゼーションによる収益創出を強く意識していることが分かりました(図表3)。

このような「新たな収益源の創出」を狙うデータマネタイゼーションと、業務効率化などの一般的なデータ利活用では、取り組みが始まった経緯も異なることが明らかになりました。

「既存業務の効率化」「新たな収益源の創出」のそれぞれを検討する人に対して、データマネタイゼーションの取り組みが始まった背景を質問したところ、前者は「データ利活用等の取り組み(PoC等)からの派生」の回答が最多となりました(32.8%)が、一方で後者はPoCからの派生との回答は25.4%のみで、代わりに「全社戦略に基づくトップダウンでの社内プロジェクトチームや新組織発足」が32.4%と最も多く回答を集めました(図表4)。

「新たな収益源の創出」を狙ったデータマネタイゼーションの検討は、必要なケイパビリティを持ったメンバーの募集やプロジェクトチームの立ち上げなどの全社的な取り組みになることが多く、経営層からのトップダウンの号令がきっかけとなって具体的な検討に移る企業が多いと推察されます。

ハイライト2:「費用対効果の創出」がデータマネタイゼーション推進における最大の課題に

データマネタイゼーションの実現が進むにつれ、企業が直面する課題にも昨年から変化が見られました。

データマネタイゼーションに取り組む上で直面した(している)課題について質問したところ、「データマネタイゼーションの取り組みの意義やメリット、費用対効果を感じない」「経営層や周囲からの理解を得ることが難しい」などの回答が昨年から大きく増加していました(それぞれ+37.3pt、+15.1pt)(図表5)。一方で昨年上位だった「自社データをマネタイズするためのアイデア・ユースケースがない」については、昨年から10.0pt増加とそこまで大きく変化はありませんでした。

「費用対効果」が課題の上位に上がった要因の一つは、データマネタイゼーションに対する積極的な投資姿勢の裏返しと考えられます。データマネタイゼーション推進の予算額に関する質問では、新たな収益源の創出を狙ったデータマネタイゼーションを検討する回答者において、数千万~数億円規模の予算額を備えていることが分かりました(図表6)。背景には、PoCからサービス化などの実現へと、取り組みのフェーズが変わってきている企業が増えてきていることが推察されます。

「新たな収益源の創出」を含め、各社がデータマネタイゼーションに積極的に投資しているが故に、投資額に見合うだけの効果創出をよりシビアに求められるようになったと推察されます。

また、もう一つの要因としては、データマネタイゼーションに対する経営層と管理職層の検討内容や期待値のギャップが生じていることだと推察されます。

データマネタイゼーションのユースケースについて、経営層・管理職層それぞれの検討内容を比較したところ、「データの直接販売(10.5pt)」「データ流通プラットフォーム経由のデータ販売(15.2pt)」「データ・ナレッジを用いたプロダクトや業務ソリューション等の販売(10.0pt)」「他社協業によるプラットフォームビジネスの提供(10.2pt)」などのユースケースにおいて、管理職層に比べて経営層の方が回答を多く集めており、両者の認識ギャップが示されました(図表7)。

いずれも「新たな収益源の創出」に該当するユースケースであることから、経営層はデータマネタイゼーションにおいて「新たな収益源の創出」を強く意識していると考えられますが、管理職層の目線がそれに追随できていないことで、取り組みに対する理解を得ることの難しさにつながっていると考えられます。

ハイライト3:データ/デジタルとの親和性が高い、もしくは規制対応が盛んな業界ほど、データマネタイゼーションの検討が進む

業界ごとのデータマネタイゼーションの検討状況を分析したところ、業界独自の状況やデータやデジタルに対する親和性がデータマネタイゼーションの推進状況に影響していることが分かりました。

  • データマネタイゼーションを未検討:不動産業、商社業、サービス・接客・レジャー業
  • データマネタイゼーションを過去に検討したが断念した:小売業
  • データマネタイゼーション実現に向けて検討・推進中:自動車業、製造業、金融業(銀行・証券・保険)
  • 自社データを活用したデータマネタイズを実現できている:建設・エンジニアリング業
  • 外部データの活用やグローバル化も検討している:通信・エンタメ・メディア業、サービス・接客・レジャー業、テクノロジー業

自動車や製造業等では、脱炭素化、サーキュラーエコノミの実現から端を発した、カーボンニュートラル規制や欧州電池規則などの外部環境の変化が存在しており、それら規制への対応をきっかけに企業間でのデータ流通やデータマネタイゼーションの検討が進んでいるものと考えられます。また、通信業やテクノロジー業などは事業特性上データ/デジタルとの親和性が高く、データマネタイゼーションに取り組む土台が整っていることから、他の業界と比べて検討が進みやすいと考えられます(図表8)。

主事業とデータ/デジタルとの親和性や、規制対応等の外部環境の動きを見極めることが、データマネタイゼーション推進のチャンスとなり得るでしょう。

PwCの3つの提言

調査概要

調査実施時期 2023年12月15日~12月18日
回答者数 1,076人
調査方法 調査会社パネルを活用したインターネットモニター調査
調査対象の条件 売上高500億円以上の企業に勤務し、データマネタイゼーションやデータ流通に対する意思決定、方針検討、企画・検討・立ち上げ、情報収集・アドバイスを行う立場の方(原則として国内在住者を想定)

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問い合わせ先

藤川 琢哉

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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河野 美香

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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辻岡 謙一

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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宿院 享

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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