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いま、多くの日本企業がDXを「自社の生き残りをかけた重要アジェンダ」と捉え、積極的に取り組んでいます。一方で、日本企業は欧米をはじめとするグローバル企業と比べてDXの取り組みが遅れていると言わざるを得ない状況であり、また、その成功確率の低さが指摘されています。
地政学リスクの高まりやウィズコロナによって苦しい経営状況が続く中、本レポートでは、足元の日本企業におけるDXの取り組み状況をお伝えした上で、DXを成功に導くキーアジェンダを取り上げ、これからDXに着手される企業や、変革に向けてさらなるアクセルを踏みたいと考えている企業に対して提言を行います。
今回は昨年に続く第2回目であり、前回からの違いも含めた形で考察を行っています。詳細は後述しますが、昨年からの違いとして、全社DXの成果創出に時間がかかる中で、CDOなどCxOクラスのリーダー登用、明確なDX推進原資の確保、従業員の育成など全社変革としての取り組みが一段と加速しています。
なお、本レポートをまとめるに当たり、2023年2月より日本企業に対するDXサーベイを実施し、DXの取り組みを進めている企業(売上高10億円以上)に所属される1,106名の企業幹部(管理職以上)から回答を得ています。
日本企業が取り組む全社DXに関して、「十分な成果が出ている」と答える企業は約12%と、昨年同時期に比べて微増しています。「何らかの成果が出ている」の回答率を合計すると、約70%の企業がDXの取り組みに関して成果を獲得していることになります(図表1)。
また、全社DXを推進するリーダー(≒CxO)を登用する企業も増加しており、強力なリーダーシップのもとで、DX成果創出に向けた取り組みを強化している姿勢が伺えます(図表2)。
足元の日本企業のDXに関する取り組み実態を理解した上で、ここからは、「十分な成果が出ている」企業の取り組みも分析し、成功に向けたキーアジェンダを提示します。
そもそも、全社DXを成功に導くためには、どの程度の期間が必要なのでしょうか。今回の調査では、全社DXに取り組む期間を新たに設定し、回答を得ることにしました。
そこで明らかになったことは、「十分な成果が出ている」と回答した企業ほど、全社DXに対する取り組み期間が長く、5年超が70%近くを占めています。一方で、「十分な成果を挙げられていない」と回答した企業は、まだ取り組み期間も短く、成果創出にはこれからの取り組みがカギになってくると考えられます(図表3)。
部分的な新規事業創出とは違って、既存事業・既存のエコシステム全体を変革するためには時間がかかるのは必然であり、DXビジョンに向かって継続的に取り組むことが極めて重要です。
ここから、日本企業が直近1年間の企業活動を通じて、全社変革の実現に向けて特に注力してきた5つのテーマについて触れていきます(図表4)。
最初に、全社を挙げて取り組むDXに関する原資を明確に確保した上で、全社変革を推進する企業が多く存在することを確認しました。
特に、全社DXに成功している日本企業、すなわち「十分な成果が出ている」と回答した企業は、それ以外の企業と比べ、DX予算を他の予算と一括管理することなく、独立した形で原資を確保し、運用していることが特徴として挙げられます(図表5)。
予算未達やシステムなど他投資の突発的支出に影響され、当初予定していた変革テーマのアクセルが不十分なケースはこれまでも数多く報告されています。そういった事象に影響されず、一貫して全社変革に取り組むための原資を獲得することが何よりも大事と言えるでしょう。
加えて、全社変革の担い手、すなわち従業員に対する投資が活発になっている点も昨年からの変化として確認できました。
人材投資においては、自社が求める人材像・スキルを明確にし、その上で在籍する従業員の育成に舵を切り、足りないリソースやケイパビリティに関しては上手く外部からの人材登用を組み合わせてDXを推進してきた姿が浮かび上がってきます。
また、従業員の声を集め分析・活用しながら、全員参加型のDXに取り組んできた点も特筆すべき特徴です。例えば、変革による意識の変化を定量的に把握することは、「何となく変わった」という肌感覚だけで評価を下して施策推進に向かってしまうことを回避でき、科学的にも合理的で、かつ足元の実態を踏まえた妥当な打ち手導出に寄与することができます。
他にも、データを活用して意思決定を下すための下地整備が進んだ点も特徴として挙げられます。具体的には、DX成果指標をモニタリングする仕組みを整備し、それらを定量的に測定しています。主だったDX推進指標に関しては、「十分な成果が出ている」と回答した企業ほど、「売上・利益の増加」「非財務指標(コミュニティ関連:コミュニティプログラム参画数・投資額の増加など)」「経営精度(予測精度)の向上」項目も注視していることが読み取れます(図表6)。
短期目線のDX施策のみならず、中長期目線のDX施策も推進するために、損益計算書(PL)や賃借対照表(BS)に影響されない非財務指標にまでモニタリング対象を広げていると考えられるでしょう。
最後に、既存事業の枠を越えたイノベーションを誘発するための取り組みも昨年以上に加速しています。具体的には、社内起業制度や社内アイデアソンなどによる自社社員のアイデア実装や、コーポレートベンチャーなどによる他社を巻き込んだイノベーション創出を促進する仕組みが徐々に整ってきています。なお、自社社員のアイデアを起点としたイノベーション創出に関しては、<その3:従業員の声を活用した変革推進>も大きく関係していると考えられます。
今回のサーベイでは、直近1年間の企業活動を通じ、日本企業がどのような取り組みを加速してきたかについて取り上げてきました。最後に、「十分な成果が出ている」と回答した企業とそうでない企業は、パートナーシップ面でも大きな違いが出てきた件について触れます。
全社DXにおいて十分な成果を獲得しているDX先進企業は、既に自社の経営・ビジネスモデル・企業文化に至るあらゆる変革を実現するステージを終え、業界を横断したパートナーシップ型DXに着手していると考えられます(図表7)。
特にDX先進企業は、競合企業も巻き込んだパートナーシップを指向しており、単なる自社の変革に閉じず、これからは産業構造の変化などを踏まえた業界横断や社会変革に向けたDXに移行していくと考えられます。
本レポートを活用し、さらなる飛躍を遂げようとしている企業の方々の参考になれば幸いです。
※2023年2月、売上高10億円以上の企業に属する回答者(管理職以上)に対し、スクリーニング調査を行い、そのうち「DXの取り組みを進めている」と回答した1,106名に対して本調査を実施(売上別回答者比率 5,000億円以上:25%、1,000億円以上5,000億円未満:21%、100億円以上1,000億円未満:35%、100億円未満:19%)。