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PwCコンサルティングは日本国内の企業を対象にエンプロイーエクスペリエンス(EX)*の認知度や重要度、各社の取り組みの現状などについてHR総研(ProFuture株式会社)と共同調査を行い、回答企業207社の結果を取りまとめました。
* EX=Employee Experience(従業員体験):従業員が企業組織との間で体験・経験することの内容や価値を指す概念
本調査は2018年から継続して実施しており、今回で4回目の実施となります。
従業員体験を示す言葉である「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」という言葉の認知度は調査開始の2018年から比較すると全企業で25ポイント上昇して74%、従業員5,000人以上の大企業(以下、大企業)で21ポイント上昇して87%となり、企業規模にかかわらずこの数年間で日本企業の間で急速に広まったという現状が分かります(図1)。
また、EXを向上させることが今後の経営・人材マネジメントにおいてどの程度重要になると思うか調査したところ、「経営の注力テーマの一つになる」もしくは「経営の重要課題になる」と回答した企業は全体で53%、大企業にいたっては69%と、企業規模にかかわらず半数以上を占める結果となりました(図2)。この背景には人材の流動化が一層激化していることがあると考えられ、EXの向上はもはや人事部門だけではなく、経営も含め企業全体で取り組まなければならないテーマとなっていることが分かります。
EX向上施策の実施状況についても調査したところ、2018年の調査時には1割に満たなかった実施率が全体で13%、大企業で21%と、徐々に施策実行フェーズに移行していることが分かりました(図3)。しかしながら、施策実行フェーズに移行している企業の中でも多くの企業は「部分的な検討・実施」に留まっており、EX向上をゴールとして捉え、多様な従業員が抱えるペインポイントを解消していくといった体系的な取り組みにまでは至っていないことが示されました。大企業においても73%の企業は部分的な検討・実施に留まっている状況です。
次にEX向上施策の実施領域・レベルについて見ていきます。PwCではEXを6つの領域に分けて定義しており、各領域におけるサーベイ回答企業の「EX成熟度」を計測しています(図5)。
「EX成熟度」を領域ごとに見てみると、「ワークスタイルオプション領域」の平均がレベル1.3と最も高い結果となっており、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い働く時間や場所に自由度・柔軟性を実現するための施策に取り組んでいることが背景にあると考えられます(図6)。
最もレベルが低かったのは「ネットワーキング領域」でした(平均:レベル0.3)。ワークスタイルオプションが充実したことでリモートワークも含めた働く環境が整備されつつあることがうかがえますが、さらに高い価値を発揮できるようにするために従業員同士のつながりの充実に着目した施策を講じている企業はまだ少ないと見られます。
また、従業員エンゲージメントについても、EXとの関係性や調査の活用状況を分析しました。
まず、両者の関係性については、EX成熟度が高い企業ほど従業員エンゲージメントが改善していることが明らかとなりました(図7)。一般に従業員体験価値を高めることがエンゲージメントの高まりにつながると言われますが、それを裏付ける結果となりました。
なお、従業員エンゲージメント調査については6割を超える企業(66%)が実施していましたが、調査結果を踏まえて向上施策を実施し、効果創出につなげている企業はわずか13%に過ぎないことも分かりました(図8)。
こうした結果から、従業員エンゲージメント調査は実施したものの、どのように施策に落とし込めばよいのか分からないといった課題が多くの企業を悩ませていると考えられます。
このような課題に対し、EX向上をゴールとして掲げ、自社の従業員が抱えるペインポイントを把握し解消していくといった体系的な取り組みを進めることが、解決策の一つの鍵になるとPwCでは考えています。
実際に、今回の調査でも、「EX向上につながる施策を部分的に検討・実施していた」と回答した企業のうち、従業員エンゲージメントが改善している企業は22%に留まるのに対し、「EX向上につながる施策を体系的に検討・実施していた」と回答した企業のうち、従業員エンゲージメントが改善している企業は67%に上ることが分かっています(図9)。
人材獲得競争が激化する中で優秀な人材を獲得・維持するため、従業員エンゲージメントを高めることは人事部門のみならず経営の重要なアジェンダとなっています。調査結果を踏まえると、EXと従業員エンゲージメントには強い相関があります。
今後、より一層従業員エンゲージメントを高めていくためには、多様な自社の従業員が抱えるペインポイントを把握し、その上でEX向上につながる施策を検討・実施するためのプロセスを整備していくことが欠かせないでしょう。