成長のための資金調達は、ファミリービジネス企業に常に付きまとう課題であり、私たちのファミリービジネスサーベイでも必ず懸念のある領域とされてきました。今回の結果では、事業を大幅に成長させたいと答えた回答者の76%が、そのための財源として少なくとも部分的に自己資金(一族からの出資、貸付も含む)を使用すると答えました。自己資金を選ぶ会社の中には、明らかに、銀行から融資を受けたり外部の投資家に頼って経営の議決権を求められたりするよりも良い選択肢だとして自己資金を選んでいる会社があります。
PwCスペインのファミリービジネス企業担当リーダー、María Sanchíz氏は、次のように説明しています。
「スペインでは、多くのファミリービジネス企業が自己資金を使うことを好む。融資のために会社を担保に入れることは好まず、投資するのであれば自分たちの会社以上に良い投資先はないと考えています。しかし、これには非常に現実的なリスクがあります。何かがうまく行かなかった場合に、一族の資産が全てリスクにさらされ、事業もリスクにさらされます。」
「当社は、インドで初めて1990年代後半にプライベートエクイティから資金を調達した企業の1社でした。この方法を選ぶに当たっては、さまざまなことを慎重に検討しました。一族全員で集まって話し合いました。物事が根本的に変化し、今まで以上に説明責任を明確にして、変化に対応しようという意欲を持たなければならないことが分かっていたからです。また、プライベートエクイティが時間的なスパンという点で非常に異なった視点を持っていることも分かっていました。プライベートエクイティの投資家は、短期のリターンを求めるからです。」
外部の資金提供者の中には、ファミリービジネス企業の持つ長期的な視点に合わない短期的な収益を生み出すことに重点を置く可能性があるため、適切な資金提供者を見つけることが重要です。とはいえ、自己資金を使うことは、必ずしも自主的な選択の結果ではありません。多くのファミリービジネス企業は、他の資金調達ができないか、そのコストが高すぎるという理由で、自己資金を出すことを余儀なくされてきました。ここでも、優れた戦略的な計画があれば、将来の成長を実現するためのギャップを乗り越える橋渡しとして機能するでしょう。会社に適切な資本構成があるのかどうか、将来の機会を手に入れるために必要な資金へのアクセスがあるのかどうかを見極めるのに、戦略が役立つためです。
オーナーや家族の戦略と会社の戦略の間で調和が図られていることの重要性も、決して過小評価できません。さまざまなニーズと優先順位を抱えた株主が多数、会社に存在していれば、新規事業に投資したり抜本的な変化を取り入れたりする際の会社の意欲と能力に影響する可能性があります。資本市場に出て行って資金を調達したり、他のプライベートな投資を模索したりすることは、会社のオーナーに重大な影響を及ぼす複雑なプロセスです。このため、一族内で極めて明確かつ徹底的にコミュニケーションを図ることが要求されます。
より直近の戦術的なレベルに目を向けるならば、ファミリービジネス企業は、資本構成を最適化することで投資資本を作れるかどうかを検討する必要があります。
さらに、身内であれ外部の市場であれ、適切な条件で資本が調達されていることを確認しなければなりません。
「当社にはロシア貯蓄銀行という強力なパートナーがいますが、長期的な目標は株式公開です。上場に向けて準備をしていくということは、今まで以上に透明性を高め、統制力を強化することを意味します。これらは全てポジティブな変化です。」
Stuart Morley
PwCオーストラリア ウェルス・プライベート・クライアント担当責任者
David Smorgon OAM
PwCオーストラリア ファミリーアドバイザリー会長
世代間の富の継承には、一族内のさまざまな個人的問題が関係します。私たちがこうした案件にかかわる際、一族との最初の面談、時点でしばしば見られる状況が、一族の富の改善や保護にかかわる事柄が定期的にコミュニケーションされていない状況です。富やオーナーシップといった問題を持ち出すことすらできないことです。これは必然的に、さまざまな人の間にさまざまな期待を生じさせ、得てしかるべきものに対してもさまざまな理解をもたらします。その結果、役職が固定化したり、嫉妬はもとより対立にまでつながったりする可能性があります。このような状況は、非常に富裕な一族にも確実に存在しています。こうした一族は多くの場合、社交的なイベントや集まりを定期的に開いていますが、これらは顔を突き合わせて難しい問題を話し合う場ではありません。実際、一族にとって、このプロセスを始めるのは容易なことではありません。このステップを踏み出すには勇気がいります。
しかし、そうすることで、一族を調和させ、いつまでも継続させられるようになるでしょう。関係を守りながら後継者計画を前進させ、一族として一層効果的に行動するのも容易になるでしょう。成功法則を見つけることは難しいですが、一族の富を守っていくことはさらに難しい可能性があります。1代目が富を築き、2代目が富を謳歌し、3代目が富を失うというのは、陳腐な常套句のように聞こえるかもしれませんが、これは実際、あまりにも多くのケースで真実と言えます。そうなる理由は多数あります。成長を加速しようとしたがための過度の負債、贅沢な私生活、離婚のもめごと、リスク分散せずに特定の一つへの投資などです。
ファミリービジネス企業は、多くの公開企業と異なり、短期的な業績を追求しないことから、多くの家族が長期的に投資しています。しかし、必ずしも富の投資先を分散させているとは限らず、単一の資産に依存していることがあります。
どんなに入念に計画を立てても守りきれない不可抗力というのは必ず存在するものです。政府の規制の変更、技術の進歩、市場や製品の抜本的な変化、国家や政治のリスクなどです。あらゆるファンドマネージャーがリスクを分散せよと説くのはこのためです。にもかかわらず、多くのファミリービジネス企業は、自分たちの資産に対してこの基本的な原則を適用していません。その原因は、感情的な理由だ(と考えられます)。オーナーは当然ながら、自分が築き上げた事業に強い思い入れを持っています。それがなければ、そもそも成功はなかったはずです。しかしながら、財産を守るということにおいて、この感情を取り払うことが重要です。そこで、部分売却やリキャピタリゼーション、銀行融資など、一族のために投資配分を検討してほしいのです。
ファミリービジネス企業の多くは、自分たちの事業のほうがどんなファンドマネージャーよりも大きなリターンをもたらすと考えています。実際、これは真実であるケースも多くあります。とはいえ、長期にわたる安定したリターンを創出する上で、分散投資は同じくらい重要です。私たちは、オーナーが引退を考え始めた時に、視点を変え、望むライフスタイルを維持するための収入のことを考え始めるのを、しばしば目にしてきました。これは、効果的な後継者計画という観点に立ち、世代間の富の継承を成功させるためのあらゆる選択肢を検討するのに良いタイミングです。
Same Passion, different paths: How the next generation of family business leaders are making their mark.
The next generation of family business leaders are well prepared, confident, and above all they have great ambition – both for themselves and for their firms. 88% want to do something special with the business.