「息子と甥が家業に参加したいと言ってくれればうれしいですが、まずは他社でキャリアを積んでほしいと思います。その上で家業に入るのであれば、適切なスキルがなければなりません。ファミリービジネス企業は、一族のメンバーに適切でない役職を与えることで失敗しています。どんな役職であれ、その役職に価値をもたらさなければなりません。一族のメンバーであるというだけで、十分に大変なのですから。」
これまでにない規模の世代間の富の継承が、向こう5年以内に起こる確率が高くなっています。その富の多くはファミリービジネス企業の株式で構成されていて、それゆえに、後継者計画の策定と確実な実行がなおさら重要になります。その重要性は、ファミリービジネス企業全体、さらにはファミリービジネス企業が支えている経済全体にかかってきます。このように大きな変化は、大きなリスクをもたらしますが、大きなチャンスにもなり得ます。次に控えている世代は、前の世代よりもアグレッシブで、オープンマインドで、心の準備もできているからです。
「必要なのは、強力で将来に目を向けたリーダーです。そのような人材は、新しい世代それぞれに見いだす必要があります。私たちは承継計画に長い時間を費やし、次の世代に対して4年間の能力開発計画を設けています。そして彼らに子会社で職務経験を積む機会を提供します。」
私たちは今回、ファミリービジネス企業の次世代のリーダーを対象に詳細な調査を行って、彼らにとっての優先順位は何か、彼らは未来をどのように見ているかを探りました。その結果の中には、決して驚きではないこともありました。次世代は、アグレッシブで、ダイナミックで、変化に対して柔軟です。自分の世代が終わるまでには、前の世代から引き継いだ会社とは非常に異なる会社にしたいと考えています。新しい製品やサービス、新しい市場を模索したいばかりか、新しいロケーション、新しいビジネスモデルすら探求したい意向なのです。
回答者の88%は自分らしさを打ち出す特別なことをしたいと答え、79%は事業をどう前進させるかについてアイデアがたくさんあると答えました。また59%は製品ポートフォリオを多様化したいと考えていましたが、68%が10年先ですら自分の会社がこの変化を取り入れる可能性は低いと答えました(今回の結果はファミリービジネスサーベイの結果と一致しています)。このことは、次世代の47%が現在のメイン事業と平行して別の事業を立ち上げたいと考えていた理由を説明しているかもしれません。
また、次世代は、現世代よりもそれを事項する確立が高いのです。次世代の多くはミレニアル世代であり、この世代は職場に対して異なる期待感を抱いており、優先順位も異なる上、デジタル技術に慣れ親しんでいるためです。これらの要因は全て、ファミリービジネス企業の未来の方向性に影響するでしょう。次世代の多くは、ビジネススクールの学歴もあり、効果的な戦略や中期計画の策定に必要となる分析ツールを持っています。
事実、ほとんどのファミリービジネス企業にとって、次なる世代交代は、最も興味深く、最も意義深いものになると、私たちは考えています。今から5年、10年後のファミリービジネス企業の経営者は、現行のほとんどのファミリービジネス企業の経営者とは非常に異なる人物像であり、考え方も非常に異なるでしょう。
Sian Steele
PwC英国 ファミリービジネス企業担当リーダー
次世代が事業を継いだ後に成功する確率を高めるため、現世代にできることは主に五つあります。
事業承継の最も重要な成功要因を一つ挙げるとすれば、綿密な計画でしょう。具体的には、後継ぎの世代のキャリアと能力開発を詳細に計画して、幅広い経験と適切なスキルを習得できるようにすることから始まります。そして可能であれば、自社の市場以外で事業展開している他社に勤める方法を見つけることです。これにより、将来、家業に戻ることにした場合のために信頼感を構築するのに役立ちます。
次世代の多くは、家業に入り、いつの日か継ぐことを楽しみにしています。しかし、それが負担にならないようにすることが重要です。次世代が自分の未来を自分で選べるよう自由を与える必要があります。
今回の回答者の54%が、現在のメインの事業と並行して別の事業を立ち上げる可能性に言及しました。また、次世代を対象にしたGreat Expectations調査の回答者の47%が、その願望があると答えました。このような事業は、次世代に自分の責任領域を与えるすばらしい方法となる可能性があります。その事業で次世代は、学習し、新しいアイデアを探求し、重要なスキルを習得できます。それに、この新しい事業が今の会社の未来へと進化する可能性もあります。
次世代のほとんど全て(次世代調査の回答者の91%)が、会社を継いだ後も親からのサポートを歓迎すると答えました。また、親から受けたメンタリングや学んだ教訓について肯定的に言及した次世代もたくさんいました。しかし、必要なときに手を差し伸べることと、決して経営を手放さないことの間には、違いがあります。自分が経営した会社、多くの場合は自分が興した会社から、身を引くのが難しいことは理解できます。Great Expectations調査に協力した次世代の61%は、これが自分の家族の課題だと認めました。このため、自分の将来の役割が正確に何であるかを話し合って、会社のこと以外に興味の対象を見つけることが重要です。他にすることがあれば、「会社に行く」誘惑に駆られずに済むでしょう。
現世代が担うことのできるポジティブな役割の一つが、家族のガバナンスに関する役割です。ファミリービジネス企業では対立や誤解が極めて危険な要因となり得ることは、誰もが知っています。Great Expectations調査に回答した次世代の52%が、「家族内の政治」に対応しなければならなくなる可能性を案じていました。親の世代は、この部分の対応役として理想的な立場にあります。経験と年齢の「重み」を持っているためです。家族のガバナンスに関する問題を全て解決しきれていない場合、あるいは家族憲章や家族会議があったほうが良いと思われる場合は、現世代がこのタスクを担当し、次世代が事業の舵取りに専念できるようにします。
私たちは何十年もファミリービジネス企業と協力してきました。実際、現世代のファミリービジネスリーダーの多くは、最初にアドバイスしたときに次の世代でした。 私たちは、家族の企業が直面している個人的およびビジネス上の問題の両方をマネジメントするのを支援するために、私たちの専門的な経験を提供できます。
Same Passion, different paths: How the next generation of family business leaders are making their mark.
The next generation of family business leaders are well prepared, confident, and above all they have great ambition – both for themselves and for their firms. 88% want to do something special with the business.