加速する生成AIブームとビジネスシーンの実情:ユースケース創出が急務

生成AIに関する実態調査2023

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  • 2023-05-19

連日のように世間を騒がせている生成AIは、その技術的な革新性によりさまざまなビジネスへの影響が予期されており、一部の業種や職種が生成AIにより代替され得るといった見解も生まれつつあります。こうした世論に対する実態を調査すべく、1,081人を対象にアンケートを実施したところ、過半数が生成AIそのものをまだ認知していないという実情が判明しました。残りの認知層に限ると、生成AIに対する関心や活用意欲、業務代替に対する肯定的な見解が多いものの、既に具体的な活動にまで至っているケースは10%未満です。さらに、業務領域によっても生成AIへの認知や関心に乖離があることがみえてきました。今後はさまざまな領域における生成AIユースケースの創出と、技術的可能性の明確化が必要とされます。

1. はじめに

テキストの添削や要約、プログラム、画像、動画、音声の生成など、従来のAI技術では不可能だったことを可能とする生成AI技術の誕生で、さまざまなビジネスが影響を受けることが予測され、一部の業種・職種は生成AIによって代替されるといった見解も出てきています。

PwCコンサルティング合同会社のデータアナリティクスチームはこのような背景を受け、各社の生成AIに対する認知度、ポジティブ・ネガティブのイメージ、検討状況ならびに現状の課題を明らかにすることを目的に、「生成AIに関する実態調査2023」を実施しました。

本調査結果が、今後生成AIの活用を検討している企業・組織団体にとっての一助となれば幸いです。

2. 日本企業における生成AIの今

連日、メディアが生成AIに関して取り上げており、生成AIに対する認知や関心は日本全体でも高まりつつあるかのように感じられますが、今回の調査では、そのようなイメージと実態との乖離が浮き彫りとなりました。

具体的には、生成AIを認知しているかを問う質問に対し、全体の54%が生成AIを「全く知らない」と回答しました。また、「聞いたことがある」などと回答した認知層に対して、生成AI関連で知っているサービスを問うと、60%がText-to-textサービスであるChatGPTと回答した一方、Text-to-imageのDALL-EやMidjourneyは4%以下の認知度でした。

認知層における生成AIの自社への活用に対する関心は「あり」が60%、生成AIの存在は自社にとってチャンスか脅威かの問いは、チャンス派が脅威派の5倍と、活用に前向きな一方、既に実際に予算化や案件推進に至っているケースは認知層の8%程度でした。

また一従業員として、生成AIによる業務代替の可能性に対する見解を問うたところ、ポジティブに捉えている層は59%と過半数を上回る反面、代替される程度に対しては業務の半分以下と回答する層が(「代替される」と回答した中で)59%と最も多く、生成AIによる業務代替は部分的なものにとどまるという見解が多数派といえます。

3. 生成AIに対する見解から5つにグルーピング

質問への回答を説明変数としてクラスタリングを実施し、5つのグループに分類したところ、生成AIに対する認知・関心と、生成AIへのポジネガイメージで傾向が分かれました。

さらにそれぞれに多く含まれる属性(業種/部門/職種/企業規模/職階など)を確認したところ、生成AIを知らないグループ(全体の35%)には建設、物流、不動産などの業種が、生成AIを知らないが不安が先行する傾向のグループ(全体の19%)には医療系専門職が多くみられ、前者は業界に関連した生成AIのユースケースが少ないことから情報をインプットする機会がないことが、後者はChat GPTが医師資格試験に合格した等のニュースなどが原因として考えられます。

生成AIを認知しているもののポジネガイメージが定まっていない「様子見」に相当するグループ(全体の14%)には、顧客サービスなどの対人スキルが重要視される職種が集中していました。

生成AIに対して可能性を実感しているものの、イメージに関してはポジネガの両派が混在するグループ(全体の9%)には、研究開発などの先端技術に対して関心を持ちやすい職種や、事務作業等で生成AIを活用しやすいであろう事務・アシスタント関連の職種が比較的多く含まれていました。

生成AI活用に積極的なグループ(全体の23%)には、DX推進やIT関連部門、経営企画部門に所属する人や、係長・課長などの中間管理職が多く含まれ、DX推進に向けた生成AI活用への期待の高まりが垣間みえました。

上記の結果から、生成AIと親和性の高い業種や職種では、生成AIの活用に関心があるといえます。反対に、生成AIと業務との関連を実感できない、あるいは断片的な知識で生成AIに対して不安が先行してしまっているレイヤーに対しては、生成AI活用の具体的なイメージや、生成AIが技術的に可能とすることへの正しい理解を促進する必要があるでしょう。

4. ユースケースの創出と技術的可能性の明確化が急務

今回の調査から、生成AIに対する全体的な認知度の低迷、認知層における活用への積極性や具体的取り組みの不足といった実態が明らかになりました。さらに回答傾向を属性別に掘り下げると、ドキュメントの執筆や添削、校正、要約、情報収集といった高度な事務作業に関連する領域と、専門知識や技術、経験、ノウハウを要するような領域との間には、生成AIに対する認知・関心に乖離があることが分かりました。認知・関心が低い理由として、生成AI活用に対するイメージの湧きにくさや、技術的可能性への理解が曖昧であることが推察されます。これらの課題に対応するため、今後は、さまざまな業種や職種における生成AIのユースケースを創出し、生成AIに関する技術的可能性への理解を促し、また、それらを通じて人間と生成AIの役割を明確化することが、急務となるでしょう。

5. おわりに

黎明期を迎えた生成AI市場に乗り遅れないために「生成AI市場へどのように参入していくか」もしくはビジネス課題および社会課題解決の観点から生成AIを「どのように利活用していくか」を企業は迅速に判断、実行していく必要があります。

PwC Japanグループではこれらの判断・実行に際し、「事業化支援」「導入支援」「リスク管理支援」の3つのサービスを提供しています。

1. 生成AIを活用した事業化支援

事業化支援では、クライアントの生成AIに関する事業化案の創出から、事業の推進までを支援します。

  • 最新技術・市場トレンド調査
  • アイデアソンによる新規事業検討
  • ITインフラ・アプリケーション構想策定
  • 運用保守体制検討など

2. 生成AIの社内導入支援

既存業務における課題を分析の上、新規業務プロセスの検討、既存システムへの組み込みや組織変革を支援します。

  • 生成AI適用可能業務検討
  • 生成AIによる新規業務プロセス検討
  • 生成AI活用人材育成・組織変革
  • 既存システム連携検討など

3. 生成AIに関するリスク管理支援

生成AI特有の新規リスクの抽出と対策方針の検討を支援します。

図 PwC Japan、生成AIコンサルティングサービスの提供を開始

「2.生成AIの社内導入支援」に関してはサービスを本格的に開始する前に導入効果の初期診断をクイックに行うプログラムがあります。

PDF版ダウンロードはこちら

[PDF 4,618KB]

生成AI(Generative AI)コンサルティングサービス

PwCは、先端技術を活用した事業構想の実績、AIに関する支援経験、研究機関との共同研究経験を豊富に有しております。これらを基に、生成AI市場への参入判断、生成AI利活用の導入、生成AIに関するガバナンスの構築を支援することで、デジタルディスラプション時代における企業経営の実現に貢献します。

執筆者

藤川 琢哉

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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三善 心平

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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木村 俊介

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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