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2023年10月の前回調査から半年の期間が経過した今回の実態調査では、関心度・推進度が継続して高い水準を維持しており、各社、効果創出に向けた試行錯誤の時期に入っていることが推察される結果となりました。一方で、得られた生成AIの活用効果に対する当初期待値との差分を問う質問については、「期待を大きく上回る成果を上げた」と「期待を下回る結果になった」とで回答が分かれてきており、生成AI活用による成果の二極化の兆しが感じられます。
生成AIで期待を超える成果を生み出している企業は、生成AI技術の可能性とその技術活用により起き得る未来を経営層が理解して経営ビジョンに組み込んでいること、また、既存業務の効率化にとどまらない業界構造変化を意識した目線の高さを持って、適切な投資を促し早期から活用を推進していることがうかがえます。また生成AIをどういった業務で活用するのかといった「ユースケース設定」が、生成AIにより大きな成果を生み出すための最も重要な要素であることも明らかになりました。
今後、企業において、人と生成AIの新しい関係性構築によるドラスティックな組織・業務変革を目標とした、コスト削減、トップライン向上やイノベーション創出の実現、成果の従業員への還元と企業ブランド力向上による優秀人材の流出阻止・獲得を進めるような動きが促進されると考えられます。
PwCコンサルティング合同会社のデータアナリティクスチームは、企業における生成AIの認知度、活用状況、および現状の課題を明らかにすることを目的に、「生成AIに関する実態調査2024 春」を実施しました。2023年4月・10月に発表した前回、前々回の実態調査以降、生成AIを取り巻く環境は著しく変化しています。
まず、生成AI技術の急速な進化により、多くの新しいツールやアプリケーションが市場に登場しました。これにより、生成AIの活用範囲が広がり、企業がその潜在能力を効果的に引き出す機会が増えています。同時に、生成AIを取り巻く規制も強化されており、企業はコンプライアンスの観点からも注意を払う必要があります。
さらに、生成AIに関連する社会的な議論も活発化しています。フェイクニュースの拡散やプライバシー問題に対する懸念が高まり、生成AIの倫理的な利用に対する関心が増しています。これらの要因が相まって、生成AIを上手く活用できている企業とそうでない企業の間で二極化の兆しが見えます。
本調査は、これらの背景を踏まえ、売上高500億円以上の日本国内の企業・組織の課長以上の方々を対象に実施されました。本調査結果が、生成AIの活用を進める上での貴重な指針となり、企業がこの先進技術を効果的に取り入れ競争力を高めるための一助となることを期待しています。
「社内で生成AIを活用中」または「社外に生成AIサービスを提供中」と回答したのは前回調査から+9pt、また、他社事例に「とても関心がある」と回答したのは前回調査から+4ptで、着実に普及/関心度合いは上昇しています。一方で、2023年春から秋に見られたような大幅な変化以降、引き続き高い関心・推進度合いを維持しながらも、各社試行錯誤していることが推察されます。(図表1)
各業界の生成AIへの向き合い方の違いを明らかにするため、「前回/今回調査の生成AI活用の推進度」を業界横断で順位付けを行い、業界ごとの順位の変動を比較しました。
この結果から、生成AI活用に対する以下の4つの特徴的な業界層を抽出することができました(図表2)。
パイオニア層は社内向けだけなく社外向けのサービス提供も活発に行われており、今後も日本の生成AI市場をリードしていくと想定されます。期待向上層では、適切なユースケースが市場展開され、早期に業務適用させるべく直近で生成AI推進にリソースを投下したと推察します。
一方で、停滞傾向にある業界層が今回調査から出現し、これらの業界はこれまでのユースケース企画を見直し、生成AIに適した利用法を再度模索していると推察します。未だ様子見の業界層においては、活用にあたっての何らかのリスクを懸念し、具体的な活動につながっていない業界もあると考えられます。
生成AIで得られた活用効果に対する当初の期待値との差分を問う質問に対しては、「期待通りの効果があった」との回答が48%で最も多く、9%が期待を大きく上回る成果を上げ、18%が「やや期待を下回る」「期待とはかけ離れた結果になった」と回答しました(図表3)。
また、活用効果が期待を大きく超えた理由と期待未満だった理由の1位回答の順位比較をした結果では、生成AI活用効果が期待を大きく超えたと考える回答者の38%が「適切なユースケース設定」を最も重要な成功要因と認識している一方で、活用効果が期待未満と考える回答者の30%が「データの品質」を最も影響がある要因だと回答しました。どちらにしても、「適切なユースケース設定」「データの品質」が活用効果を得るための両輪と考えられていることがうかがえます。
加えて、期待を大きく超えた層は「経営層ビジョンとの一致」を理由の1位に挙げた回答者が7%存在したのに対して、期待未満だった層ではその回答割合が0%でした。生成AI活用を進めるにあたっては、経営層が生成AIに対する理解やその技術がもたらす変革の可能性についての認識を持ち、会社としてその取り組みをサポートする方針が必要と考えられます。
一方で「社員のAIリテラシー」に関しては期待を大きく超えた層は2%が最も影響がある要因だと回答しているのに対し、期待未満の層では12%が最も影響がある失敗要因と回答しています。これは、期待を大きく超えた層は社員のリテラシーやスキルの内製が活発に進んでおり、それらのスキル獲得が備わっていることが前提となっていると考えられ、対して期待値未満の層では、まだ社員への生成AI育成が推進しきれていない現状がうかがえます(図表4)。
このように生成AI推進の勘所を適切に押さえて推進できている企業とそうでない企業で生成AI活用効果の二極化が見えています。期待を大きく超える生成AI活用効果を出している企業は視座を高く持ち、取り組みを早期に開始し、多くの予算を掛け、適切なユースケースを設定しており、生成AI活用を企業活動の重点項目として取り組んでいると想定できます。
生成AI活用による社員業務の変化については、「生成AIによって業務が一部もしくは完全にAIに置き換わると思う」とした回答者の55%が、「社員はより上流かつ創造的な業務または新規事業にシフト」としています。具体例としては「研究開発」部署へ生成AIを導入している回答者の回答割合は平均より17pt高く、特許調査、データ入力、論文作成等の事務作業を極小化し、仮説設定等の創造的な業務にリソースシフトすることが求められることがうかがえます。
また、30%の回答者が「社員の仕事は奪われ人員削減」と回答しています。具体例として「コーポレート/バックオフィス」へ導入している回答割合が平均より15pt高く、「画像/音声系」のユースケースを実施・検討している回答者の回答割合が平均より12pt高いため、単純作業の極小化やクリエイティブ業務における業務効率化が検討されていると考えられます(図表5)。
生成AI活用効果の還元先については、「従業員の雇用時間への還元」「新規事業への登用等、新たな投資に回す」「従業員への利益還元(給与増加、ボーナス等)」が上位を占めており、生成AI効果をより魅力的な会社に変化するための従業員への還元に充てる想定であることがうかがえます。
前述の分析を踏まえ、それぞれのTopicからファクトとその解釈を以下に示します(図表7)。
生成AIは黎明期の技術であるため、各社試行錯誤をしながら活用を推進している中で、成果については二極化の兆しが見えています。特に期待を大きく超えた成果を出している企業は、経営層が生成AIにより起き得る変革を理解し、適切な投資を与えて生成AIの取り組みを推進し、適切な成果を実現していることがうかがえます。
また生成AIによって定型作業を極小化して人員を削減し、生み出した余力を労働環境向上や賃金増加、社外ブランディングに投資しながら優秀人材の確保に乗り出していることも分かりました。
これらを踏まえて「生成AIを経営資源に据えたドラスティックな経営・業務変革を行う企業」が生まれ始めていると考えることができます(図表8)。
前述の調査結果や示唆を受け、生成AIを経営資源に据えた変革の先に起き得る近い将来の予測を以下に整理しました。
調査実施時期 | 2024年4月3日~4月8日 |
回答者数 | 912名 |
調査方法 | Web調査 |
調査対象の条件 |
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[PDF 4,792KB]
PwCは、先端技術を活用した事業構想の実績、AIに関する支援経験、研究機関との共同研究経験を豊富に有しております。これらを基に、生成AI市場への参入判断、生成AI利活用の導入、生成AIに関するガバナンスの構築を支援することで、デジタルディスラプション時代における企業経営の実現に貢献します。