組織文化:今こそ行動を起こす時

世界各国の経営陣と従業員3,200名を対象とした「グローバル組織文化調査2021」

経営陣は組織文化を力強い味方と捉えている

PwCが世界40カ国以上の経営陣と従業員約3,200名を対象に実施した最新のグローバル組織文化調査によると、強い組織文化はビジネス上の成果を向上させています。実際、経営陣の大多数(69%)が、コロナ禍における自社の成長は組織文化によるところが大きいと回答しています。世界中の企業が大きな変革を求められた1年でしたが、回答者の3分の2以上は自社の組織文化が変革実現のための取り組みに役立っていると答えています。同様に、自社はこの1年に変化に適応できたと答えた回答者の70%近くが、自社の組織文化が競争優位の源泉になっているとも回答しています。

全体的には、回答者の大多数(67%)が、組織文化は戦略や経営モデルよりも重要であると答えています。また、組織文化の課題として、人材の採用・定着力、デジタル化、安全衛生、コラボレーション(協力体制)に最優先で取り組むべきであるという点でも意見が一致しました。しかし、組織文化について必ずしも全員の意見が一致しているわけではありません。調査データによると、経営陣が語る組織文化の姿(特に多様性・公平性・包摂性:DEI)と従業員が実際に組織文化に対して感じていることの間には大きな隔たりがあります。

しかし、この隔たりを解消することは可能です。この1年の状況が示した通り、短期間での変革はクリティカル・フュー(少数の重大な影響を与える行動)に焦点を絞ることで実現できます。今後、経営陣がいくつものビジネス上の喫緊課題に取り組んでいく中で、自社が一段と成長できるか、それともかろうじて生き残るのかは、組織文化によって変わり得るのです。

「組織文化を競争優位の源泉となる独自のものとして捉えている組織は、連帯感をしっかり保ち、顧客ニーズに適切に対応し、革新性をもって優れた成功を収め、業績を向上させています」

Bhushan SethiPwC 組織・人事戦略ジョイントグローバルリーダー

主な調査結果

組織文化は経営陣のアジェンダの中で優先度が上がっている

自社に独自の組織文化が根付いていると答えた回答者には、収益、従業員満足度、顧客満足度がコロナ禍においても向上したとの回答が多く見られました。

  • 経営幹部・取締役会役員の66%が、組織文化は組織の戦略や経営モデルよりも業績にとって重要と考えている

  • 経営陣の72%が、自社の組織文化は変革実現のための取り組みを成功に導いていると回答している

図1  質問:「自社の組織文化は経営陣のアジェンダの中で重要テーマである」との記述に、どの程度同意しますか。

組織文化を変革する9つの主要イネーブラー

PwCは組織文化を変革する9つの主要イネーブラーを特定しています。調査によると、コロナ禍においてこのうち4つ以上を活性化させた組織では、組織文化が競争優位の源泉となる可能性と組織の適応力が著しく高まったことが明らかになりました。

したがって、組織文化を競争優位として活用する場合には、初めに、自社の組織文化は現時点でビジネス上の成果を向上させる能力に寄与しているのか、それとも阻害しているのかを評価します。次いで、事業の戦略目標を後押しするためには、どのような特性や行動を最も進化させる必要があるのかを特定します。最後に、組織文化の積極的な管理に着手します。そのためにはおそらく、組織文化を変革する重要なイネーブラー(公式・非公式の両方)を活性化させるために必要なケイパビリティを新たに構築することになります。

図4 組織文化を変革する9つの主要イネーブラー

Katzenbach Center(カッツェンバック・センター)について

PwCの戦略コンサルティング部門Strategy&に属するカッツェンバック・センターは、組織文化・リーダーシップ・チームワークを研究する組織として、25年前から組織文化が事業の発展に及ぼす影響について研究してきました。同センターでは、組織文化を「自律的な行動パターンであって、物事のやり方を決定づけるもの」と定義しています。2021年、約3,200名を対象に調査を実施し、コロナ禍を背景とした各自の体験について振り返っていただきました。その結果、組織文化がコロナ禍との闘いという物語のヒーローとなったケースがいくつもあることが明らかになりました。経営陣はコロナ禍において得た教訓をしっかり検討することで、今後に向けた洞察を得ることができるでしょう。

詳細はこちら(英語)

outside stairwell

グローバル組織文化調査2021――日本企業における組織文化変革

世界40カ国以上の経営陣と従業員を対象にした「グローバル組織文化調査2021」の結果をもとに、日本にフォーカスした分析を実施しました。グローバルの結果との対比から日本企業の特徴や課題を洗い出したところ、特に経営陣と従業員の間の組織文化に対する認識の乖離や、チェンジマネジメントに必要な条件の不足などが、課題として挙げられています。

一方で、組織文化は変革を実現する重要なイネーブラーの1つとなります。変革にあたって単純に戦略やオペレーティングモデルを変えればいいというわけではなく、これらを実行する従業員や組織自体が同じ方向を向いている必要があるためです。今後も企業はさまざまな外部変化に晒され、それに適応するために企業自体も変わっていく必要に迫られるでしょう。そのような環境下で日本企業が生き残るためのヒントとして、今回私たちは、組織文化を変革し続けるために備えるべき要諦を7つに整理しました。今後幾度となく迫りくるであろう時流の転換点に備えて、「変化し続ける」ことに重きを置いています。

時代の変化はよりスピードを速め、時には予想だにしない変化も生じるでしょう。これからの社会の中で、組織文化の変革を梃子に日本企業が生き残るために、本レポートがその一助となれば幸いです。

PDF[1,019KB]

インサイト/ニュース

20 results
Loading...

HRデジタルトランスフォーメーションサーベイ2024 HRテクノロジーを最大限活用するための5つのFindings

HRテクノロジーに対する投資は堅調であり、2020年時と比較して増加しています。近年、生成AIなどのテクノロジーの発達も著しく、今後全ての業務領域でシステム化が進むと考え、人事施策と連動したテクノロジーの活用がより必要となってくることが予測されます。

グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2024:絶え間ない変化の中で、成果を上げ続けるにはどうすればよいか?

56,000人以上の従業員を対象とした2024年の調査レポートでは、変革を導くリーダーシップや生成AIの活用といった主要な変革テーマについて、グローバル全体と日本の傾向を比較しながら、変化に対応するために経営陣がとるべき6つの重要なアクションを提言します。

Loading...