
不正や不祥事を防ぐ循環型の仕組みでリスクカルチャーをアップデート―社会との認識のズレを修正し、多様な価値観を包摂
業界や企業の内的要因によるリスクに対してコンプライアンス研修やルール整備を行っているものの、不正や不祥事を防ぐまでには至っていない現状について、「リスクカルチャー」という視点から考察し、対策を探ります。
社会・経済情勢がかつてないほど目まぐるしく移り変わる中、経営上のリスクの根はどんどん広がり、複雑に絡み合っています。激しい外部環境の変化の中において企業価値向上を成し遂げるには、リスクへの備えを固める一方で、競争力を高める好機として変化を捉え、経営の中身を積極的に変革する不断のトランスフォーメーションが求められます。
外部環境の変化に対してこれまで同様の経営を継続するだけでは企業価値は上がりません。激動の時代を生き残るには、成功体験を捨て、もう一段踏み込んだ事業の「選択と集中」をする覚悟が欠かせません。
新陳代謝を促す事業ポートフォリオの入れ替え、投下資本の効率性の向上、経営判断を早めるための親子上場の解消などの変革に取り組むことが求められます。
また最適化した事業ポートフォリオに対して事業計画やKPI(評価指標)の達成状況を可視化するモニタリング機能の強化など、適切な目標管理を行い、各国にまたがる事業を統合的に経営し、グループ全体としての戦略を実行・実現するためのグローバル・グループガバナンスの整備・高度化が必要です。
KPIモニタリングと事業ポートフォリオ入れ替え
【関連する主なアジェンダ】
トランスフォーメーションを進めるうえで、グループ組織を適切に運営するための仕組みである「グループガバナンス」の整備・高度化はその土台になります。グループガバナンスを構成する重要アジェンダに対し個別に強化を図ると同時に、それらが有機的に連動するよう一貫性をもって取り組むことで強固なガバナンスの実現につながります。さまざまなアジェンダがある中、どのアジェンダに優先的に取り組むかは個々の課題の状況によって異なりますが、PwC Japanグループでは、状況に応じて各領域の専門チームを適切な形で配置し、さまざまな形で支援を行うことが可能です。
世界経済の拡大の礎だった「グローバリゼーション」が今、岐路に立っています。
中国と米国はデジタル経済の覇権をかけて対立を強めています。「アジア最後のフロンティア」と呼ばれるミャンマーでは国軍のクーデターによって外資の撤退が相次ぎました。ロシアによるウクライナ侵攻は米欧日と中露を軸にした「民主主義と覇権主義」の対立に発展しました。台湾海峡をめぐる軍事的緊張も日増しに高まっています。「開かれた自由貿易」から「閉じる経済圏」へのシフトが少しずつ進んでいます。
「非連続」な時代を乗り越えるために必要なのは、現実に起きていることを真正面から受け止め、いくつもの仮定をもとに成長への階段を複数準備することです。サプライチェーンを分解して商流を組み直し、国や地域ごとに厳格に規律付けをし、グローバルに広がる事業を再整備する「実践力」こそ、未来の競争力の源泉になります。
デカップリングに対応したサプライチェーン再構築
【関連する主なアジェンダ】
米国バイデン政権は2022年秋、中国の台頭を念頭に、スーパーコンピューターなど先端半導体の技術や製造装置、人材までを含む幅広い分野で輸出を厳しく制限する措置を導入しました。OECDとG20は2022年、新たなコーポレートガバナンス原則案をまとめました。サイバー攻撃や気候変動の脅威が高まる中、リスク専門の委員会を新たな取締役会の機能として勧めています。OECDの主導によって国際課税の枠組みも変わります。
非連続な時代を開拓するには、新たなビジネスの規制やルールにいち早く順応する体制が欠かせません。ルールや規制の枠組みを本社で素早く把握し、対応できる体制づくりが急務です。グループ経営方針に沿った適切な機関と権限の設計、税務リスクの管理など、国・地域ごとの現地法人にどこまで権限を持たせるか、本社が目を配る範囲はどこまでか、などへの検討が必要です。事前の備えを万全にすることが「ぶれない経営」を支える柱になるのです。
グローバルおよび各国規制状況の把握とグループとしての対応
【関連する主なアジェンダ】
企業活動がグローバルに広がり、不正や不適切な取引の潜在リスクが根深くなっています。各国・地域の法規制やルールの変更に合わせて常に最新の「チェックの目」を持つ、高度なリスク管理体制が求められています。
グローバルの不正や潜在リスクに対応するには、本社とグループ会社の権限のすみわけを明確にする、人事・報酬制度を適切に設計する、情報管理や各拠点をモニタリングするルールなどを再設計する、といったリスクの芽を事前に摘み取る仕組みが今まで以上に重要です。テクノロジーを使ったデータ分析を有効にするため、データ・デジタルガバナンスの構築も必要です。
リスクをゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、できる限りゼロを目指し、万が一不正が起きた場合の被害を最小限に抑える体制こそが、未知の困難に対応できる「強い企業統治」を実現するカギになるのです。
不正の兆候やインシデントの早期発見と対応
【関連する主なアジェンダ】
業界や企業の内的要因によるリスクに対してコンプライアンス研修やルール整備を行っているものの、不正や不祥事を防ぐまでには至っていない現状について、「リスクカルチャー」という視点から考察し、対策を探ります。
企業にとって重要になってきているBCP(事業継続計画)について、サイバーインシデントも視野に入れながら、システムリスクを回避するためのIT-BCPをどのように考えておくべきかを解説します。
「荷主と物流統括管理者が創る新たな連携モデル」という視点から、物流の進化をリードするために必要な物流統括管理者の役割や具体的な実践内容について考察します。
本レポートでは、世界の大企業の経営幹部673人を対象に、経営の戦略や優先順位を調査しました。COOはAIの活用拡大に強いプレッシャーを感じており、関連する人材の採用・育成に注力する一方で、業務に追われ将来のビジョン策定に注力できていない状況が明らかになりました。