健康経営の高度化に向けた手引き-人的資本経営との連動に向けて-

  • 2023-08-29

健康経営に取り組んでいる企業・組織が、人的資本経営の取り組むために

健康経営と人的資本経営の推進が進んでいる企業においては、企業ビジョンの実現に向けて健康経営で取り組む成果と人的資本経営の取り組みを関連付けながら推進する必要性がより高まると考えられます。

PwCコンサルティング合同会社では、すでに健康経営に取り組んでいる企業・組織が、人的資本経営の取り組みに進んでいく過程にフォーカスし、関連性の認知度、取り組み、課題などを明確にすることを目的として、企業・組織で健康経営に関わっている役員、従業員、職員などにアンケートを行いました。「従業員が長く活き活きと働ける環境」を調えていくことを目指す経営者や事業責任者に向けて、自社で取り組む「健康経営の取り組み」を高度化し、「人的資本経営の取り組み」に活かすために、健康経営と人的資本経営の関連性を考察し、手引書としてまとめています。

本レポートが、健康経営および人的資本経営に取り組む企業において活用され、より効果的に取り組みを進めていくための一助となれば幸いです。

調査結果ハイライト

1. 健康投資の効果を測定・分析して、より効率的な健康投資につなげている企業はまだ少数

  • 勤務先が健康経営に取り組んでいると答えた回答者は、全体の92.5%に上る一方、健康投資の効果を測定・分析して、より効率的な健康投資につなげている企業は9.9%となりました。
  • 健康経営に取り組む企業は近年大きく増加していますが、自社の健康課題に合わせて適切な指標・目標を設定し、健康投資の効果を測定・分析して、より効率的な健康投資につなげている企業はまだ少数であり、大半はそこに向けて徐々に取り組み範囲を広げている途上にあることがうかがえます。
図表1: 健康経営の取り組み状況にかんすつ調査結果

2. 人的資本経営への取り組みは初期段階

  • 勤務先が人的資本経営に取り組んでいると答えた回答者(全体の69.4%)のうち、取り組み状況を見ると、「KPI・目標等を設定して進めているが、データ収集は着手したところ」「KPI・目標等の開示はなく人的資本投資を開始したところ」が60%近くを占めました。
  • 投資家などの人的資本経営への関心の高まりや、2023年3月期決算以降の有価証券報告書における人的資本の開示義務化を受け、人的資本経営の目標・指標の定量把握を進め、効果の可視化に動き出している企業が少しずつ増加してきているものの、初期段階にあることが分かります。
図表2: 人的資本経営の取り組み状況に関する調査結果

3. 健康経営の取り組みを人的資本経営に連動させて活かす取り組みは、手探りで始まったところ

  • 「人材版伊藤レポート2.0」の中に、健康経営の内容が取り上げられていることを知っている回答者のうち、健康経営の取り組みを人的資本経営に連動させて活かす取り組みを「行っている(取り組んでいる)」と回答した人の割合は、52.9%と約半数に留まりました。
    また、健康経営の取り組みを人的資本経営に連動させて活かす取り組みを行っていない理由を見ると、「取り組みたいとは思うが、具体的にどのような施策・テーマに取り組めばよいのか分からない」が41.1%と最も多く、「取り組むべき施策・テーマは分かるものの、具体的な方法が分からない」(28.5%)が続きました。
  • 従業員の健康は、企業価値を高めるための重要なファクターであり、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む健康経営と、人材を「資本」として捉え、投資を行ってその価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営の考え方、目指す目標は同じで関連性が深いテーマです。しかしながら、この2つを連動した取り組みは手探りで始まったところであり、まだ取り組み方が分からないという企業も多い状況であると言えます。
図表3: 健康経営の取り組みを人的資本経営に連携させて活かす取り組みの実施状況にかんする調査結果

健康経営と人的資本経営の関連付けの考え方

本レポートでは、「健康経営優良法人制度」における認定要件と、国内において公表されている人的資本経営に係る具体的な指針等である「人的資本可視化指針」「有価証券報告書等」「人材版伊藤レポート2.0」の項目・要素の関連性をもとに、健康経営からの人的資本経営に向けた取り組みの方向性を考察しています。

健康経営と人的資本経営に関わる項目・要素との間では、多くの項目が直接的ないし間接的に関わっています。健康経営に取り組まれている企業が、人的資本経営に取り組んでいくにあたっては、まずはこの関連性を意識して取り組んでいくことで、現在健康経営に取り組まれている内容を人的資本経営の成果としても活かしていくことができます。

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主要メンバー

南出 修

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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恩田 佳和

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