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高齢化や技術革新の進展、医療費適正化への要請、医療データ利活用に関する環境整備などを背景に、これまで以上に多くの異業種企業がヘルスケア領域への参入に強い意欲を見せています。医療従事者や従来の医療業界の事業者が持つ発想とは異なる視点が加わることにより、診断や治療の範囲にとどまらない幅広い領域をカバーすることが可能となり、個々人がより健康な生活を送れる環境の整備や医療費の適正化、健康寿命の延伸といった効果が期待できます。しかし一方で、ヘルスケア領域の事業には規制が多く、マネタイズの困難さが指摘されるなど異業種からの参入ハードルは低いとは言えない状況にあります。
本調査は、ヘルスケア事業を本業としていない企業を対象に、ヘルスケア事業への参入意欲や参入に際しての課題などについて調査し、分析を行いました。本稿では、その調査結果から事業を成功させるためのポイントについて考察しています。
調査概要
調査結果要旨
ヘルスケア事業への参入状況を質問したところ、約70%の企業がヘルスケア事業への参入に積極的であり、約25%の企業がすでに事業を開始していると回答しました(図表1)。
また、ヘルスケア事業において関心のあるテーマを質問したところ、「健康増進デバイス・アプリ」(32.6%)、「健康経営」(32.3%)といった項目に回答が集まり、健康増進サービスに大きな関心が寄せられていることが分かりました。次いで「ウェアラブルデバイス」(25.4%)、「ヘルスケアITテクノロジー」(23.7%)のように、デジタルテクノロジーを取り入れたヘルスケア事業への回答が多く寄せられました。一方で、「遠隔医療」(16.6%)や「パーソナライズ医療」(8.9%)のような、治療行為そのものに関わる領域への回答は少数で、予防や健康維持などへの注目度が高い傾向が見られます(図表2)。
ヘルスケア事業への参入効果についての質問には、56.1%の企業が「市場の成長性」、40.6%の企業が「市場規模」と回答しており、ヘルスケア市場のポテンシャルへの期待を寄せていることがうかがえます。一方で、「ブランドイメージの向上」(18.0%)、「顧客基盤拡大」(13.5%)」などの回答は少なく、具体的な事業へのプラス効果に対する期待は小さいことが読み取れます(図表3)。
これらの結果を踏まえると、各企業はヘルスケア市場を、成長性が高く安定した市場と認識していると捉えられます。
事実、ヘルスケア市場は全体として見ると2020年から2025年にかけて16.2兆円増の96.2兆円になると推定され*1、公的医療保険・介護保険を除いても33.1兆円の規模となります。特に、医療費の適正化を推進するために政府主導で健康を保持および推進するサービスの開発がさらに加速すると見込まれており、ヘルスケア事業に参入するための好条件が揃った状況にあると言えます。
一方、ヘルスケア事業に進出するにあたり、既存事業とのシナジーや新規事業として事業構造の変化に及ぼす効果まで具体的に見通せている企業は少なく、課題として認識されていると推察されます。
*1「経済産業省におけるヘルスケア産業政策について」経済産業省
一方でヘルスケア事業に新規参入するうえでの課題について質問したところ、「ケイパビリティ・人材不足」(42.2%)、「実行計画の不在」(36.5%)、「ビジョン・戦略の不在」(35.7%)の3項目に多くの回答が集まりました(図表4)。
調査結果から、ヘルスケア業界への新規参入を検討している企業は、ヘルスケア市場の成長性に対する期待を背景に、健康増進や予防といった領域に高い関心を持ち、テクノロジーを活用した事業を実施または検討していることが読み取れます。
一方で、ケイパビリティや人材の不足、実行計画・ビジョン・戦略の不在を理由に、自社のみでの推進に不安を感じ、パートナー企業を求めている実態も浮かび上がってきました。
換言すれば、ヘルスケア領域へ事業参入を実施または検討している企業の不安を払拭し、事業を推進するには、「戦略・ビジョンの策定」「ケイパビリティ・リソースの確保」「ヘルスケア業界の専門知見」の3点が重要なポイントになると言えます。
この3項目それぞれは互いに補完しあう関係になり、いずれも欠くことはできません。また「ケイパビリティ・リソースの確保」は、ビジネスパートナーと連携する、商品やサービスを開発する、あるいはデータプラットフォームを構築するといったことにより実現すると考えます。