ヘルスツーリズム × ワーケーション×デジタルで創る「ヘルスケア・ワーケーション・デザイン」サービスの事業性

日本が目指すべき未来社会の姿として描かれた「Society5.0」は、持続的発展可能な人間中心の社会を目指すものです。人々の生活が豊かになっている反面、ストレス社会、生活習慣病といった課題が深刻化・複雑化しており、重要な社会課題であるにもかかわらず、ビジネスとして成立させることの難しさから、新たな価値創造と社会課題の解決を両立させるようなソリューションは未だに広く普及していないと言えるでしょう。

私たちPwCはこのような背景を受け、日本のSociety5.0の実現に正面から向き合っていくという思いで、ヘルスケアの課題解決をテーマに、ヘルスツーリズム×ワーケーション×デジタルを組み合わせた「ヘルスケア・ワーケーション・デザイン」を構想しました。

本調査レポートでは、参加者ニーズ把握の観点から、健康経営企業を中心とした法人企業やその従業員へのアンケート調査と健康保険組合へのインタビュー調査、および事業提供者ニーズ把握の観点から、ヘルスケアサービス事業者へのアンケート調査を実施しました。「ヘルスケア・ワーケーション・デザイン」を事業化する上での成功鍵、ビジネスモデルの構想について考察を提示します。

ヘルスケアやワーケーションを軸とした新たなサービスを検討している事業者や、地域予防医療や地域観光資源の活用を推進する自治体等の一助となれば幸いです。

以下、調査レポートの要点を示します。

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1. 「ヘルスワーケーション」の事業構想

旅マエ~旅アト*1の全工程で収集する一貫したパーソナルデータに基づき、健康向上を図るヘルスツーリズム×ワーケーションを実現します。

サービス全体像: 「ヘルスツーリズム×ワーケーション」

*1:旅マエ/旅ナカ/旅アトは、ここではそれぞれ、当該ツアーの参加前/滞在中/参加後を指すものとする

2. 初期調査から見えた実施課題

「ヘルスケア・ワーケーション・デザイン」(以下、「ヘルスワーケーション」とする)の事業化にあたっては、①低い認知度、②時間的/経済的な困難、③サービスの魅力不足の3つが主な課題であると、PwC Japanグループ内の意識調査結果*2から、初期仮説を立てました。

①低い認知度
回答者の30%は「ヘルスツーリズム」という用語を耳にしたことがない

➁時間的/経済的な困難
回答者の33%は家庭・仕事・金銭的な理由等でヘルスツーリズムに参加できない

③サービスの魅力不足
回答者の6%はヘルスツーリズムに魅力を感じていない

「ヘルスツーリズム」に関心はあるが 参加経験がない理由

*2:2021年12月にPwC Japanグループ内で行った、従業員1,000名を対象とする調査の結果

3. 利用者にとっての「ヘルスワーケーション」の魅力と期待

回答者の70%以上が、ヘルスツーリズム×ワーケーションのプログラムへの参加意向を示しています。

期待効果としては、参加を通じたストレス/運動不足の解消、新しい文化の体験などが上位に挙げられました。

  • 回答者の70%以上はヘルスツーリズム×ワーケーションプログラムへの参加に関心を示している。参加の前提として会社からの金銭的補助を期待する回答者が過半数を占める。
  • 上位に挙げられたヘルスワーケーションに対する期待効果は精神的に余裕が得られる、普段の生活環境で感じるストレスからの解放、自然環境でのリラックス効果である。メンタルに配慮したサービスを期待している利用者が多い。
利用者のHWDへの 参加希望
利用者のHWDに対する 期待

4. 法人企業にとっての「ヘルスワーケーション」の魅力と期待

企業全体の過半数がヘルスワーケーションの導入に関心を持ち、特に健康経営企業は高い関心を示しています。

調査対象の20業界の中、医療・福祉、サービス業(専門職)等が80%を上回り、サービス提供のターゲット業界の候補となり得ます。

  • 調査対象の企業全体の75%がヘルスワーケーションの導入に関心を持っている。健康経営認定企業においては、同82%と、より高い関心度を示した。
  • 業界別の関心度は、医療・福祉業が最も高く、続いてサービス業(専門職)、宿泊・飲食業、金融・保険業であった。
健康経営認定別:HWDへの 関心割合
業界別HWDへの 関心割合

5. ヘルスケア企業にとっての「ヘルスワーケーション」の魅力と期待

外部企業との協業実績があるヘルスケア企業の大半は、ヘルスワーケーションへの参加において、ユーザーとの接点獲得、自社商品・サービスの改善助言などを期待しています。

  • 調査対象のヘルスケア企業の過半数を超える58%が、外部企業との協業を実施/検討している。
  • 協業実績のあるヘルスケア企業は、ヘルスワーケーションに参加するにあたり、ユーザー接点の構築、商品・サービスのフィードバック獲得などの事業拡大に寄与する効果以外に、外部データ獲得、データ獲得の強化のようなデータ利活用の効果も期待している。
ヘルスケア企業における 外部企業との協業状況
協業実績があるヘルスケア企業の HWDへの期待

6. 「ヘルスワーケーション」事業化の可能性

利用者にとっての 魅力
健康経営企業に とっての 魅力
ヘルスケア企業に とっての魅力

利用者/企業ともに関心・参画意向が強く、事業化の可能性は高い

主要メンバー

奥野 和弘

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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浅野 泰史

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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