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社会人を対象とした世界最大級の調査となる本調査では、約32,500名の回答者から概ね楽観的な傾向が示されましたが、隠れた問題点も見えてきました。回答者の多くは将来に関して楽しみである、あるいは自信があると答えています。また、ほとんどの回答者が自動化の課題に対応できると考えており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下において、それを証明しました。彼らは新たなデジタルスキルを学び、リモートワークにもすぐに順応したのです。しかしその一方で、自分の仕事はなくなるリスクが高いと考えている回答者も多く、半数は差別によってキャリアアップや研修の機会を逃したことがあると感じています。
PwCは、デジタルデバイドを巡る課題と、アップスキリング(スキルの向上)やリスキリング(再教育)に関する官民の協力強化がもたらす社会的・経済的メリットを伝えることに力を入れています。誰もが力を発揮できるような多様性と包摂性に富む職場を築くために、やるべきことはたくさんあります。
COVID-19の拡大はすでにあらゆる産業に破壊的な変化をもたらしていることから、回答者は将来に不安を感じています。
企業は自動化の実現を加速させており、多くの業務は今後もリモートで行われることになります。そのため、業種を問わず、従業員はこれまでとは異なる考え方や働き方を可能にする新たなスキルを習得する必要に迫られています。先行きは1つに決まっているわけではありません。将来に向けた計画は静的ではなく動的な視点で立てるべきでしょう。
コロナ禍で予想外だったプラス面の1つとして、機会を与えられた社会人は、生産性を高く維持したまま、リモートワークに素早く移行できるということが証明されました。
社会人は、研修機会がある場合には、必要に応じて再教育を受ける意欲がありますが、研修機会の有無にはいまだ格差があります。デジタルスキルを最も必要とする社会人は依然として教育を受けられる可能性が最も低く、この傾向が続けばデジタルデバイドがさらに広がるおそれがあります。経営者には、スキル向上のための機会をより包摂的に提供することが求められます。
「研修機会の有無をめぐる現状がこのまま続くのであれば、社会の不平等をなくすはずのアップスキリングは、逆にこれを拡大させることになります」
COVID-19の影響は、人種による不平等や社会的な緊張を世界中で浮き彫りにしました。また、この1年で男性よりも女性の方が多く労働市場を去ったため、男女平等への取り組みも後退しています。さらに、若い社会人の多くが、組織の中で昇進の機会を与えられずにいます。
パーパス(存在意義)ドリブン型の多様化した職場を築く方法について、忌憚のない包摂的な話し合いを行う必要性が高まっています。企業は耳の痛くなるような質問を従業員に投げかけ、得られた回答を真摯に検討する必要があります。そうしなければならないのは、それがただ単に正しい行為だからというだけでなく、事業にとってもメリットがあるからです。多様な従業員基盤を確保し、包摂性の向上に向けて熟慮を重ねた取り組みを進めることで、異なる視点や独創的な発想、自由闊達な協力を通してより良い成果が生まれ、広く社会の経済発展につながります。そうなれば、あらゆる人々がその恩恵を受けられるでしょう。
大多数の回答者が目的意識を持って仕事をしたいと考えています。パーパスは若年層を引き付けるというだけでなく、いずれの年齢層にとっても大切な要素です。しかし、現実には経済的な影響も当然あるため、パーパスと経済的成功をいかに両立させるかを考えることが重要になります。
「社会にもたらす影響を重視することと利益を最大にすることは、相容れないわけではありません。パーパスドリブン型の企業であるということは、実際には収益の向上につながるのです」
リモートワークが可能な場合、完全出社型の環境に戻りたいと答えた回答者の割合は驚くほど低いものでした。こうした現状を踏まえ、ほとんどの企業は少なくともある程度のリモートワークまたはフレックスタイム制を維持することを計画しています。リモートワークが雇用戦略の一部として定着することを期待する社会人は半数を超えています。その結果、これまでとは異なる形の物理的な空間が必要になることでしょう。
経営者が将来に適したオフィスを再構築する際には、従業員同士が関係をスタートさせ、築き上げ、強化できるような空間を増やすことに注力すべきでしょう。そうした空間は従業員が組織文化やブランドを体感できる場所であり、チームメンバーが集まってブレインストーミングやコラボレーション、問題解決を行う場所でもあります。
「リモートワークは今後、私たちの働き方の一部となっていきます。テクノロジーへの投資が続く中、リモートでの協働は従業員のエクスペリエンスにシームレスに組み込まれるようになるでしょう」
本調査は2021年2月に、広く一般から募集した32,517名を対象に行いました。回答者には被雇用者、個人事業主、契約労働者、学生、失業中の求職者、自宅待機中または一時解雇の被雇用者が含まれています。調査はオーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、日本、クウェート、マレーシア、オランダ、ポーランド、カタール、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、スペイン、アラブ首長国連邦、英国、米国の19カ国で実施しました。