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近年、カーボンニュートラルの達成に向けた国際的な取り組みが加速しています。国際機関や各国政府は、相次いで2050年に向けたマイルストーンや国家戦略を設定し、GHG削減量およびその達成に向けた取り組み方針を打ち出しており、脱炭素に貢献する研究開発投資やビジネス開発のインセンティブを高める政策の拡大が期待されます。
各国のカーボンニュートラル政策の中で、重要な役割を果たすと位置づけられるエネルギー源の1つに水素があります。水素は、発電用の燃料としての活用に加え、電化が困難な重工業や陸運、航空、海運といった分野での活用が期待されます。例として、鉄鋼分野における水素還元製鉄、化学産業における化石燃料由来資源を代替する基幹原料としての活用、電力貯蔵、長距離輸送向け水素自動車の普及に向けた動きが活発となっています。
足元での各国政府の動きも活発化しています。米国では、2022年8月に成立した「インフレ削減法(IRA : Inflation Reduction Act)」によって、クリーン水素製造と、クリーン電力や炭素回収・貯留への投資に対する税額控除が導入されています。EUでも、2021年の「Fit for 55」や2022年の「RePowerEU」などにおいて、気候変動に対応するイノベーションへの投資を掲げました。2050年のGDPで世界1位、2位になると見込まれる中国およびインドも政府主導での取り組みに注力しており、主要各国は引き続き水素産業への支援を拡充していく見込みです。
日本も、2020年に菅政権が発表した2050年カーボンニュートラル宣言を皮切りに、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の策定や「水素基本戦略」の改定を行い、さまざまな取り組みが官民一体で進められています。
図表1:海外のカーボンニュートラルおよび水素利用に係る政策動向
対象国 | 主要政策 | 概要 |
米国 |
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EU |
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中国 |
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インド |
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出所:PwC作成
その一方で、水素の普及にはビジネス面の課題が山積しており、期待とのギャップが大きいのが現状です。足元の市場では、需要が顕在化するに至っておらず、企業が十分な売上を見込めているとは言えません。また、将来における不確実性も大きく、企業にとっては投資予見性が低い状況と言えます。このような状況は、長大な水素サプライチェーンにおける有望な投資領域の特定や、自社が参入すべきポジションの決定といった経営判断を困難にしていると考えられます。
本稿では、世界的な脱炭素のトレンドの中で重要な役割を求められる「水素」にフォーカスし、中長期の市場環境やビジネス構造の変化について考察しています。具体的には、日本政府の「水素基本戦略」が掲げたシナリオに沿って、水素ビジネスの構造を定量的に分析しています。水素サプライチェーン全体にわたる、プロフィットプールやコスト構造を把握するとともに、水素の製造、輸送、変換・貯蔵といった領域ごとの、市場拡大を促すドライバー、成長性、課題を分析し、今後投資すべき領域などを考察しました。これらの検討が、水素ビジネスの拡大、ひいては、カーボンニュートラル達成の一助となり、社会における重要な課題の解決に貢献することを期待します。
はじめに:カーボンニュートラルにおける水素の役割と課題
おわりに:今後の水素市場の拡大に向けて