ISMAPから考えるデジタルサプライチェーン管理

 
  • 2024-12-04

近年、グローバル化とデジタル技術の急速な進展により、組織のサプライチェーンはますます複雑化しています。この複雑性の増大に伴い、サプライチェーンに起因する情報漏洩や事業停止がブランドや信用に深刻な影響を及ぼすケースが増加しています。特に、サプライチェーンの脆弱性を狙った攻撃が増加し、その影響は組織の存続にまで及ぶ場合があるため、セキュリティ対策が一層重要となっています。情報処理推進機構(IPA)によれば、こうした脅威は年々増大しており、サプライチェーン全体のリスク管理が求められています。

サプライチェーンにおけるリスク管理の難しさは、自組織とは異なりサプライヤーのコントロールが難しい点にあります。加えて、サプライチェーン全体の透明性が低く、具体的なリスク箇所を把握することが難しいため、包括的な戦略が必要となります。近年では、クラウドサービスやIoT、AIなどの先進技術が浸透し、業務効率の向上や新たなビジネスモデルの創出に寄与していますが、同時に新たなセキュリティリスクも生じています。特にデジタルサプライチェーンは、複数の事業者が提供するデジタルサービスが連携することで一つのシステムとして機能するため、各事業者のセキュリティ対策が不十分な場合、その影響が連鎖して広がるリスクが高まります。

このような状況に対応するため、例えば日本ではISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)が導入され、サプライチェーンの中で利用されるクラウドサービスのセキュリティ評価を効率化し、透明性を高めています。ISMAPは、クラウドサービス事業者の管理範囲を明確にし、共通の評価基準に基づいてセキュリティを評価する仕組みです。これにより、サプライヤーの負担を軽減するとともに、セキュリティ評価の信頼性を向上させています。

今後、デジタルサプライチェーンのセキュリティリスクをより効果的に管理するためには、ISMAPを基盤としつつ、IoTやAI等の領域においても特有のセキュリティリスクを考慮した包括的な管理策の策定が重要となります。さらに、米国立標準技術研究所(NIST)のガイドラインなど国際的な基準も参考にしながら、継続的な改善を図ることが求められます。デジタルサプライチェーンの管理は、組織の持続可能な成長と競争力強化に不可欠な要素であり、ISMAPなどの制度を活用し、総合的なリスクマネジメントを行うことで、組織は安心してデジタル時代のビジネスを展開することが可能となります。

目次

はじめに ~サプライチェーン管理の重要性の高まり~

1. デジタルサプライチェーンとセキュリティ対策

2.日本の政府機関におけるデジタルサプライチェーン管理の課題とISMAP

3.デジタルサプライチェーンのセキュリティリスクの特徴から考えたISMAPの適合性

4. ISMAPの継続的改善

5. ISMAPが日本のデジタルサプライチェーンに与える影響

おわりに

ISMAPから考えるデジタルサプライチェーン管理

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主要メンバー

川本 大亮

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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佐々木 章

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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平井 彰

シニアマネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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