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今回の調査ではこれまで停滞していた「準先進」の比率が大幅に増え、日本企業におけるITモダナイゼーションの進展が見られました。特にアジャイル開発とクラウドネイティブ技術活用の大幅増が寄与しています。しかしながら、デジタル人材育成やシステムの俊敏性向上といった成果については、さらに先を行く「先進」との間で大きな差が出始めています。本レポートでは、「先進」とそれ以外の取り組み状況を掘り下げた上で、鮮明になり始めた課題を整理し、ITモダナイゼーション実現に向けたポイントを提言します。
本調査は、「日本企業のITは経営に資するものとなっているのか?」という課題認識から、単に新しいIT技術を導入しているかというだけでなく、プロセス、人材、組織の視点も含めて、企業における「IT関連のモダナイゼーション(近代化)」の進捗を総合的に分析する大規模調査です。ITモダナイゼーションとは、「ITの構造を変革することに加えて、企業における組織やプロセス、人材なども視野に入れ、あるべき姿を包括的に模索する抜本的な変革」とPwCでは定義しています。
調査は2021年より実施し、今年は3回目となります。調査方法としては、Webアンケートを通じて、売上高500億円以上でITモダナイゼーションに関与している企業/組織の課長職以上500名を対象に、2023年9月に実施しました(Appendixの「調査概要」を参照 )。また、一部ではありますが、PwCが米国で実施した「PwC’s 2023 Cloud Business Survey」を参考に、米国の動向とも比較しています。
成熟度については、「アジャイル開発手法の展開状況」「パブリッククラウドの活用状況」「マイクロサービス、コンテナ、サーバーレスなどのクラウドネイティブ技術の活用状況」の導入度合いで判断しました。これらはビジネスが変化した際に素早く対応できるITの俊敏性や、需要に応じてITリソースを速やかに拡大したり縮小したりできる弾力性に大きく影響すると考えられるためです。この3つを全面的に採用している組織を「先進」、一部本番で活用している組織を「準先進」、これらに該当しない組織を「その他」と定義しました(図表1)。
調査結果から明らかになった日本企業のITモダナイゼーションの現状と効果を分析するとともに、今後どのように取り組んでいくべきか、その方向性について提言します。
今回の調査の回答者全体を、ITモダナイゼーションの成熟度ごとに分類してみると、「先進」は8%、「準先進」は53%、「その他」は39%との結果となりました。前回調査の2022年と比較すると、「先進」は1ポイント増加にとどまりましたが、「準先進」は24ポイントと大幅に増加し、日本でもITモダナイゼーションが本格的に動き始めたことが確認できました(図表2)。
「準先進」に注目してみると、アジャイル開発の活用状況については、「全面展開中」もしくは「一部展開中」と実際に本番で活用されている割合の回答が72%で、前年調査よりも27ポイント高まりました。クラウドネイティブ技術の活用状況についても、「幅広い業務で本番稼働」「一部本番で稼働」が82%となっており、同29ポイント増加しました。これらが「準先進」の躍進につながったと見られます(図表3、4)。
一方で、パブリッククラウドの活用状況は「全面展開中」もしくは「一部展開中」が81%で、同3ポイントの微減となりましたが、これは誤差の範囲と考えられ、パブリッククラウドの活用の普及は一巡し、もはや当たり前の選択肢になった状況だと言えるでしょう(図表5)。
アジャイル開発が大幅に普及した大きな要因としては、時代とともにアジャイル開発への関心が高まり、多くの企業でその活用が本格的に始まったことではないかと推察します。また、アジャイル開発を本番で活用した際に効果が出た領域の上位項目を見ると、「利用者視点でのサービス・プロダクト開発」が最も多く、「不要な開発の削減」「継続的な機能改善の実現」などが続きました。また、「ビジネス部門と開発部門が一体となったプロジェクト推進」も効果として注目すべきポイントと考えます。 こうした効果を実感できたことによりアジャイル開発の有用性が認識され、普及に拍車がかかったものと見られます(図表6)。
2001年に専門家らが提唱した「アジャイルソフトウエア開発宣言」では、顧客(利用者)満足度を最優先とし、無駄なモノを作らずシンプルに、そしてチームの効率性を高めるために振り返りを定期的に行って自分たちのやり方を最適化することを、原則に掲げています。今回の調査結果では原則と一致する状況が明らかになりました。
アジャイル開発を自社で有効に活用するためには、理念と目的を正しく理解し、実際に活用してみることが重要だと考えます。無駄な開発が減り、かつ継続的な機能改善で利用者に価値を提供し続けられる実感を積み重ねることで、次の取り組みに展開していく好循環につながるからです。
従来のインフラの代替としてパブリッククラウドが一般的なものとして普及する中、日々進化するクラウド関連の新しい技術への興味・関心が高まったことで、クラウドネイティブ技術の普及も大幅に促進したと考えられます。
実際にクラウドネイティブ技術を活用することで出た効果の上位を見てみると、「システム開発や機能改修対応スピードの向上」「アプリ開発および運用コスト削減」「インフラ領域の運用工数削減」「メンバーのモチベーション向上」となりました。クラウドネイティブ技術に関しても、実際に活用してみたところ、幅広い領域で効果を確認でき、その「成功体験」が次の展開につながる好循環を生んでいると推察されます(図表7)。
パブリッククラウドの活用は、単なる従来のテクノロジーの代替としての活用から、クラウド環境に適した技術(クラウドネイティブ技術)を活用する第二段階に入ったようです。
今回の調査では「準先進」が大幅に増加したものの、「先進」「準先進」「その他」では、「パブリッククラウド活用の効果」「アプリケーションの更新頻度」「デジタル人材育成状況」において、効果の実感や成果について顕著な差が出ました。その差を「先進」の調査結果に着目し、詳述します。
パブリッククラウドを活用し、「コスト削減」「生産性の改善」「顧客体験の向上」など12項目にわたり、実感した効果の平均値を算出しました。その結果、「既に結果が出ている」と回答した割合は、「先進」が63%、「準先進」は29%、「その他」は16%と大きな差が出ました。当該項目においては、米国でPwCが実施した 「PwC’s 2023 Cloud Business Survey」での上記回答の割合は42%となっており、日本の「先進」は米国の平均より21ポイント高い結果となっています(図表8)。
「自社の業務アプリケーションの更新頻度」に関しては、業務アプリケーションを「毎日」もしくは「必要に応じて都度・随時」更新と回答した割合は、「先進」が67%、「準先進」は26%、「その他」は10%と、こちらも大きなばらつきが見られます。昨年の調査結果と比較すると、「先進」は17ポイント増加、「準先進」も16ポイント増加する一方で、「その他」は2ポイントの増加にとどまりました。
「先進」と「準先進」は、アプリケーションを高頻度で更新しており、着実にシステムの俊敏性を高めている一方で、「その他」は進展が見られず、差が広がっています(図表9)。
アプリケーションが高頻度で更新できる背景としては、業務要件がシステムに速やかに反映されている必要があるため、業務部門とIT部門が一体となってシステム開発を遂行していることが推察されます。また、アプリケーションの更新頻度や変更のリードタイムなど、IT部門がビジネス変化への対応を意識するような評価指標が設定されていることも想定されます。
「社内のデジタル人材の育成および採用状況」に関して、「期待以上の成果が出ている」と回答した割合は「先進」が82%、「準先進」は13%、「その他」は4%と大きな差が出ました。前回との比較では、「先進」が21ポイント増加した一方で、「準先進」は5ポイント増、「その他」も2ポイントの増にとどまりました。
「先進」が着実にデジタル人材の育成で成果を出しているのに対し、「準先進」と「その他」は苦戦している様子がうかがえます(図表10)。
ITモダナイゼーションの効果の実感について、「先進」と「準先進」「その他」では大きな差が出ました。「先進」の取り組みを分析したところ、こうした差を生んだ要因として5つの側面が見えてきました。
パブリッククラウド活用に際し、「全社で共通の方針・戦略がある」と回答した割合は、「先進」が95%、「準先進」は45%、「その他」は20%でした(図表11)。
パブリッククラウドの種類はIaaS、PaaS、SaaSなど多岐にわたり、今後さらに進化することが予想されるため、これらのテクノロジーをどのように自社で活用していくか明確にすることが、今後のIT戦略上重要になってきます。「先進」はこれらの活用方針を全社レベルで明確にしており、この違いがパブリッククラウド活用の効果に大きな差をもたらしたと考えられます。
CI/CD(ソフトウェア開発におけるビルド、テスト、デプロイの自動化)の導入状況について、「ほぼ全てのシステムで導入済み」と回答した割合は、「先進」が92%、「準先進」は21%、「その他」は5%でした(図表12)。
パブリッククラウドが普及するにつれ、従来手作業でやらざるを得なかったテストやデプロイに関して、自動化を支援する技術やツールが続々とリリースされています。「先進」はこれらを活用し、積極的に自動化を推進している状況がうかがえました。また、自動化される領域が増えることにより、アプリケーションの更新頻度が高まっていると推察されます。
アジャイル開発をどの規模のプロジェクトまで適用したかを調査したところ、「10チーム以上、100名以上が最大規模」と回答した割合が、「先進」は82%、「準先進」は32%、「その他」は13%でした。
アジャイル開発は小規模のチームで運営されることを前提としていますが、「先進」は複数チームにアジャイル開発を適用し、大規模プロジェクトにおいても活用され始めていることが判明しました(図表13)。
また私たちは、アジャイル開発を大規模プロジェクトにも適用することが、アプリケーションの更新頻度を高める要因となっているのではないかと推察しています。それは、大規模プロジェクトへの適用によって、アジャイル開発の効果として挙げられた「変更要求にも柔軟に対応し、継続的な機能改善の実現」(図表6)が社内で広く認識・実感されるようになり、結果としてより高頻度な更新につながる、という循環だと考えられます。
アジャイル開発に適した規程やルールなどの導入状況に関して、「既に導入済み」と回答した割合は、「先進」が90%、「準先進」は19%、「その他」は8%となりました(図表14)。
アジャイル開発の推進では、予算管理、品質管理、外部業者への発注方法や契約形態など従来のウォーターフォール型の開発を想定した規程やルールでは対応できないケースが少なくありませんが、「先進」は既に新たな社内プロセスを整備し、アジャイル開発を社内普及させる準備が整っていることが判明しました。この差が3.で述べた、複数チームかつ大規模なプロジェクトにアジャイル開発の適用範囲を広げることができた要因の1つだと考えられます。
システム開発の企画から運用において、自社社員と外部業者との役割分担を調査しました。結果、「ほぼ自社社員が企画から運用までを担当」と回答した割合は、「先進」が87%、「準先進」は14%、「その他」は13%となりました(図表15)。
多くの企業においてシステム開発の内製化が進んでいない実態が浮き彫りとなり、「先進」の取り組み状況が際立つ結果になりました。
またアジャイル開発推進においても、推進体制の主要な役割の「ほぼ全てにおいて自社社員が対応」と回答した割合は、「先進」が79%、「準先進」は12%、「その他」は9%でした(図表16)。ここでも「先進」が圧倒的に抜きん出ている構図となっています。
スキル育成においては座学の講習なども大切ですが、実際の経験を積むことの方がより重要です。システム開発やアジャイル推進において、「先進」は自社社員の担当する領域が圧倒的に多く、このことがデジタル人材育成・採用状況の効果に関して、「期待以上の成果が出ている」と回答した割合が多かった要因の1つと考えられます。
ITモダナイゼーションを加速させるヒントを「先進」の取り組みから探ってきました。一方で、今後ITモダナイゼーションを実施していく上で解決すべき課題も浮き彫りになってきました。課題については「先進」「準先進」「その他」で多少の差やばらつきが見られるものの、顕著な差は見られませんでした。「先進」であっても解決すべき課題はまだ残っているようです。
ここでは今回の調査で明らかになった課題を整理し、解決の方向性について考察します。
パブリッククラウドを活用する上での課題を調査したところ、「オンプレとクラウドが混在して運用が複雑化し、データ連携が困難」と回答した割合が、「準先進」と「その他」で最多となり、「先進」においても3番目となりました(図表17)。
従来はオンプレミス上でシステム開発をするしか企業に選択肢はありませんでしたが、パブリッククラウドの普及によって、オンプレミスとパブリッククラウドが混在する状況になり、その結果、システムの稼働状況の監視や障害時の復旧、また各システム間の連携が複雑になっています。ただ、こうした課題に対応する技術やツールも日々進化し、利用可能な状況ですので、積極的にこれらを活用していくことを推奨します。
これについては「先進」も依然として課題と認識しているものの、既にハイブリッド環境での運用最適化を支援するツールを活用し始め今後は解決するとの見立てを持っていることから、3番目に位置付けていると推察されます。
アジャイル開発推進における阻害要因を調査したところ、「先進」と「その他」では「社内のスキル人材不足」が1位となり、「準先進」でも2番目に多い回答となっています(図表18)。また、クラウドネイティブ技術の活用推進でも、「先進」「準先進」「その他」の全てにおいて最も多い回答でした(図表19)。
このような状況を打開するには、自社で担当するのは効率的でない領域に関しては積極的に外部活用を視野に入れ、人員計画の最適化を行うとともに、「先進」は戦略領域における内製化範囲をより拡大し、また「準先進」「その他」では、なるべく早く内製化に舵を切ってデジタル人材を育成していく必要がありそうです。
各活動を推進する上で、「経営層・リーダー層の理解がない」ことも課題の上位に挙げられました。アジャイル開発推進では、「先進」では4番目に多い課題であり、「準先進」「その他」においても5番目となっています(図表18)。また、クラウドネイティブ技術活用推進では、「先進」「準先進」「その他」の全てが2番目の課題として挙げています(図表19)。
こうした結果から、アジャイル開発やクラウドネイティブ技術の活用は、現場が「ボトムアップ」で取り組んできたように見受けられますが、ボトムアップの改革では、いずれ取り組める範囲に限界がきます。全社レベルで改革を実現するのであれば、トップの強いリーダーシップが欠かせません。
最新の技術に精通しているだけではなく、ビジネスの勘所も持っており、新しい技術がどのようにビジネスに貢献するのかを理解できる人材を、経営層・リーダー層に配置する必要があります。こうしたリーダーが社内を啓蒙することで、他の経営層と社内のメンバーが触発され、そうしたメンバーが新たな施策を実施していく好循環が生まれると、ITモダナイゼーションは加速します。「プロCIO/CDO」と呼ばれる人材が企業のIT関連の要職に就任するケースが日本でも増えてきました。今後この流れは加速すると予想します。
企業が抱える基幹システムの課題に関しては、「ブラックボックス化による保守性の低下」「保守切れへの対応」「古い技術を有する人材の確保」が回答の上位3つを占めました。前回の調査から変化は見られず、基幹システムの課題が一向に解決していないことがうかがえます(図表20)。
これらの課題に関しては、新しい技術の活用で解決できるものもあります。例えばパブリッククラウドやクラウドネイティブ技術を活用すれば、保守切れ対応は大幅に削減できますし、人材の確保も比較的容易になります。
現状の基幹システムは古い歴史を持っており、変革は容易ではありませんが、一気に全てを解決するのではなく、一部でもパブリッククラウド化やクラウドネイティブ化することによって改善する手立てもありそうです。アジャイル開発も大規模案件に適用されるようになってきていることから、基幹システムにおいても、クラウドネイティブ技術を活用し、アジャイル開発を適用していくタイミングが到来したと言えるかもしれません。
昨今、生成AIの話題を耳にしない日は少なく、どの企業も生成AIを活用するかどうかを模索しています。今回の調査では「システム開発・運用における生成AIの活用」に関して、既に活用している、もしくは今後活用を予定しているユースケースに関して調査しました(図表21)。
結果としては、「ユーザーからの問い合わせ対応」「各種規程やガイドラインとの整合性チェック」「他社事例などの調査」が上位3項目となりました。いずれも既存業務の側面支援的な領域での活用や検討だということが分かります。
しかしながら、生成AIの持つ可能性を踏まえると、人間が膨大な時間と考察を積み重ねて差別化してきた領域での活用こそ、生産性や正確性の飛躍的な向上につながると考えられます。例えば、「プログラムコードのレビュー」や「既存システムの仕様の解析」などです。前述した基幹システムの課題の1つであるブラックボックス化の解消でも、生成AIが役立つ可能性がありそうです。
生成AIは黎明期のため、活用領域は今後拡大していくと見られます。特に、システム開発や運用において、従来のやり方を根本的に変えられる可能性が高いだけに、今後この領域でどのように生成AIを活用するかが、ITモダナイゼーションのカギになると考えます。
今回の調査結果において、「先進」は、経営環境の変化に対応すべく、毎日もしくは必要に応じてアプリケーションの更新が可能となっており、デジタル人材育成においても一定の成果が出ていました。パブリッククラウドの活用におけるビジネスの効果においても、米国の平均を上回る結果が出ています。「先進」の取り組み状況を参考にしながら、前述した課題を併せて考察すると、日本企業が取り組むITモダナイゼーションを成功に導くロードマップが見えてきました(図表22)。
以上のステップにITモダナイゼーションの成熟度を当てはめてみると、「先進」はステップ3から4に、「準先進」はステップ1から2に進展し始めているものの、「その他」はステップ1もしくはその前のフェーズにとどまっているように見受けられます。
今回までの調査結果からも、ステップ2までは比較的順調に進展するものの、ステップ2から3へ進展する際に、大きな壁があると考えられます。壁を超えるには社内でデジタル人材を育成・採用する必要があり、外部業者との関係を見直し内製化に舵を切ることが重要な要素の1つとなるからです。これには時間がかかるだけでなく、トップの覚悟と実行力が必要となります。逆に、強力なリーダーシップがあり、社内でデジタル人材が育成・採用できれば、この壁を超えられ、その成功体験が積み重なって自社のスタイルが確立されます。その結果、最終的に基幹システムの根本的な課題が解決できる状況に到達できるでしょう。
今後もテクノロジーは日々進歩しますが、蓄積された成功体験が新たなチャレンジを促進し、そのチャレンジが効果を生むサイクルができ上がれば、組織文化として定着します。この状態こそが、常に「経営に資するIT」を実現できる組織であると、私たちは考えます。
本レポートでは、500名からの回答結果をもとに傾向を探り、「先進」の調査結果に着目して「日本企業のITが経営に資するもの」となるためのヒントを探りました。
今回の調査結果を見ると、日本におけるITモダナイゼーションが徐々に始まり出したことがうかがえ、おぼろげではあるものの、実現に向けた変革のステップも見えてきました。このトレンドが一過性のものなのか、それとも不可逆的に進んでいくものなのかは、引き続き観察が必要であると考えます。
一方で懸念事項としては、「先進」とそれ以外に分類された企業の活動内容と活動を通じて得た効果に関して、二極化が進んでいるように見受けられたことです。特にITの俊敏性とデジタル人材の育成では、大きな差が出るだけでなく、その差が広がっています。しかしながら課題については、どの分類においても差異はなく、共通の課題を抱えていることもうかがえました。
ITモダナイゼーションは一朝一夕に実現できるものではなく、その旅路は長くなることが予想されます。また早く着手した人が早くゴールできるゲームとなっており、一日も早く変革に着手することが必要です。
さらに今回の調査では、テクノロジーに精通したリーダーの存在が、今後の「経営に資するITの実現」のために重要な存在となり、カギとなることもうかがえました。そうしたリーダーの方々にとって、本レポートが次の一手を検討する一助になれば幸甚です。
最後に本レポートの作成に関わった全ての方に、この場を借りてお礼申し上げます。
Cloud Transformationチーム一同
本調査では、売上高500億円以上のさまざまな業種で、自社のITモダナイゼーションの取り組みに何らかの関与をしている部門・役職の500名の方々から回答を得ました。回答者の上位5つの業界は、製造業29%、金融業24%、流通業16%、テクノロジー10%、ヘルスケア6%となり、回答者の所属部門を見てみると、経営企画13%、IT部門/デジタル推進35%、事業部門31%、コーポレート管理部門20%となっており、売上規模としては500億円以上から1兆円企業まで網羅的な回答を得ることができました(図表23)。