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組織成長を実現する、生産性の高い働き方―成功に必要な7つの要素―
PwCは給与維持型の週4日勤務制度のソリューション「Four Day Workweek Approach」を提唱しています。本稿では、組織成長と業務時間削減を両立するための7つのポイントを紹介します。また、生産性が高い働き方・仕事の進め方へのシフトする方法について、日本マイクロソフトでのチェンジマネジメントの事例を交えながら紹介します。
英国の消費者が何かを「聴く」時は、多くの場合、通勤、運動、仕事など、他の活動と同時になります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行すると、このような傾向は音楽、ラジオ、ポッドキャストに、それぞれに大きな、しかも対照的な影響をもたらしました。また、2025年までの未来を予測した「PwCエンタテイメント&メディアアウトルック(PwC Media & Entertainment Outlook)」にて示したとおり、これらのセグメントの収入傾向に影響を及ぼし続けると考えられます。
音楽、ラジオ、ポッドキャストの収入は、図1に示すとおりです。全体の支出は、2020年には前年比でおよそ3分の2に減少しましたが、2021年にはほぼ同じくらいに回復しました。以後、各セグメントの収入は2025年までの間6.16%の年平均成長率(CAGR)で増加すると予測されています。この値は、全体で5.37%と予測されている英国のエンタテイメント&メディア(E&M)のCAGRをわずかに上回っています。
しかしながら、これらの合計額からはサブセクターレベルで生じた顕著な差は見えてきません。2020年のライブ音楽収入は、コンサート会場の閉鎖やイベントのキャンセルや延期により、前年に比較してマイナス85%となりました。それとは対照的に、デジタルストリーミングがその大半を占めている録音音楽においては、サブセグメントの2020年の収入はわずかながら増加しました(図2参照)。近年、録音音楽は堅調に成長しています。大手4大レーベル(Sony Music、Warner Music、Universal Music Group、BMG)の録音音楽ビジネスは、最大で年間15%の成長率を記録しています。
ただ、録音音楽ビジネスは右肩上がりで順調に成長してきたわけではありません。パンデミックの当初には、それまで音楽を聴きながら行っていた活動が停止された上に、聞くものが音楽から感染症に関する情報に切替えられため、ストリーミング収入は減少しました。
2021年に入っても、感染症拡大による影響はサブセグメントによって多岐にわたりました。ライブ音楽は繰延需要により前年比275%と急増したのに対し、録音音楽は一桁成長にとどまりました。パンデミック後の経済の悪化により、可処分所得が影響を受けることで人々は音楽ストリーミングにお金を使わなくなるのではないか、との懸念もありましたが、それは杞憂に終わりました。大手サブスクリプションサービスの1つと契約するだけでほぼ全ての音楽が聴取可能なように音楽ストリーミングは、とりわけテレビのサブスクリプションに比べると、依然としてコストパフォーマンスが良いと捉えられているのです。
ポッドキャスト広告もまた、パンデミックの最中にわずかながらですが収入を増やしたサブセグメントとなります。Spotifyをはじめとするストリーミングプロバイダーは、ポッドキャストポートフォリオの増強に多額の投資を行ってきました。一方、人々は自粛期間中に時間を持て余し、刺激を求めていました。ポッドキャストに関しては、明確な収益化モデルはまだ確立されていませんが、ポッドキャストが持つ最大の強みの1つは、音楽の趣味嗜好や聴取習慣だけではなく、消費者に対する洞察をデータとして提供できることです。
英国のラジオ広告は、2020年に二桁の下落を記録しましたが、2021年にはほぼ元に戻り、その後は再び緩やかながら着実な成長軌道に戻っています。パンデミック当初はラジオニュースの消費が増加しました。一時パンデミック疲れが出たものの、消費者がラジオに抱く個人的な愛着もあり、ロックダウン期間中、ラジオは家庭で過ごした多くの人々になじみ深い声を届けたのでした。
「英国は音楽的創造性にあふれた国です。ライブ音楽が文化の中にしっかりと根付き、音楽は主要な輸出産業となっています。これは明らかに英国にとっての強みですが、一方で今回のようなパンデミックの際にライブ音楽が低迷したように、その影響が直撃するということも意味します。しかも、欧州連合離脱後はパフォーマーによる観光ビザの取得が困難になっているため、その影響の大きさはなおさらです」
Simon Harris – PwC Technology, Media & Telecommunications Valuations Partner
音楽の分野では、大きなトレードオフがグローバルに進行しています。これは、英国にとってとりわけ重要です。ストリーミングで莫大な収入を生み出しているのは一流アーティストのみ。一方で、ライブ音楽が大きな打撃を受ける中、大資本の後ろ盾のないミュージシャンが大ブレイクできるかどうかは疑わしいと言わざるを得ません。他方では、DIY方式の音楽制作ツールやデジタル配信チャンネルの登場によって音楽創作の民主化が進み、コンテンツの数が爆発的に増加しています。これら2つの動向はどの程度相互に作用するものなのか、まだ結論は出ていません。
音楽は、依然として好調な成長産業です。音楽に関わる権利は独自のアセットクラスを形成し、音楽関係企業の上場も促しています。音楽の出版・録音権の評価額は史上最高の高水準に到達しており、例えばBob DylanやStevie Nicksの他、最新アーティストの中にも自らのバックカタログを売却するものがいます。加えて、Universal Music Groupは2021年9月、アムステルダムのユーロネクスト証券取引所において新規株式公開(IPO)を行いましたが、その評価額は450億ユーロを超え、上場直後も数週間にわたり堅調に取引が行われました。
英国は現在、音楽への1人当たり支出が世界第5位に留まっており、さらなる成長可能性があると言えます。今後の主要な進展としては、例えば、米国人ラッパーのTravis Scottが「フォートナイト(Fortnite)」に出演したように、ビデオゲームがミュージシャンにパフォーマンス空間を提供するといったトレンドが挙げられます。既存の音楽ファンを奪い合うよりも、そうしたイノベーションに加え、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)における音楽体験を増やすなどして、新たな消費者を引き付けることが有効だと考えられます。
ラジオは、これまでもその終焉がしばしば予想されてきましたが、今も生き残り、この先もゆっくりと収益を増やし続けていくと考えられます。ポッドキャストの聴取は今後も増加すると考えられ、その中でプロバイダーは、より効果的な収益化の方法をひねり出そうと奮闘を続けており、恐らくはプレミアムコンテンツのサブスクリプションという形になると想定されます。
市場参加者へのメッセージとしては、音楽分野では、ストリーミングのプレイリストに載ったり、ソーシャルメディアをうまく利用してファンを巻き込んだりすることで、新たなクリエーターが誕生することでしょう。このセグメントでのビジネスでは、音楽関係の権利のアセットクラス化や音楽ファンドの登場に示されるとおり、依然として権利の所有がカギとなります。音楽の消費が増え続ける中、コンテンツの権利の活用機会をコントロールし、そこから利益を得ることが成功に直結します。そしておそらくは、その収益をアーティストと公平に分け合うことが、成功を後押しするでしょう。クリエーターがいなければ、音楽業界は何も売ることができないのですから。
日本における音楽、ラジオ、ポッドキャストの市場も、英国と同様にパンデミックの影響を受けていると言えます。
ポッドキャストはコロナ禍でも着実な成長が見られましたが、録音音楽・ラジオ・ライブ音楽の市場はパンデミックの影響で2020年に売上が減少しました。特にライブ音楽については東京五輪・パラリンピックが延期・無観客開催となるなど、リアルイベントの開催が困難な状況であったため、前年度から60.6%減少するなど多大な影響を受けました。
2021年からはいずれの市場も回復する見込みとなっており、特にライブ音楽は、2022年にはパンデミック前の市場規模を超す31億4,900万米ドルに達し、その後も成長が続くと見られています。また、ポッドキャストも大手ストリーミング配信サービスを中心に独自コンテンツやラジオ番組の配信などサービスの拡充が見受けられますが、市場としての規模は依然として小さく、今後の市場拡大や収益化に向けた課題は残っていくでしょう。
2022年に入り大規模な音楽フェスが開催されるなどライブ音楽は徐々に復調の兆しが見えて来ています。しかし、コロナ禍で定着した密を避ける行動習慣の払拭には時間がかかる可能性もあり、企業としては多様な収益チャネルの活用が必要となります。コロナ禍で広まったオンラインでのライブ配信や、アニメや映画などとのコラボによるマルチチャネルによるIP戦略、また、独自コンテンツや限定特典を活用したファンマーケティングの強化など、多様な手段で顧客層を確保することが重要となっていきます。
本コンテンツは、「“Listen”: music, radio and podcasts ride out the pandemic – but rights remain key and structural change will continue」を翻訳し、一部加筆したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
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