温暖化の抑制に向けて:気候変動目標は達成可能なのか?

ネットゼロ経済指標2023

engineers in safety wear walking through solar farm

世界的な気温の上昇を、産業革命以前のレベルと比較して1.5℃に抑えるためには、現在から2050年までの間、前年比17.2%という驚異的な脱炭素化を毎年達成し続けなければならないことが、今回の「ネットゼロ経済指標(NZEI)2023」によって明らかになりました。その一方で、良いニュースもあります。

PwCの「ネットゼロ経済指標」は、エネルギー関連のCO2排出量の削減と経済の脱炭素化の進捗状況を示す年次指標です。今回で15回目の発表となります。

2022年に世界が達成した脱炭素化率は、わずか2.5%でした。世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して1.5℃に抑えるには、今や前年比で17.2%の脱炭素化が必要です。この脱炭素化の速度は、現在の7倍です。これは確かに驚くべき数字でしょう。しかし分析の結果、2022年は再生可能エネルギーの導入が急増したことも明らかになりました。すなわち、市場主導型の移行が加速する可能性が増大しつつあると言えます。COP28では、議長国が2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍にすることを求めました。また、民間企業でも、ネットゼロ実現に向けた対応が取締役会の議題として取り上げられるようになってきています。脱炭素化への取り組みを拡大する機運は高まっているのです。

本レポートは、野心的なネットゼロ目標を達成するためには、早急に行動を起こす必要があることを改めて指摘する内容となっています。2023年は、企業、資本市場、そして競争が持つ真の力が解き放たれ、画期的なイノベーションの創出、排出削減量の増加、人々の行動様式の変化に拍車がかかる1年になる可能性があります。しかしそのためには、民間部門が投資を拡大できるよう、国家間においても国内においても、外交と内政の方向性を明確に一致させる必要があります。

希望があっても対策が不十分では手遅れになりかねません。ネットゼロ経済への早急な移行が必要であることに、もはや疑問の余地はないでしょう。そして手遅れになる前に行動するには、2023年が最後の年になるかもしれません。

「ネットゼロ経済指標2023」の結果が意味するものとは?

世界が今の7倍の速度で脱炭素化を進めていく必要があるのは事実です。でも、だからと言って諦めるのではなく、早急に行動を起こすべきです。全体的なペースは急いで押し上げなければなりませんが、企業と政策立案者が足並みをそろえれば、劇的な変化を起こすことも可能です。一部の地域では、風力発電や太陽光発電の導入が急速に進んでいます。これは変化の可能性を示唆するものです。世界は炭素排出量と経済成長のデカップリングを目指しており、今私たちはその流れを大きなうねりとしていかなければなりません。

PwCは、「ネットゼロ経済指標」を通じて、世界の脱炭素化の進捗状況を追跡しています。パリ協定では、多くの国が取り組みを加速するというコミットメントを表明しました。しかし今回の調査から、2023年に世界全体で達成された脱炭素化率はわずか2.5%であったことが明らかになりました。

産業革命前に比べて世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるには、現在から2050年までの間、毎年17.2%の割合で脱炭素化を推進していかなければなりません。

これは現在の7倍という驚異的な数字です。

一方で、明るいニュースもあります。2022年は再生可能エネルギーによる発電量が劇的に増加しました。この流れは今後も加速させていく必要があります。

こうした結果を踏まえ、企業には、本レポートのデータを検討し、それが自社の組織や事業を展開する国にとってどのような意味を持つのかを考えてもらいたいと思います。ぜひ取締役会において、また取引業者との対話の場で、本レポートの分析結果を活用し、より迅速かつ抜本的な行動を起こしてください。

人類が直面している課題の緊急性を考えると、気温の上昇が1.5℃に抑えられた未来を実現するには、より大きなスケールで協力していくことがこれまで以上に重要になります。

PwC英国 グローバル・クライメート・リーダー Emma Cox

世界の全体像

Net Zero Economy Index 2023

2023年の分析結果

脱炭素化率をこれまでの7倍にする必要があります。

脱炭素化率は、COVID-19拡大以前の水準にほぼ戻っています。

G7とE7では脱炭素化の進捗の度合いが異なります。

世界では経済成長とエネルギー消費が徐々に切り離されつつあります。

2022年は再生可能エネルギーの導入が急増しました。

ネットゼロ達成に向けた投資でビジネスチャンスが拡大します。

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ネットゼロ経済指標2023

PwCの評価指標とメソドロジー

燃料係数やエネルギー強度を含むPwCのメソドロジーと主要評価指標の詳細については、以下の各項目をご参照ください。

メソドロジー

「ネットゼロ経済指標」では、全世界のエネルギー関連CO2排出の脱炭素化を追跡しています。

分析は、国別・燃料種類別のエネルギー消費量ならびに石油、ガス、石炭の消費量に基づくCO2排出量を取りまとめたエナジー・インスティチュートの「Statistical Review of World Energy(世界エネルギー統計レビュー)」に基づいて行っています。

主なデータソースは、エナジー・インスティチュート、IEA、世界銀行、OECD、およびPwCです。

AFOLU(農林業およびその他の土地利用)による排出およびCO2以外の温室効果ガスの排出は、本分析から除外しました。また、炭素隔離を計算に入れていません。したがって、本データを各国の排出インベントリと直接比較することはできません。

G7諸国とは、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国を指します。

E7諸国とは、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、トルコを指します。

G20諸国とは、G7諸国、E7諸国、アルゼンチン、オーストラリア、韓国、サウジアラビア、南アフリカ、EUを指します。

炭素強度

「ネットゼロ経済指標」の主な目的は、各国と世界の炭素強度(CO2/GDP)の算出と、気温上昇を1.5℃に抑えるために必要な2050年までの炭素強度の変化率の追跡にあります。

PwCでは、IPCCのカーボンバジェットを用いて今後必要な排出削減量を計算し、それを予測GDP成長率で除しています。

これにより、予測GDP成長率を維持するために削減しなければならない排出量が分かり、経済成長と排出を切り離すために必要な取り組みをどの程度の規模で行うべきかについての知見が得られます。

燃料係数

燃料係数(CO2/エネルギー)は、消費エネルギー1単位当たりのCO2排出量を示す指標です。そのエネルギー消費がどれくらい環境に優しいかを示しています。

また、ある国のエネルギーミックスが再生可能エネルギー源にどの程度移行しているかの指標となる他、最も排出量の多い化石燃料(石炭など)からの脱却度を評価することもできます。

化石燃料の種類によって、エネルギー1単位を消費するごとに排出されるCO2量は異なります。再生可能エネルギー源から得たエネルギーを消費する場合、単位当たり排出量は微量またはゼロとなるため、燃料係数もゼロに近づきます。

エネルギー強度

エネルギー強度(エネルギー/GDP)は、GDP1単位当たりのエネルギー消費量を示す指標です。

特定額のGDPを生み出すのにどれだけのエネルギーが必要かを示します。

エネルギー強度は、エネルギー効率(エネルギー効率化政策や効率化を可能にする技術の進歩)、エネルギー価格決定メカニズム、地域の人口や人口動態の変化、経済セクターの生産構成の変化、使用されたエネルギー1単位当たりの経済生産量の最大化、より効率的な新技術やインフラへの投資、エネルギー使用に対する気候の影響といった要因の影響を受けます。

※本コンテンツは、Net Zero Economy Index 2023を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

主要メンバー

服部 真

Strategy Consulting Leader, PwCコンサルティング合同会社

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林 素明

パートナー, PwCサステナビリティ合同会社

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齋藤 隆弘

パートナー, PwCサステナビリティ合同会社

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本多 昇

ディレクター, PwCサステナビリティ合同会社

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田原 英俊

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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安田 裕規

パートナー, Japanese Business Network UK Co-Leader, PwC United Kingdom, PwC Japan

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