進捗は緩やかであり、飛躍的な変化が必要

ネットゼロ経済指標2024

engineers in safety wear walking through solar farm

PwCのネットゼロ経済指標を見ると、全世界の炭素集約度削減は失速し、過去10年間で最低の水準に落ち込んだことがわかります。私たちの最新の分析結果によると、地球温暖化を1.5℃に抑えるためには、世界が今すぐ20倍の速さで脱炭素化を進めなければなりません。このしきい値をオーバーシュートすることがにわかに現実味を帯びてきたことから考えて、気候問題に対する意欲的な目標を達成するためには大胆な行動が必要です。

日本の読者の皆さまへ

2023年に世界が達成した脱炭素化率はわずか1%であり、過去10年間で最低の水準に落ち込みました。ネットゼロという意欲的な目標を達成するためには、即時かつ大胆な行動が官民に求められています。日本においても、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、従来の発想からの転換と、地球温暖化への対応を成長の機会と捉えた積極的な取り組みが必要です。本レポートが、日本企業にとって、省エネルギーの徹底や再生可能エネルギーの最大限の導入といった、ビジネスモデルや経営戦略の変革の一助になれば幸いです。

ネットゼロ経済指標は、エネルギー関連のCO2排出削減と経済の脱炭素化の進捗状況を示すPwCの年次指標です。2023年の全世界の脱炭素化率はわずか1.02%でした。世界が温暖化を産業革命前に比べて1.5℃に抑えるためには、今すぐ20倍の速さで脱炭素化を進めなければなりません。

この基準値をオーバーシュートする可能性が、にわかに現実味を帯びてきました。温暖化を2℃(パリ協定の目標の下限)に抑えるだけだとしても、進捗状況を大胆に転換させ、脱炭素化率を年6.9%に引き上げる必要があります。

進捗のペースはゆっくりしています。再生可能エネルギー設備容量の伸びは堅調ですが、エネルギー需要の増大に伴って化石燃料への依存は強まるばかりで、相変わらず化石燃料がエネルギーミックスの圧倒的部分を占めている状態です。

エネルギー集約度の削減と需要の効果的抑制は、企業と政府にとって、動きを加速させるチャンスです。民間部門は、省エネ技術の導入、循環型ビジネスモデルの採用、最先端の製造プロセス導入の分野で主導権を握ることができます。政府は、公共政策を民間企業のイノベーションと連携させることによって、この取り組みを強化することが可能です。それは、安全で持続可能なエネルギーの未来へと進む大切な一歩になるでしょう。

現在の傾向を見ると、目標と行動のギャップが広がり続けていることが分かります。行動を起こすための時間は残りわずかです。ゆっくりした進捗を飛躍的変化へと切り替え、全ての人々のために持続可能でレジリエントな未来を確実に実現するには、持続的な取り組みを今すぐ始めなければなりません。今こそ行動を起こすときです。

PwCのネットゼロ経済指標2024の結果は、どのように行動を促すのでしょう?

「私たちが大胆な行動を起こさなければ、温暖化は1.5℃を超え、オーバーシュートはますます拡大し、影響はさらに深刻化する危険性があります。こうした警告が発せられているにもかかわらず、目標と行動のギャップは広がるばかりです。全世界が力を合わせない限り、温暖化を安全な限界以下に抑えられる可能性は消えてしまいます。求められている変化を実現するためには、再生可能エネルギーの利用を拡大し、エネルギー需要をもっとうまく調整し、公正な移行に向けて経済的支援と技術的支援を拡大しなければなりません」

Emma Cox(PwC 英国 グローバル気候リーダー)

PwCのネットゼロ経済指標は、世界の脱炭素化の進捗状況を追跡しています。2024年の分析によれば、炭素集約度の削減はわずか1.02%にとどまり、過去10年で最低の水準のまま停滞しています。

つまり、温暖化を1.5℃に抑えるためには、世界が2023年の20倍の速さで脱炭素化を進めなければならないということです。このしきい値をオーバーシュートすることがにわかに現実味を帯びてきました。

オーバーシュートする可能性がもたらす影響は抽象的なものではありません。それらの影響は現実的な損失となって表れます。つまり、生命、人々、そして生活が失われるのです。実際に今、その影響は私たちの身の回りで起きています。熱波、洪水、暴風雨といった気候システムの崩壊は、経済的なコストを増大させ、人々をますます苦しめています。たとえ温暖化をパリ協定の目標の下限である2℃に抑えるだけだとしても、進捗状況を大胆に転換させることが必要です。

必要な脱炭素化率は年6.9%です。2023年に再生可能エネルギーの設備容量は14%増強され、堅調に伸びているものの、エネルギー需要の伸びはこれを上回っています。これは、化石燃料への依存度が高まるばかりであることを意味します。ちなみに、2023年の化石燃料消費量は1.5%増加しました。

この点に関して、企業と政策立案者には、供給サイドの勢いを持続させるとともに、エネルギー需要とエネルギー効率への取り組みをさらに綿密に検討する機会が残されています。

今求められている飛躍的変化を起こすためには、大がかりな集団行動が必要です。こうした協働は、企業内部においては、業務、財務、テクノロジーなどの部門を横断する形で、また社外においては、業界や分野をまたぎ、官民両セクター間で行う必要があります。現在の傾向を見ると、目標と行動のギャップが広がり続けていることが分かります。しかし、私たちは協力し合うことによって、気候アクションを価値あるものにすることができるでしょう。

世界の全体像

Net Zero Economy Index 2024

2024年調査結果

炭素集約度の減少率は2011年以降で最低に

オーバーシュートが大きいほど影響は深刻です。

再生可能エネルギーの成長がエネルギー需要に追いつかず。

公正な移行のためには、経済的支援と技術的支援が必要です。

エネルギー効率向上と需要管理のための緊急対策が必要

政策にはエネルギー需要の抑制に向けてイノベーションとアジリティの促進が求められる

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ネットゼロ経済指標2024

PwCの評価指標とメソドロジー

燃料係数やエネルギー集約度などのPwCのメソドロジーと主要評価指標の詳細については、以下の各項目をご参照ください。

メソドロジー

ネットゼロ経済指標は、全世界のエネルギー関連CO2排出の脱炭素化を追跡します。

この分析は、エネルギー、プロセス排出、メタンおよびフレア処理による国ごとの燃料種別エネルギー消費量とCO2排出量を取りまとめたエナジー・インスティテュートの「Statistical Review of World Energy(世界エネルギー統計レビュー)」に基づいて行っています。

データソース:エナジー・インスティテュート、IEA、世界銀行、OECD、PwC

AFOLU(農林業およびその他の土地利用)による排出は本分析から除外しました。ネットゼロ経済指標の分析では炭素隔離を計算に入れていません。したがって、このデータを各国の排出インベントリと直接比較することはできません。

G7構成国:カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国

E7構成国:ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、ロシア、トルコ

G20構成国:G7諸国、E7諸国、アルゼンチン、オーストラリア、韓国、サウジアラビア、南アフリカ、EU

メソドロジーの詳細は、PDFファイル(ダウンロード可)をご覧ください。

炭素集約度

ネットゼロ経済指標の主たる目的は、各国と世界の炭素集約度(CO2e/GDP)の算出と、2050年までの気温上昇を1.5℃に抑えるために必要な炭素集約度の変化率の追跡です。

そこで、IPCCのカーボンバジェットを用いて今後必要な排出削減量を算出し、それを予測GDP成長率で除しました。

これにより、予測GDP成長率を維持するために削減しなければならない排出量が分かり、経済成長と排出を切り離すために必要な取り組みをどの程度の規模で行うべきかについての知見が得られます。

燃料係数

燃料係数(CO2/エネルギー)は、消費エネルギー1単位当たりのCO2排出量を示す指標です。そのエネルギー消費がどれくらい環境に優しいかを示しています。

また、ある国のエネルギーミックスが再生可能エネルギー源にどの程度移行しているかの指標となる他、最も排出量の多い化石燃料(石炭など)からの脱却度を評価することもできます。

化石燃料の種類によって、エネルギー1単位を消費するごとに排出されるCO2量は異なります。再生可能エネルギー源から得たエネルギーを消費する場合、単位当たり排出量は微量またはゼロとなるため、燃料係数もゼロに近づきます。

エネルギー強度

エネルギー集約度(エネルギー/GDP)は、GDP1単位当たりのエネルギー消費量を示す指標です。

特定額のGDPを生み出すのにどれだけのエネルギーが必要かを示します。

エネルギー集約度は、エネルギー効率(エネルギー効率化政策や効率化を可能にする技術の進歩)、エネルギー価格決定メカニズム、地域の人口や人口動態の変化、経済セクターの生産構成の変化、使用されたエネルギー1単位当たり経済生産量の最大化、より効率的な新技術やインフラへの投資、エネルギー使用に対する気候の影響といった要因の影響を受けます。

※本コンテンツは、Net Zero Economy Index 2024を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

主要メンバー

服部 真

Strategy Consulting Leader, PwCコンサルティング合同会社

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林 素明

パートナー, PwCサステナビリティ合同会社

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齋藤 隆弘

パートナー, PwCサステナビリティ合同会社

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本多 昇

ディレクター, PwCサステナビリティ合同会社

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田原 英俊

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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安田 裕規

パートナー, Japanese Business Network UK Co-Leader, PwC United Kingdom, PwC Japan

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