
2020年代後半に向けて大胆な改革を Next in pharma 2025:未来を決めるのは今
製薬業界の未来を見据えた戦略的アプローチと必要な能力について論じる本稿では、2025年以降の変革的なトレンドや価値創造の方法を探り、特にAIの影響、バイオロジーの進歩、薬価引き下げの圧力、患者中心主義などに対応するための戦略を提案して います。
mRNAワクチンの短期間での開発・普及により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う危機的な状況を脱するなど、製薬企業の持つ技術はさまざまな疾患の治療や人々の生活に貢献してきました。しかし、実のところは近年、製薬企業、とりわけバイオテクノロジーを活用した新薬の開発につとめる企業の株主総利回り(total shareholder return)は、S&P500に対して後れをとっています。
製薬企業にとっての第一の使命は、疾患の治療や予防に貢献することです。一方で、営利企業である以上、株主に対し十分な還元を行うことが求められます。この、株主への利益還元と疾患の治療や予防への貢献を両立するために、製薬企業のリーダーは、企業の価値の創造・向上という視点を織り込んだうえで、日々の意思決定を行う必要があります。またデジタルの活用をさまざまな用途で進めることも急務です。
デジタル化を促進しつつ製薬企業が企業価値を高めるために、PwCは以下の5つのアクションが必要であると考えます。
製品価値は時間とともに変化しますが、優れたケイパビリティ(技術や手法)は持続的な競争優位性を生み出すことができます。製薬企業が将来にわたり良好な業績を維持するためにいま不可欠なケイパビリティとして、次の6項目が挙げられます。
効率性の向上、サービス提供の拡大、運用コストの削減を目的に、製薬企業は古いシステムを更新し、クラウド利用に多額の設備投資を行ってきました。一方、それらは必ずしも最大限に活用されているわけではありません。それらの恩恵を確実に受けるためには、クラウドネイティブサービスによってイノベーションを加速させる必要があります。
困難な状況で企業業績を向上させるには、優良な人材を惹きつけることが必要です。そのために効果的な組織文化の土台として、「社内に信頼の文化を醸成し、社外との信頼関係を構築すること」「従業員主導でリスクを捉えイノベーションを起こすこと」の2つのテーマが重要になります。
漫然と同一分野での自前主義を続ける代わりにM&Aやアライアンスなどのインオーガニックな活動が加速するのに伴い、製品・研究開発において最適なポートフォリオを構築することが課題に位置付けられるようになりました。そのための事業開発プロセスの見直しには、次の4項目の観点を持つ必要があります。
サイバー攻撃、地政学リスク、世界的な税制改革や社会的要求への対応といったリスクはますます高まっています。製薬企業においても、これらのリスクから事業や社員・顧客を守ることは持続的な成長に必須です。
本レポートは、2022年5月にPwC米国が発刊した「Next in pharma: How can pharmaceutical companies drive value growth?」を日本語訳し、日本の実情を踏まえて加筆訂正等を行ったものです。
日本における製薬企業の状況や位置付けは米国とは異なるかもしれませんが、株主への還元と疾患の予防・治療への貢献を両立させることが求められる点においては同じといえます。
製薬企業の経営者には、患者と株主が求める価値を生み出すために、変革に向けた作戦を立案するのと同時に自社の守りを万全にすることが求められています。
製薬業界の未来を見据えた戦略的アプローチと必要な能力について論じる本稿では、2025年以降の変革的なトレンドや価値創造の方法を探り、特にAIの影響、バイオロジーの進歩、薬価引き下げの圧力、患者中心主義などに対応するための戦略を提案して います。
PwCコンサルティングが経営強化・業務改善支援を行っている北杜市立塩川病院・院長の三枝修氏および北杜市立甲陽病院・院長の中瀬一氏に、これまでのご御経験を踏まえて地域医療の魅力を存分に語っていただきました。
「世界の失明を半分に減らす」という目標を掲げ、先進国から途上国まで、グローバルな視野で医療課題解決に取り組むOUI Inc.代表取締役、清水映輔氏に、情熱の源泉とテクノロジーで切り拓く眼科医療の未来像について伺いました。
マクロ経済的要因の改善と米国の規制緩和への期待に後押しされ、米国と欧州のディール市場は堅調に推移しており、2025年のヘルスケア業界のM&Aは金額、件数ともに加速するものと予想されます。