State of Climate Tech 2022

気候テック投資の停滞からの脱却

State of Climate Tech 2022
  • 2023-04-04

PwCの年次報告書「気候テックの現状」第3版は、二酸化炭素排出量の削減目標達成には投資の大幅な拡大が必要であるにもかかわらず、ベンチャーキャピタル投資が停滞状態にあることを明らかにしました。

国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の開催を前に、この1年間の世界の状況を振り返ると、必ずしも意欲的な気候変動対策が展開されたとは言えません。PwCのネットゼロ経済指標の最新の分析によると、この12カ月間の世界の脱炭素化率はわずか0.5%にとどまるという厳しい結果であることが分かりました。この数字は、地球の気温上昇を1.5℃に抑えるために必要な15.2%の脱炭素化率を大きく下回るものです。残された時間は少なく、イノベーションを加速することがこれまで以上に重要です。では、近年の気候テックへの投資は、この課題の緊急性に見合ったものでしょうか。

答えはイエスでもあり、ノーでもあります。楽観的な意見としては、次のようなものがあります。

  • 気候テック市場はこの10年間で最大の試練に直面しましたが、力強い回復を見せています。欧州での紛争、インフレ、資本市場の急激な調整により、10年前のクリーンテックをめぐるバブルとその崩壊に似た状況が再び起こり、投資家の信頼感が急低下するのではないかとの懸念がありました。しかし、この危機は回避されました。今年の調査に参加した投資家の10人に8人は、今後2年間に環境・社会・ガバナンス(ESG)分野への投資を増やす計画があると回答しています。PwCが話を聞いた投資家は、市場の見通しについても楽観的な見方を維持していました。

  • 気候テックの動向を市場全体と比較すると、この見方を裏付ける傾向が見られます。2021年が非常に好調だったことや、特別目的買収会社(SPAC)の活動が縮小していることを考えると、2022年に気候テック投資がやや落ち着きを見せることは十分に予想されましたが、2022年の投資全体に占める気候テック投資の割合は歴史的な高水準で推移しました。実際、2022年第3四半期までの12カ月間については、ベンチャーキャピタル投資額全体の4分の1以上を気候テック投資が占めました。これは過去16四半期のうち12四半期よりも大きな割合です。事実、投資額の12カ月移動平均は2021年以降、ほぼ一定の水準にあります。

世界のベンチャー投資に占める気候テックスタートアップ投資の割合 (12カ月移動平均)
Year Quarter 気候テックスタートアップ投資の割合 ベンチャーキャピタル市場全体
2018 第1四半期 24 101
第2四半期 27 110
第3四半期 27 120
第4四半期 24 145
2019 第1四半期 22 154
第2四半期 23 158
第3四半期 24 161
第4四半期 24 146
2020 第1四半期 25 145
第2四半期 22 146
第2四半期 22 157
第4四半期 24 169
2021 第1四半期 26 208
第2四半期 26 254
第3四半期 29 296
第4四半期 28 344
2022 第1四半期 28 346
第2四半期 28 334
第3四半期 26 287
  • 気候テックスタートアップ投資の割合
  • ベンチャーキャピタル市場全体

出典:PwC「2022年版気候テックの現状」、PwCによるPitchBookデータの分析

一方、不安材料もあります。

  • 2022年のベンチャーキャピタル投資は、活況だった2021年と比べると徐々に下降しています。ベンチャーキャピタル投資のうち、気候テックスタートアップへの投資は2022年の第1四半期から第3四半期までの間に520億米ドルに減少し、前年同期比では30%減となりました。
  • 次の気候テックの成功例を生み出すためにはアーリーステージ投資の件数を増やす必要がありますが、事態は逆の方向へ向かっています。昨年の調査では、事業拡大を目指すアーリーステージのスタートアップへの投資額と投資件数が不足していることが明らかになりましたが、状況はさらに悪化しているようです。
  • 投資は依然としてカーボンインパクトと一致していません。これは市場の効率性が低く、気候分野のアウトカムにつながる投資を呼び込めていないことによるものです。
気候テックスタートアップへの世界のベンチャー投資
Year Quarter 建築環境 エネルギー 金融サービス 食品・農業・土地利用 二酸化炭素回収・利用・貯留 気候変動データインテリジェンス 工業・製造業・資源管理 モビリティ・輸送 投資件数
2017 第1四半期 0 0 0 0 0 0 0 0 0
第2四半期 285977496.6 492045457.8 7120668.59 556004592.2 0 104290052 115264453.3 1533990677 425
第3四半期 218956619.8 429880071.8 65786865.35 535740047.7 11627388.83 317339006 373930719.4 4311461719 468
第4四半期 191754095.7 821564616.2 62448348.13 624341308.7 12312177.22 134173146 514645496.9 3908668618 483
2018 第1四半期 111014233 697390789 225610641 368817739 100313230 68610730 930908602 6085694089 632
第2四半期 393998159 925961701 62167801 669746193 85849998 146686801 413507542 5531055245 494
第3四半期 1265226779 1129692993 63587422 548622242 98001683 116118850 881062254 5053662867 475
第4四半期 1339579064 1004493141 50818393 920929115 145549 161902571 1151937360 4592330110 529
2019 第1四半期 267285204 1293572302 78730042 691176370 75201168 111952707 597145518 4291261290 608
第2四半期 158478474 1545313277 48315934 954436456 30753592 138611766 615984874 6810773160 502
第3四半期 533564300 1024008824 26874754 782895058 25851278 146720529 702279072 8298267817 534
第4四半期 269671249 1175806600 69770084 731523867 13451646 135699737 630775586 3302631179 549
2020 第1四半期 214453809 1596687495 1044303394 1592692110 14091482 121050823 343767427 2744481917 555
第2四半期 310398627 651121142 55951326 1749812292 255266609 136810075 760184245 3388833638 478
第3四半期 311631223 1412175941 97259799 1821342526 136576056 146249972 715233910 8155598266 556
第4四半期 559021307 3271489475 51524332 2477112071 62126831 83980964 844611454 5922672031 557
2021 第1四半期 976573579 1938537138 1156836500 1913764479 163812612 269900288 1700881731 12602930522 635
第2四半期 529474961 2839108526 758457981 2680968876 68879753 526693570 2060036752 9640459723 556
第3四半期 481512541 4241853741 2281524680 4048922752 167457356 509817727 4410320421 17472514892 533
第4四半期 361211419 7714879457 399523735 2374886213 509614231 1282430901 900347724 10936746830 452
2022 第1四半期 1288840284 4911090818 378003740 2353887132 188787541 1090798274 1584235481 7675879891 452
第2四半期 857490143 5812173181 125139607 1664115493 1365620313 1305916818 1026733712 4940671746 427
第3四半期 858660752 4517409657 650001442 1335858597 12901843 456846562 542830374 6703939485 327
  • 建築環境
  • エネルギー
  • 金融サービス
  • 食品・農業・土地利用
  • 二酸化炭素回収・利用・貯留
  • 気候変動データインテリジェンス
  • 工業・製造業・資源管理
  • モビリティ・輸送
  • 投資件数

出典:PwC「2022年版気候テックの現状」、PwCによるPitchBookデータの分析

周期的な減速の可能性

気候テックへのベンチャーキャピタル投資が縮小しているのは、企業投資全般に見られる周期的な変動、つまり急成長の後に鈍化するという自然な周期を反映したものかもしれません。2021年に起きた気候テック投資の急増は、主に特定買収目的会社(SPAC)による少数の大型案件に牽引されたものと言えます。当時、PwCが話を聞いた投資家の多くは、SPACが流動性の向上に与える影響に肯定的でしたが、SPACが中期的に投資の主要な促進要因であり続ける可能性については懐疑的でした。この予想はPwCのデータでも裏付けられており、SPACによる気候テック投資は、2021年第3四半期に過去最高の93億米ドル(25件)を記録したものの、1年後にはわずか8億米ドル(3件)に減少しました。

気候テックスタートアップへのグローバル投資
Time period (for Excel lookup) Time period その他全ての投資 SPAC投資
2018 第1四半期 8593560060 0
第2四半期 8228973440 0
第3四半期 9155998236 0
第4四半期 9243135295 0
2019 第1四半期 7406324601 0
第2四半期 10302667536 0
第3四半期 11540461628 0
第4四半期 6329329947 0
2020 第1四半期 7671528459 0
第2四半期 7088017955 238360000
第3四半期 12606067704 190000000
第4四半期 11307538457 1965000000
2021 第1四半期 17588838432 3153300000
第2四半期 16874080151 2290000000
第3四半期 24337124107 9276800000
第4四半期 22620640508 1859000000
2022* 第1四半期 18744523163 727000000
第2四半期 16542861013 555000000
第3四半期 14278448714 800000000
  • その他全ての投資
  • SPAC投資
* 部分データ
出典:PwC「2022年版気候テックの現状」、PwCによるPitchBookデータの分析

2021年第3四半期の記録的な投資額はSPACが牽引したもので、今考えれば外れ値であったことを考慮すると、今年の気候テック投資の減少はそれほど劇的なものではないと言えるでしょう。2022年の投資額は、四半期ベースでは150億米ドルから200億米ドルの範囲で推移しました。これは2021年上半期と同等の水準です。2018年以降の気候テック投資の累計額は2,600億米ドルに達しています(2022年の500億米ドル超を含む)。

興味深いことに、気候テック投資の水準は、経済環境の悪化や最近のベンチャーキャピタル市場全体の減速にもかかわらず、ほぼ一定となっています。実際、直近の四半期を含む過去12カ月間の気候テック投資はエクイティ投資全体の26%を占めており、これは2018年以降の実績(20~30%)の中では高い部類に入ります。

加速する需要

たとえ気候テックへのベンチャー投資が減速していたとしても、ネットゼロへの移行に対する広範な投資は、テクノロジーへの投資を含めて資金需要が高まっていることを示しています。こうしたマクロトレンドの背景には、政策支援による気候テックスタートアップへの投資環境の整備や、民間のネットゼロソリューションに対する継続的な需要拡大といった、官民両セクターの変化があります。

公共セクターでは、政策立案者の間で気候の安全保障、エネルギーの安全保障、経済の安全保障はそれぞれつながっていることが理解されつつあるようです。実際、公共セクターが推進している気候関連の取り組みの多くは、ESG課題への対応を主軸にしたものではなく、経済成長を第一に据えたものとなっています。このアプローチは不安定な経済状況にもかかわらず、というよりはむしろ、不安定な経済状況だからこそ、政策立案者が公的支援を強化することを可能にしています。気候テックスタートアップにとって追い風となる可能性のある最近の動きには、次のようなものがあります。

  • 欧州委員会のUrsula von der Leyen委員長は、2019年の就任直後から気候変動を欧州の最重要課題に掲げています。ウクライナにおける紛争が始まって以来、各国政府はエネルギー価格の上昇への対応とエネルギーの安全保障に取り組んでおり、欧州ではエネルギー効率や再生可能エネルギーに関する技術の導入計画が増え続けています1。これはヒートポンプやグリーン水素などの技術だけでなく、あらゆるセクターの気候テックソリューションに恩恵をもたらすことになります。
  • 中国はネットゼロへの移行に積極的に投資しており、2021年は低炭素技術の導入に2,660億米ドルを投入しました2。中国が今後もネットゼロへの移行に欠かせない鉱物のサプライチェーンの強化に投資し続けることで、電池技術や電気自動車のようなソリューションに取り組むスタートアップは競争力を獲得するでしょう。
  • 米国では、インフレ抑制法、インフラ投資雇用法、CHIPSおよび科学法などにより、気候テックやクリーンエネルギーへの連邦政府支出が、今後10年間で現在の3倍以上の5,000億米ドルに達すると見られています3。特に注目したいのは、連邦政府が使用する車両を全てゼロエミッション車にするという公約です(小型車は2027年まで、全ての車両について2035年までに達成)4。また、回収・貯留した二酸化炭素1メートルトン当たりの税額控除を最大85米ドルまで引き上げる計画もあります。こうした取り組みは、気候テックスタートアップが獲得できる市場規模を大きく変えるだけでなく、コストも削減するでしょう。
  • 米国では州レベルの活動も展開されています。例えばニューヨーク州は新たに建物のエネルギー効率に関する厳しい要件を導入し5、8月にはカリフォルニア州が2035年からガソリン車の新車販売を禁止する規制を発表しました6

一方、民間セクターでは「炭素の時間価値」、つまり短期的なネットゼロ対策と、長期的な排出量削減ソリューションのバランスが関心を集めるようになっています。後者については、First Movers CoalitionFrontierなどのイニシアティブが登場したことで、気候テックを利用したソリューションに対する需要シグナルが強まり、投資家がスタートアップの成長に投資する機会が広がりました。投資家は、これらのイニシアティブによって気候テック投資が増加し、気候テックの成長が促進されることを期待しています。その効果が投資データにはっきりと現れるまでには数カ月を要するかもしれませんが、その兆しはすでに現れ始めています。

例えば、温室効果ガス排出量に関する投資家向けグレードのデータインテリジェンスについて考えてみましょう。企業の間では、こうしたデータインテリジェンスや各種ESG課題に対する関心が年々高まっています。これはESGデータに関する規制と投資家の期待の両方に対応できる企業向けソフトウェアソリューションへのニーズが高まっていることによるものと考えられます。温室効果ガスのデータインテリジェンスの分野には、活気あるスタートアップのエコシステムが存在し、温室効果ガス会計、サプライチェーンのトレーサビリティ、環境・健康・安全に関するレポーティングなどのソリューションが提供されています。2021年以降、PwCは300件近くの投資案件を確認しており、2022年の第1四半期から第3四半期までの投資総額は28億米ドルを超えました。

ただし、2022年第3四半期に投資件数と投資額が急激に減少したことには留意する必要があるでしょう7。これは大手テクノロジー企業の新製品発表の時期と重なったことが理由かもしれません。非財務データに関する規制報告要件の導入が世界中で進んでいることから、データインテリジェンスに対する顧客の需要は今後も高まると投資家は予想しています。

気候変動データインテリジェンス分野のスタートアップへのグローバル投資の額と件数
Year 投資額(10億米ドル) 投資件数
2018 493318952 93
2019 532984739 115
2020 488091834 147
2021 2588842486 157
2022* 2853561654 113
  • 投資額(10億米ドル)
  • 投資件数
* 部分データ
出典:PwC「2022年版気候テックの現状」、PwCによるPitchBookデータの分析

もう1つの例として、炭素の回収・利用・貯留についても考えてみましょう。この分野は長年、投資も成長も控えめな水準にありましたが、2022年の投資額は第1四半期から第3四半期までの合計ですでに2021年通年のほぼ2倍に達しています。2022年の投資件数は2021年より少なかったものの、レイターステージのベンチャー投資が増加しており、平均投資額も増えています。この成長を牽引したのは政策コミットメントと炭素市場の将来の規模に関する予測です。

しかし、炭素の回収・利用・貯留技術が二酸化炭素排出量の削減に貢献する可能性や、パリ協定の目標を達成するために科学者が必要だと考えている二酸化炭素の除去量を考えると、現在の市場規模は依然として小さいと言わざるを得ません。2022年第3四半期は投資案件が比較的少なかったことを考えると、このセクターの投資案件は増やしていく必要があります。

二酸化炭素回収・利用・貯留分野のスタートアップへのグローバル投資の額と件数
Year 投資額(10億米ドル) 投資件数
2018 284310460 31
2019 145257684 39
2020 468060978 33
2021 909763952 54
2022* 1567309697 30
  • 投資額(10億米ドル)
  • 投資件数
* 部分データ
出典:PwC「2022年版気候テックの現状」、PwCによるPitchBookデータの分析

本調査に関する主なデータ

0社以上 追跡した気候テックスタートアップの数

0億米ドル以上 2018年第1四半期から2022年第3四半期に実施された気候テック投資額

0億米ドル以上 2022年第1~第3四半期の気候テックへの投資額

-0% 2021年第1~第3四半期と2022年第1~第3四半期の投資伸び率

0件以上 2018年以降に追跡した気候テック投資の案件数

0人以上 2019年以降に特定されたユニーク投資家

0 2018年以降の大型投資(1億米ドル以上)

0社以上 直近の取引日現在、評価額10億米ドル以上の気候テックスタートアップ

効率性の低い市場における気候分野のアウトカムへの投資

政府や民間の取り組みによって投資額は増える可能性がありますが、ネットゼロ気候目標の達成期限が迫っていることを考えると、特にアーリーステージ投資と、高い排出量削減効果が期待される技術への注目を高める必要があります。

第一の問題は、小型案件(主にアーリーステージ投資)の件数と総額が2021年以降、減少し続けていることです。その一方で、500万~10億米ドル規模の投資案件(主にレイターステージ投資)は好調に推移しています。その結果、気候テック市場とベンチャーキャピタル投資全体は停滞しているにもかかわらず、全体的な投資額と案件数はそれほど落ち込んでいません。

10億米ドル以上の大型案件は、2018~21年のほとんどを通じて、20億米ドルから50億米ドルの間で推移しました。今年は大型案件が減少し、上半期は1件もありませんでした。2022年第3四半期は案件数が急激に盛り返したものの、過年度と比べると、平均投資額は大幅に少なくなっています。株式市場全体が減速していることを考えれば、これは驚きには値しないでしょう。

この傾向は厄介です。ファンドのドライパウダー(まだ投資に回されていない待機資金)は依然として高い水準にあるものの、気候テックスタートアップへのアーリーステージ投資の案件が増えない限り、この資金が有効に活用されるかは分からないからです。PwCが話を聞いたあるファンドマネージャーは、初期の資金調達ラウンドを超えてレイターステージにまでたどり着く、投資価値のある質の高いスタートアップは十分に存在しない可能性を指摘しました。初期のプレシード期の投資と、シリーズA、Bレベルの投資の間にあるこの断絶を、PwCはアーリーステージのスタートアップの「死の谷」と呼んでいます。

その理由については、さらなる調査が必要ですが、投資家からはESGファンドのレポーティング要件の負担が大きいことや、初期の資金調達ラウンドを対象としたファンドは、取引コストをカバーできるだけのスケールメリットを実現できない可能性があるという指摘が繰り返し聞かれました。ある投資家の言葉を借りれば、「非倫理的(dirty)」な投資家はファンドを設立し、運用するだけですが、「倫理的(clean)」な投資家は膨大な数の規制や政策ガイドラインに目を通し、その遵守に時間とスキルを費やさなければならないのです。

2つ目の課題はインパクトに関するものです。PwCは、この課題を「セクター」「技術」という2つの観点から分析しました。セクターレベルでは、2021年のレポートで初めて指摘したように、気候テック分野の投資件数は今も各セクターが排出する温室効果ガスの量と比例していません。しかし緩やかながらも改善の兆しは見られました。

昨年の調査では、モビリティは世界の温室効果ガス排出量の16%を占めているにすぎないにもかかわらず、投資総額の61%を受け取っていることが分かりました。しかし最新の温室効果ガスの排出データによると、今年はモビリティが世界の温室効果ガス排出量に占める割合は15%だったのに対し、気候テック投資の総額に占める割合は48%でした。つまり、温室効果ガス排出量の残り85%を生み出しているモビリティ以外のセクターが、気候テックへの投資総額の半分以上を受け取っていることになります(昨年はわずか39%)。

セクター別の排出量と投資額の比較は直感的で有益な指標ですが、個別のソリューションの排出量削減効果、削減コスト、ベンチャー投資への準備度などは考慮されていません。技術の観点から見た場合も、状況はあまり変わりません。

技術の成熟度と潜在的な排出削減効果(すなわち将来的な気候インパクト)の比較結果は、この市場はまだ気候目標の達成に貢献できるだけの効率性を備えていないというイメージをさらに強めるものとなっています。食品廃棄物関連の技術や二酸化炭素を回収・除去するようなソリューションは、さまざまな理由から今も相対的に資金不足の状態にあります。パリ協定の目標の達成可能性を維持するためには、排出量を削減できる可能性が最も高い技術と、排出量に短期的な影響を与えられる程度に先進的な技術の両方に、資金が流れるような環境を整備する必要があります。

その区別は非常に重要です。ある投資家が指摘したように、リスクの上昇、外部性の価格、排出量の増加がもたらす悪影響を考慮に入れれば、二酸化炭素を今日1トン削減することが、明日1トン削減するよりも大きな影響をもたらすことは明らかです。核融合燃料や水素燃料のようなネットゼロ技術は究極の目標ですが、その効果はすぐには現れません。「移行技術」と呼ばれる技術、例えば炭素回収のような、間もなく成熟するとみられる技術、または成熟した技術、すぐに規模を拡大できる技術への関心を失うべきではありません。

社会が2030年までに排出量を半減させる方法を模索する一方で、公平かつ公正な移行を実現するためのソリューションや構造改革についても、さらに議論を重ねることが求められます。気候テック投資を拡大し、トップレベルだけでなく、さまざまなセクターやソリューション、さまざまな規模のスタートアップ、成熟度の異なる技術に広く投資していく必要があります。2022年第3四半期の投資の落ち込みを取り返すことができなければ、パリ協定の目標はすぐに手の届かないものとなってしまうでしょう。


短期間で高い削減効果を上げられる分野を中心に、気候テックへの投資を拡大する必要があります。今年の投資の落ち込みが、特にその長期的な影響を考えれば、懸念材料であることは間違いありません。しかし投資家や政策立案者、その他のステークホルダーが今も投資を加速させる意欲を失っていないことを示す兆しも存在しています。

脚注

[1] The six policy priorities of the von der Leyen Commission、欧州議会(2022年9月)
[2] China Is the Growth Engine of World’s Low-Carbon Spending | BloombergNEF、BloombergNEF(2022年2月)
[3] Three laws will triple US climate change spending over the next decade 、世界経済フォーラム(2022年9月)
[4] FACT SHEET: Biden-Harris Administration Proposes New Standards for National Electric Vehicle Charging Network | The White House、The White House(2022年6月)
[5] https://www1.nyc.gov/site/sustainablebuildings/ll97/local-law-97.page
[6] https://ww2.arb.ca.gov/sites/default/files/barcu/board/books/2022/082522/prores22-12.pdf
[7] データの収集に遅れが生じているため、現在記録されている2022年第3四半期の案件は、実際の市場活動よりも小さく見積もられている可能性があります。しかしデータセットの網羅性が高まっても相当規模のずれは残ると予想されます。

Emma Cox、PwCのグローバル気候リーダー。官民両セクターで幅広い気候関連プロジェクトに従事。PwC英国のパートナー(ロンドン在住)。

Will Jackson-Moore、PwCの新しいグローバルESGリーダー。PwC英国のパートナー(ロンドン在住)。

Leo Johnson、PwC英国のディスラプション&イノベーションプラクティスのリーダー。BBCラジオ4の番組「Hacking Capitalism」のプレゼンター。PwC英国のパートナー(ロンドン在住)。

Tarik Moussa、サステナビリティとイノベーションの接点に関するアドバイザー。PwC英国のシニアマネージャー(ロンドン在住)。

本稿の執筆に当たっては、Vish Arora、Millie Foakes、Matthew Gilbert、Eleanor Gill、Veda Karandikar、Jacob Leigh、Chen Li、Louis Maeyart、Rebecca Osmaston、Liana Riley、Laura Russell、Tabea Stoeckel、Amelia Taylor、Beatriz Torres、Jessica Wrigleyの協力を得ました。この場を借りて感謝します。

※本コンテンツは、Overcoming inertia in climate tech investingを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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