
LIBOR移行対応アップデート―ハイライト(2022年6月1日~7月15日)
今号ではFRBが公表したLIBOR法の施行案、英国FCAによる英ポンドシンセティックLIBORの公表停止時期にかかる市中協議のほか、米ドルシンセティックLIBORを巡る議論について取り上げます。
今号ではFRBが公表したLIBOR法の施行案、英国FCAによる英ポンドシンセティックLIBORの公表停止時期にかかる市中協議のほか、米ドルシンセティックLIBORを巡る議論について取り上げます。
米国連邦準備制度理事会(FRB)は、調整可能金利(LIBOR)法の施行案を公表しました。コメントの提出期限は連邦官報での公表後30日以内となっています。FRBは、同法の要件に沿って、適切なフォールバック条項がない契約に関し、2023年6月30日以降、米ドルLIBORの参照を置換する、一連のスプレッド調整後担保付翌日物調達金利(SOFR)ベースの代替金利指標およびその慣行(コンベンション)を提案しています。フォールバックは、代替金利指標を選択する決定当事者が指定されているものの、実際にはそのような対応をしていない契約にも適用されます。なおフォールバックは、契約当事者がLIBOR法の適用除外を相互に合意している場合には、適用されません。
提案されている代替金利指標は、米ドルLIBORベースの新規契約におけるフォールバックに関する代替参照金利委員会(ARRC)の既存ガイダンスとリスク・フリー・レート(RFR)の使用に関して進展してきたコンベンションに沿ったものです。LIBOR法に規定されているように、全ての金利指標はSOFRに基づき、SOFRと米ドルLIBORとの経済的な差異を考慮したスプレッド調整を含みます。スプレッド調整の値は、国際スワップデリバティブ協会(ISDA)がIBORフォールバックプロトコルの一部として定めた値と同じです。
FRBは、異なる資産クラスで提案されているSOFRベースの金利指標の種類や、最終規則においてさらに明確にすべき事項など、一連の技術上の実施課題についてコメントを求めています。例えば、本提案では、規則の適用範囲(スコープ)や(金利指標の)決定者にかかる通知期間の要件、何がベンチマークの適合性の変更に該当するかなどについて、さらなる明確化が必要であると想定しています。
また仮に英国金融行為規制機構(FCA)が、2023年6月以降にシンセティック米ドルLIBORの公表を強制することを決定した場合、米国法に準拠する特定の契約がシンセティック米ドルLIBORを参照することを事実上阻止する規定案についても意見を求めています。この提案については、次のセクション(2.シンセティック米ドルLIBORにかかる課題)で詳しく解説します。
FRBによるLIBOR法の施行は、米ドルLIBOR移行において残された最大のパズルのピースとなります。また、数兆米ドル規模の既存契約に影響を及ぼす可能性が高いこの解決策について、市場参加者が意見を述べることができる残された最後の機会の一つでもあります。これまでの多くの協議と同様、金融機関は、組織内の関係者全員の意見を引き出すよう留意する必要があります。FRBの規則の詳細は、契約の経済性に直接的な影響を与えるだけではありません。市場参加者は回答を準備するにあたり、業務プロセスやシステム機能への潜在的な影響だけでなく、法的な影響も慎重に検討する必要があります。
FRBが提案するスプレッド調整を含んだ代替金利指標とコンベンションは、市場参加者の期待に沿ったものであると思われますが、それでもフォールバックとして立法による解決策を採用するには、企業側である程度の分析と準備が必要です。例えば、ローンとそれに対応するスワップからなる組み合わせ契約は、異なるコンベンションの下でのSOFRベースのフォールバックに移行することになります。このような状況や、またその他の状況により、計算される利息額やキャッシュフローのタイミングに差異が生じる可能性があります。商品単位で見れば比較的小さい差異になると思われますが、そのような商品を多数保有する市場参加者は、結果として生じるミスマッチを管理するための計画を策定する必要があります。
個人向けの金融商品の移行期間は、かなり以前よりARRCが推奨していたものであり、最終的にLIBOR法にも盛り込まれることになりました。一方で、全ての市場参加者が、必要な計算をどのように実行するか熟考しているとは言えません。例えば、個人向けローンの日次補間は、一部の市場参加者において課題となる可能性があります。
契約に適切なフォールバック条項が含まれているか否かにかかわらず、可能な限り、積極的にエクスポージャーの修正を行うことが契約移行において望ましい道筋であることはこれまでと変わりません。特にビジネスローン契約では、契約修正のプロセスが困難であることが明らかになっています。しかし、今から可能な限りポジションを修正または決済するためのプロセスとリソースの整備に尽力することは多くの利益をもたらすでしょう。市場参加者が契約移行の経済的結果をコントロールできるようになるだけでなく、多数の契約について、契約上の合意であれ、法律による指示であれ、フォールバックに依存すると、手作業のプロセスに広く依存する必要が出てくる可能性があります。また、LIBOR環境下で業務を継続することに伴う追加コストを考慮しなければなりません。流動性が代替金利指標に着実に移行していることから、LIBORローンのヘッジにはますますコストがかかると予想されています。
英国FCAは、シンセティック英ポンドLIBORの1カ月および6カ月物について、当初予定していた2022年12月末ではなく、2023年3月末に公表停止する計画に関する市中協議を発表しました。2021年末にパネル銀行による英ポンドLIBORの提出が終了したことを受け、FCAは、計算ベースの手法を用いた金利指標の継続的な公表をICE Benchmark Administration(IBA)に義務付けています。この結果、シンセティック英ポンドLIBORは、英ポンドLIBOR公表停止前に移行できなかった残りのレガシーエクスポージャーのみが参照することができるようになっています。
また、英国の銀行監督当局は、2023年6月の米ドルLIBORの公表停止予定日以降、シンセティック米ドルLIBORの継続的な公表をIBAに義務付けることが適切かどうかについても意見を求めています。FCAは、シンセティック米ドルLIBORの公表についてまだ決定はしていないものの、現在、明確な移行経路がない残りの米ドルLIBORエクスポージャーの規模や性質を把握しようとしています。
先般開催されたLIBOR移行の残りのステップに関する会議で、FCAのNikhil Rathi最高責任者は、シンセティックLIBORはあくまで「つなぎ」の仕組みとして考慮されるべきであると繰り返しました。市場参加者は、移行経路が明確でないタフレガシー契約の具体的かつ詳細な例を示すよう促されました。
この会議においてARRCは既存のLIBORキャッシュ商品の移行に関するガイドを公表しました。この文書には、市場参加者がさまざまなキャッシュ商品のフォールバックを実施しようとする際の、契約条項の分析、契約の修正、取引先とのコミュニケーションに関する一連の検討事項が含まれています。また、フォールバック条項の種類と適用される準拠法を受けて、さまざまな種類の契約に関する結果を説明する参照表も含まれています。米ドルLIBORが公表されなくなった場合、米国法の適用を受ける契約は、契約のフォールバック条項に従って代替金利指標に移行することになります。
そのようなフォールバック条項がない場合、契約は現在施行されている法的措置に従うことになります。しかし、FCAがIBAに対し米ドルLIBORのシンセティックベースでの継続公表を義務付けることを決定した場合、米国法の適用を受ける契約であっても、シンセティック米ドルLIBORを参照する可能性も考えられます。米ドルLIBORの残りのテナーは2023年6月30日以降に代表性を喪失すると既に宣言されているため、停止前トリガーを含む契約は、おそらく影響を受けないでしょう。一方、そのような停止前トリガーがない契約については、シンセティック米ドルLIBORが既存のチャネルを通じて公表され続けるため、結局はシンセティック米ドルLIBORを参照することになる可能性があります。
FRBは、LIBOR法の施行案の一部として、停止前トリガーの問題に取り組むことを提案しています。適切なフォールバック条項を欠く契約における米ドルLIBORの法定代替金利指標を設定することに加え、その推奨する代替金利指標の範囲外にある米ドルLIBORベースの契約、すなわち有効なフォールバック条項を含む契約に適用する規則を提案しています。この規定では、停止前トリガーを含むかどうかにかかわらず、これらの契約において合意されたフォールバック条項を2023年6月以前に発動することが義務付けられます。これにより、米国法の適用を受ける契約が、2023年6月30日以降、シンセティック米ドルLIBORを参照することを事実上回避させることになります。
2022年初めにLIBOR法が成立したことで、現在、米国法の適用を受ける大半の既存契約の移行経路は明確になりました。しかしながら、金融取引において米ドルLIBORが広く使用されていることを踏まえると、米国法の適用を受けない契約や証券におけるエクスポージャーが残っているはずです。シンセティック米ドルLIBORは、そのような契約に対して代替的な解決策を提供するものであり、そのアプローチを支持する声は大きくなっていくものと思われます。
しかし、完全に有効なフォールバックを含む契約の中でも、最終的にシンセティックLIBORを参照することになるものもあると思われ、多少の混乱が生じる可能性があります。ARRCのプレイブックは、契約に含まれるフォールバック条項と準拠法のさまざまな組み合わせによる契約の複雑さと起こり得る結果について説明しています。FRBの提案は、米国法に基づくあらゆる契約がシンセティックLIBORを参照する可能性を大きく引き下げることで、起こり得る結果の幅を限定するものです。契約がシンセティックレートを参照しないようにすることで、潜在的な法的リスクも抑えることができるでしょう。米国規制当局は以前、米国市場の訴訟の枠組みが異なることを理由に、米国市場向けのシンセティックLIBORの利用について警告を発し、このレートを参照する契約は法廷で争われる可能性があることを示唆していました。特に、金利指標の構築・計算方法に関する条項を含む契約は、法的な争いの対象となる可能性があります。
米国法の適用を受けない契約については、その他の法域の立法者がLIBORを参照する既存契約に対応する法的解決策を導入する可能性もあります。例えば、欧州委員会は、適切なフォールバック条項を欠く契約について、米ドルLIBORの法定代替金利指標を決定する可能性があり、これはスイスフランLIBORに対して制定された法律と同様です。このような契約がシンセティック米ドルLIBORを参照できるかどうかは、停止前トリガーなど、特定の契約上の規定に依存することになります。
当然ではありますが、これらはいずれも法的助言とみなされるべきではありません。金融機関は、シンセティック米ドルLIBORが契約に与える潜在的な影響について、契約条項、準拠法およびその他の要因に応じた複数の可能な組み合わせの下で弁護士と協議する必要があると考えられます。ローン契約では(しばしばオーダーメイドの)契約条項が非常に多様で複雑であることを考慮すると、これまで以上に、契約条項に関する詳細な理解が必要と言えます。
もちろん、FCAが最終的にシンセティック米ドルLIBORの公表を義務付ける決定を下すかどうかは定かではありません。これまで監督当局は一貫して、シンセティックLIBORを、移行において「乗り越えられない障壁」に直面するレガシー契約のために用意された最終手段であると説明してきました。契約修正に全保有者の同意が必要な債券発行は、引き続きこの最も顕著な例でしょう。
FCAは、過去にも、また、最近のFRBのイベントにおいても、シンセティックLIBORは、想定よりも進展が遅い移行作業に対する解決策、あるいは、複雑な契約によってもたらされる大規模な修正作業の負担への単なる軽減策として機能させるべきではないことを明確にしています。
既存のLIBORベースのキャッシュ商品に関するARRCのプレイブックには、Depository Trust Company(DTC)の法的通知システム(LENS:Legal Notice System)の拡張に関する最新情報が含まれています。 LENSは、発行体、計算代理人、その他の関係者がDTC適格証券に関連する契約上の変更を投資家に通知するために一般的に使用されているプラットフォームです。
ARRCは、通知の非構造的かつ非標準的な性質により、「既存のLENSプロセスでは、全ての市場参加者が今後の変更について確実に知ることができない」と指摘しています。ARRCは、DTCや他の市場参加者と協力し、契約上の金利指標の変更に関連する情報を「構造的かつ調和的な方法で」伝達しアクセスできるようにするため、ワークフローと日付構造に関する変更を提案しています。
発行体や支払代理人は、少なくとも米国法の下で発行された多くの米ドル建て証券について、投資家への通知伝達を容易にするソリューションを歓迎すると考えられます。しかし、コミュニケーションはパズルの1つに過ぎず、支払代理人は、修正されたキャッシュフローを実際に通知するために必要なプロセスを開発しなければならないでしょう。
以前のARRCのガイダンスでは、金利指標の変更の少なくとも6カ月前に投資家に通知することを推奨していました。ソリューションがまだ開発中であることを踏まえると、2022年末までに機能を拡張して取引先とコミュニケーションを行うには、残り時間が短い可能性があります。前述したように、契約条件や要件を詳細に理解することは、発行体と支払代理人にとって必要不可欠です。コミュニケーションの具体的な内容は、特定の契約条件だけでなく、2022年3月15日から180日以内に予定されているFRBのLIBOR法施行の詳細にもよるでしょう。LIBOR移行においては一貫して、事前の計画が望ましいと言えます。
欧州マネーマーケット協会(EMMI)は、フォワードルッキングなターム物ユーロ短期金利(€STR) “Efterm”のベータ版の公表を開始しました。EMMIは、さまざまなキャッシュ商品で金利指標として広く使われているEURIBORのフォールバック金利指標としての適合性について、近く市中協議を行う予定です。EURIBORを直ちに公表停止する計画はないものの、監督当局とユーロRFRのワーキンググループ(WG)はともに、EURIBORベースの契約に頑健なフォールバック条項を含める重要性を以前から強調しています。
他のRFR向けに開発されたフォワードルッキングなターム物RFRと同様に、Eftermは€STRベースの金利デリバティブおよび先物契約の価格から導出されています。1週間から2カ月までの5種類のテナーがあるこのレートは、説明と情報取得のために作成されており、現時点では金融契約において参照されるべきではありません。
ユーロのRFRに関するWGの会合の直前にEftermが発表されたことは、多くの市場参加者にとって驚きだったものと思われます。WGは以前、フォワードルッキングなターム物€STRの開発に関心を持つベンチマーク管理者を招き、その方法論と進捗状況について説明をさせていましたが、一方で特定の管理者やベンチマークを支持する公式な推奨は行わないと表明していました。
EMMIのターム物は最初に登場したものですが、他の管理者が構築したターム物も後に続くと考えられます。最終的に市場参加者は、ターム物€STRを、いくつもの選択肢から評価し、選択することができるようになるでしょう。さまざまな選択肢がある一方、正式な承認がない中で、市場参加者は、自らの選択を取引相手にどのように伝えるかを慎重に検討しなければなりません。特に、EURIBORに基づく契約を締結している多くの個人顧客は、これまでの金利指標改革の取り組みについてほとんど把握していないかもしれないのです。
ARRCは、米ドルLIBOR ICEスワップレートを参照する契約に関する推奨を公表しました。この契約は連邦政府の「タフレガシー」法の適用範囲外であることから、市場参加者は、転換、ハードワイヤードによるフォールバックの組み込み、買い戻しのいずれかを通じて、契約を積極的に修正するよう奨励されています。このフォールバックは、スプレッド調整された米ドルSOFR ICEスワップレート(SOFR ISR、IBAが2021年11月に発表)とSOFRとLIBORスワップのコンベンションの違いを考慮するための多くの調整を採用した数式に基づいており、ARRCが以前、市中協議を行ったものです。
ARRCの推奨を受けて、ISDAはISDA 2021 Fallbacks Protocolの追加モジュール(サポートFAQを含む)を公表し、当事者がプロトコルの対象となる取引に推奨フォールバックを効果的に組み入れることができるようにしています。ISDAはまた、他の特定のレガシー取引へのフォールバックの組み込みを容易にする最新の修正書式(amendment form)、スワップ金利フォールバックに関連するさまざまなモジュールと修正書式の差異の概要を発表しています。
以前、米ドル以外の通貨でICEスワップレートを参照する契約については、デリバティブ取引を修正するためのプロトコルは必要ないと示唆されていました。今、より大きな米ドルエクスポージャーの移行へと向かう中で、プロトコルベースのソリューションに対する意欲に変化が起きているのは明らかです。全てのフォールバックと同様に、提案されたソリューションは不完全ではあるものの、それでも合理的な近似値を示しています。そしてより重要なのは、デリバティブの形でLIBORスワップ金利のエクスポージャーの保有者に運用上のソリューションが提供されることです。
スワップ金利が仕組債のクーポンペイオフに組み込まれているようなポジションについては、さらなる努力が必要と思われます。そのような契約はISDAプロトコルを利用することはできません。また、米ドルLIBOR(LIBORスワップレートではなく)にのみ適用される連邦法の範囲外です。
移行に関連する多くの問題と同様に、業界のソリューションは、市場のかなりの部分に対して変化を促す強力なツールとなります。しかし、市場参加者は、それらの解決策が自社の商品に直接適用可能であるかを確認し、必要に応じて代替的な解決策を開発する必要があります。
ISDAが最近開催したLIBOR移行に関するフォーラムでは、最高経営責任者のScott O’Maliaによる開会の挨拶、FCAの市場政策責任者による基調講演のほか、LIBOR移行の残りのステップ、タフ・レガシー・エクスポージャー、米ドルLIBORに代わる選択肢に関するパネルディスカッションが行われました。
このイベントの模様はISDAのTwitterアカウントに投稿されており、今回はその一部を紹介します。
今後1年間は、2023年6月末の期限までに残っている米ドル#LIBORエクスポージャーの移行を優先させることが重要です。多くの場合、#SOFRまたは他の代替金利指標を使用することが唯一の現実的な選択肢となります。
Scott O’Malia氏
RFRへの移行は実に順調に進んでいます。2021年初めの時点で、英ポンドLIBORを参照する契約は30兆ポンド相当あると推定されていました。移行後の私たちの推定は、30兆ポンドの1%未満となっています。
Helen Boyd氏
米ドルLIBORを参照する既存契約への対応は順調に進んでいると理解しています。英ポンドLIBORの移行を受けて、人々には移行への青写真があります。シンセティックLIBORが米ドルで利用できるようになることに頼るべきではありません。
Helen Boyd氏
一部の法域では、複数の金利が存在する場合があります。これは特徴の一つであり、私たちは流動性の開発を継続する必要があります。ユーザーが最も効率的で流動性の高い金融商品を求めていることが分かるでしょう。
Dixit Joshi氏
私たちは現状に甘んずるわけにはいきません。米ドルLIBORの移行は、他の4つの通貨を合算した場合と同規模であり、間違いなくより複雑な市場です。私たちは顧客と協力し、適切な移行を支援し続けなければなりません。
Dixit Joshi氏
タフレガシー契約に対する法制上の解決策はかなり複雑であり、またそれが互いにどのように影響するかも煩雑であるので、可能であれば事前移行するか、契約書にフォールバック文言を用意しておく方が容易でしょう。
Janet Wood氏
デリバティブにおけるターム物 #SOFRの使用は、ターム物SOFRを参照するローンなどのキャッシュ商品への直接ヘッジに限定されます。ディーラーがより効率的にヘッジできるよう、ターム物 SOFR がより広範に使用できるようになるとよいのではないかと考えます。
Tamsin Rolls氏
ターム物SOFRデリバティブのフローは、全て一方通行になっています。ディーラーが翌日物SOFRでヘッジしているのは、ターム物SOFRのデリバティブでの使用が制限されているためです。ディーラーはどこかの時点でそのリスクをどの程度まで許容できるかを考える必要が出てくるでしょう。
Guillaume Helie氏
金利市場の全てのボリュームは、特にカーブのフロントエンドで増加しています。SOFRには、LIBORよりも金融政策に影響を受けるという利点があります。
Guillaume Helie氏
パネルディスカッションでは、米ドルLIBOR以外の移行で得られた多くの学びが紹介されました。その中で最も重要なのは、代替金利指標への契約移行の影響に対する確実性とコントロールを維持するためには、積極的な修正措置(proactive remediation)が依然として唯一、最良の解決策であることです。特に、米ドルLIBORのポジションの中には、公表停止後にさまざまな問題を引き起こし得るものが残っている可能性が高く、この点は変わらないと思われます。しかし、米ドルLIBOR市場全体の規模を考えると、一見小さなエクスポージャーであっても、重大な問題を引き起こすおそれがあります。
米ドルLIBORの代替金利指標に関しては、さまざまな形態のSOFRが現時点での主要な米ドル変動金利として定着していることが次第に明らかになってきています。同時に、ターム物SOFRの利用については、主にデリバティブの利用制限と、その結果としてディーラーがユーザーに転嫁しなければならないヘッジコストへの影響についての課題が残されています。しかしこれらの課題は、まったく予期されていなかったわけではありません。このような想像されていた懸念が現実のものとなった今、既存のガイダンスの見直しを求める声が大きくなると予想されます。
※本コンテンツは、PwCが2022年7月に発刊した「LIBOR Transition Market update: June 1-July 15, 2022」の一部を抜粋し翻訳したものです。
今号ではFRBが公表したLIBOR法の施行案、英国FCAによる英ポンドシンセティックLIBORの公表停止時期にかかる市中協議のほか、米ドルシンセティックLIBORを巡る議論について取り上げます。
今号では、カナダ銀行間取引金利(CDOR)の公表停止の発表と米ドルLIBORスワップの事前転換について解説します。
今号では米国財務会計基準審議会が発表したLIBOR移行ガイダンスの「サンセット日」を2022年12月31日から2024年12月31日に延長し、ヘッジ関係で使用できる金利指標のリストを修正し、SOFRに基づく金利を追加する提案の公開草案について取り上げます。
今号では米国におけるLIBOR法案の可決と、米国フェデラルファンド(FF)金利の引き上げによるSOFRレートの動き、ISDAのイベントにて業界関係者より発信された米ドルLIBORの公表停止に向けた対応などにかかるコメントを取り上げます。