進捗は緩やかであり、飛躍的な変化が必要 ネットゼロ経済指標2024
2023年に世界が達成した脱炭素化率はわずか1%であり、過去10年間で最低の水準に落ち込みました。ネットゼロという意欲的な目標を達成するためには、即時かつ大胆な行動が官民に求められています。
日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指し、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減する目標を掲げて、目標達成にむけて再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入が進められています。
2011年から開始した固定価格買取制度(FIT制度)を背景に、太陽光発電を中心に地域への再エネの導入が進みました。しかし、今後さらなる再エネ導入推進のためには、メガソーラーなどの大型の再エネだけでなく、比較的小規模な再エネを地域へ導入することが必要になります。
本稿では、地域への再エネ導入における課題と解決の方向性を整理したうえで、地域への再エネ導入が推進されるモデルを考察し、導入推進に有効な手法が地域主導の“ボトムアップ型再エネ導入”であることを明らかにします。また、同手法が普及するための具体的な施策についても整理します。
近年、地域への再エネ導入では、災害リスク増加や景観棄損、地域を無視した再エネ開発への反対などトラブルの発生が相次いでいます。このような状況により、再エネと地域の関係性の見直しが迫られています。
関係性を見直すうえで最も重要な論点の1つは「“地域が”再エネとどう向き合うか」です。現在は地域と再エネの関係性は一方的であるといっても過言ではありません。実際、地域の再エネへの関与が希薄なために、災害リスクなど地域における直接的なリスクの増加だけでなく、地域資源を用いた再エネによって生じる経済的・社会的便益の多くが地域に還元されていない状況が生じています。このような現状を踏まえた上で、今後ますます進む地域への再エネ導入に対して、それぞれの地域において、その向き合い方を考えていく必要があります。
本稿がそのきっかけとなり、地域への再エネの導入推進の一助になれば幸いです。
1章では、日本における再エネ導入の現状を踏まえたうえで、地域への分散型再エネ導入には「事業の収益性の向上」と「再エネに対する地域の社会的受容性の向上」の2つの課題があると整理しています。
2章では、その2つの課題の解決の方向性として、「再エネの新たな価値の捕捉」と「地域における社会的信頼性の向上」の必要性を指摘しました。また、それらの解決の方向性をもとに地域への分散型再エネ導入推進モデル(図表)を考察しています。
3章では、地域への再エネ導入に有効な手法が地域主導による“ボトムアップ型再エネ導入”であることを明らかにしています。また国内外における同手法の動向についても整理しています。
4章では、“ボトムアップ型再エネ導入”のさらなる普及のための具体的な施策として、地域における推進主体の発掘や地域の実情を踏まえた事業化にむけた支援の必要性について考察します。
1章 日本における地域への再エネ導入推進の課題
(1)日本の再エネ導入の現状
(2)地域への再エネ導入の課題
(i)課題①:分散型再エネ事業の収益性の向上
(ii)課題②:再エネに対する地域の社会的受容性の向上
2章 地域への分散型再エネ導入推進モデル
(1)分散型再エネ事業の収益性を向上させるには
(i)再エネ事業による地域にとっての新たな経済的価値の捕捉
(ii)新たな経済的価値による事業の収益性の向上スキームの構築
(2)地域の社会的受容性を向上させるには
(i)手続き的正義の担保
(ii)分配的正義の担保
(iii)再エネ事業への信頼の獲得
(3)地域への分散型再エネ導入推進モデル
3章 地域への再エネ導入推進に有効な「ボトムアップ型再エネ導入」
(1)地域への分散型再エネ導入推進モデルに適する導入形態
(i)地域への再エネ導入形態の類型化
(ii)再エネ導入推進モデルに適する導入形態の特定
(2)ボトムアップ型再エネ導入の特徴と現状
(i)ボトムアップ型再エネ導入とコミュニティパワー
(ii)ボトムアップ型再エネ導入における国内外の動向
4章 ボトムアップ型再エネ導入の普及にむけた具体的な施策
(1)ボトムアップ型再エネ導入におけるステークホルダー
(2)事業推進の担い手に誰がなり得るか
(3)事業推進の担い手を「発掘」するとは
(4)事業推進の担い手を発掘するための具体的な支援
(i)関心期から準備期に移行するための具体支援
(ii)準備期から実行期に移行するための具体支援
(5)事業推進の担い手に対する具体的な支援
2023年に世界が達成した脱炭素化率はわずか1%であり、過去10年間で最低の水準に落ち込みました。ネットゼロという意欲的な目標を達成するためには、即時かつ大胆な行動が官民に求められています。
エネルギートランジションは気候変動に関わる必須課題であり、大きな投資機会でもありますが、投資には複数の障害が存在します。本稿では3つの障害とその対処方法、投資活性化にむけた政府の役割やデータ活用の重要性などを解説します。
PwCとWEFの共同調査では、企業がエネルギー需要側に働きかけることで短期間に費用対効果の高い方法で最大31%も需要を削減できる可能性があることが分かりました。本レポートでは、需要削減に向けた官民の取り組みとその実現方法について概説しています。
循環型ビジネスモデルへの移行から得られるのは、環境・社会問題の解決などの非財務的なメリットだけではありません。PwCがエレクトロニクス業界を対象に行った本調査では、循環型ビジネスモデルは、直線型モデルに比べて事業コストを大きく削減できることが明らかになりました。