地政学的な圧力とそれに伴う規制環境の厳格化により、コンプライアンス・プログラムにおいては「規則」の側面により大きな比重が置かれる傾向にあります。一方で、本調査の結果から、企業は「規則」の順守を重視しているだけでなく、リスクを許容範囲に収めるためのモニタリングを、より重視しつつあることが明らかになりました。
2016年度調査の調査対象企業
取締役会は、適切な監督を確保するために、コンプライアンス・企業倫理委員会を設置することが必要であるとの考えが普及してきています。取締役会においては、監査委員会がコンプライアンス・企業倫理プログラムを監督するとしている企業が多数を占める(65%)一方で、調査対象企業の20%が、自社の取締役会において、当該プログラムの監督を目的とした個別の独立したコンプライアンス・企業倫理委員会を設置していると回答しています。この新たな傾向は、企業のコンプライアンス・企業倫理プログラムの範囲が拡大したことによってもたらされたものと考えられます。
コンプライアンス・企業倫理における「規則」の側面に焦点が当てられる一方で、倫理への関心はそれほど高まっていません。本調査では、調査対象企業の大半(56%)において最高企業倫理責任者は任命されていないという結果が得られました。企業倫理責任者としての役職の不在は、組織が企業倫理に十分に取り組んでいないことの証の一つと考えられます。コンプライアンス・企業倫理プログラムの実効性を高める上で、コンプライアンスおよび企業倫理の双方の側面に焦点を当てることが不可欠であると考えられます。
企業がコンプライアンス・企業倫理関連業務の強化に取り組む場の一つに、社内のコンプライアンス委員会が挙げられます。
企業は、業務が重複する委員会を廃止、あるいは、より理想的には一切設置しないことによって、コンプライアンス・企業倫理関連業務の効率性の追求を試みていると考えられます。