「統合思考」を理解すれば、サステナビリティ経営が見えてくる

本稿を読むことのメリット

  • サステナビリティやESGの考え方の基礎にある「統合思考」が理解できる
  • 「サステナビリティの要素」を経営の根幹に組み入れることの必然性がわかる
  • 統合報告のフレームワークが誕生した背景がわかる

いま、企業・金融機関においてサステナビリティを重視した経営への転換が求められています。

しかし経営者の多くは、「サステナビリティの潮流はあくまで一時の流行にすぎず、企業として相応に付き合っていく必要はあるものの、これまでの経営の在り方の根本的に変える必要性はない」と考えています。

本当に、そのままの考えでいいのでしょうか。

現在、社会から求められているサステナビリティ経営の必要性は、日本でも議論の始まった「新しい資本主義」の議論とも深く関連しています。

実は、これまで誰もが当たり前と思ってきた資本主義経済システムの在り方が大きな曲がり角を迎えようとしているからです。1970年代に始まった新自由主義の潮流が、いま根本的に見直されているとも言い換えられます。約50年ぶりに、経済・社会の仕組みが大きく変わろうとしているのです。

この大きな潮流変化を見逃さず、持続可能な企業価値向上を追求していくためには、サステナビリティやESGの考え方の基礎にある「統合思考」をきちんと理解する必要があります。

これまでも統合思考の考え方は、サステナビリティに関する書籍や論稿で解説されてきました。しかし、それらは原語を直訳したものが多く、手触り感のある理解を求める経営者には必ずしも分かりやすいものではありませんでした。

例えば、「オクトパスモデル」とも呼ばれる以下のような図表などは、統合思考に馴染みのない読者にとっては丁寧な解説が求められるものでした。

図表1 価値が創造、保全または毀損されるプロセス

そこで本稿では、「サステナビリティの要素を経営の根幹に組み入れることの必然性を論理的に理解したい」と考えている経営者の方に、原典を読み進めようとすると分かりづらい部分の多い「統合思考」を、できるだけ簡単に紐解いて解説します。

新しい時代を担う経営者にお読みいただければ幸甚です。

目次

はじめに

第1章 「統合報告」と「統合思考」の起源
統合報告のフレームワークが誕生した背景
2004年以降、英国から始まった「統合思考」
「統合報告」の4つの基本的考え方
企業が「環境・社会の変化」に対応し続けなければならない理由

第2章 10のポイントで読み解く「統合思考」の考え方
シンプルに理解するための「3つのキーワード」
統合思考の理解が深まる10のポイント

第3章 「身近な実例」で理解度を高める 
財務諸表に表れない「従業員の想いや努力」
取引先、サプライヤーにも「数字」で表せない関係性がある
市場で得られない「信頼」を獲得することが重要

第4章 統合思考で考える「気候変動問題」 
放置されがちだった自然資本の過剰消費
統合思考で「投資家」や「市民社会」を考える

第5章 ステークホルダーとの関係がなぜ重要なのか 

第6章 「新しい資本主義」が重視される背景
「株主の利益最大化」だけを優先して生じた問題点 
過去の「前提」や「常識」が通じない社会における日本政府の対応

第7章 タイプ別「サステナビリティ×経営者」の思考と課題
経営者の姿勢は3タイプに大別される
各タイプ別の課題とは?
統合思考は「プリンシプルベース」で当てはめる     

第8章 国際サステナビリティ基準審議会設立後の新しい金融の世界

おわりに

主要メンバー

田原 英俊

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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安間 匡明

執行役員常務, PwCサステナビリティ合同会社

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インサイト/ニュース

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