国内では、2012年頃からオープンイノベーションを推進するため大企業によるCVCファンドの設立が活発化しています。
本調査レポートでは、PwCが実施したアンケート調査結果を踏まえ、大企業が直面するCVCファンド運用における課題やCVCファンドを活用したベンチャー企業との事業シナジーを創出する上で押さえておくべき視点について解説します。
【図表1】自社のCVCファンドは順調であると思うか?
出典:PwCアドバイザリー合同会社調査「CVC実態調査2017」
【図表2】CVCの運用で感じている課題(CVCファンド運用期間別)
※運用開始前の回答者(n=13)は除く。既に運用を終了した回答者は「3年以上」に含む。
出典:PwCアドバイザリー合同会社調査「CVC実態調査2017」
投資そのものの目的化、投資案件ごとの場当たり的な意思決定などを回避するため、ファンド設立の「目的」の明確化が肝要です。
協業推進者のリソース充実と、経営陣による支援体制を含め、関連事業部門を巻き込んだ体制構築が必要です。
経営陣や幹部社員などが、株主意識を捨て、Give&Giveのマインドセットでベンチャー経営者と信頼関係を構築することが大切です。
ベンチャー企業の成長過程、社内リソースを踏まえ、戦略的に協業ストーリーを描くことが目的達成の近道です。
過度に市況に左右されることなく、他方を無視することもなく、事業側のニーズとのバランスを取ったCVCファンド運用が理想です。
一度や二度の失敗で撤退するのではなく、先行企業によるCVCの成功事例の積み重ねと、その運営ノウハウの蓄積・伝搬によって、知見を深めながら、中長期的な目線で、粘り強く取り組んでこそ、自社流のオープンイノベーション確立が可能です。
過熱するグローバル競争に打ち勝つ上で、日本企業にとってさらなる成長に欠かせないイノベーションを起こすためには、CVCファンドを活用し、優れた人材、革新的な技術・アイディアを持つベンチャー企業とのオープンイノベーションが、今後の成長のカギとなるでしょう。
『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2018年3月号 特集:顧客の習慣のつくり方』掲載
青木 義則
PwCアドバイザリー合同会社 パートナー
※法人名、役職などは掲載当時のものです。