日本企業におけるAI活用の可能性

―成功のカギはどこにあるのか?

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2030年までにAIによって世界のGDPは14%増加します。GDP増加分の55%が労働生産性の向上によるものであると推計されます。

その効果が最も大きいのは中国で、AIによるGDP押し上げ効果は26%、金額にして7兆米ドルに相当すると予測されます。次いで北米が15%、3.7兆米ドルとなっています。

日本におけるAI活用の現状として、実証実験は多く行われているものの、実用化に向けてはまだ時間を要する状況であることが多いです。

国内外におけるAI活用の現状を踏まえ、日本企業が直面するAI実用化に向けた課題を考察するとともに、日本企業独自のAI活用の可能性を探ります。

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海外におけるAI活用 ―北米をしのぐ、AIによる経済効果が見込まれる中国

2025年頃までは北米が市場をけん引すると予測されるものの、その後は製造技術に関するAIを中心に中国が北米に追いつき、AIが組み込まれた製品を輸出することで、GDPの拡大が加速することが予測されます。

さらに中国は、「深層学習」の論文数や資金投入量、国内でのデータ収集や戦略的なデータガバナンスなど大きな強みがあり、先に行く北米に肉薄しています。

AIの活用は製造、労働力などの業務効率化・高度化が中心となっており、業界別では「ヘルスケア」「金融」「小売」が大きな規模を占めます。

【図表1】2030年までにAIがけん引する地域別GDP押し上げ効果

2030年までにAIがけん引する地域別GDP押し上げ効果

※GDP関連の数値は、2016年実質ベースで算出。

出典:PwC「Sizing the prize」(2017.6)

日本におけるAI活用の現状

北米や中国でAIの活用が進む一方、日本を含むアジア先進国のAIによるGDP押し上げ効果は、10.4%、金額にして、0.9兆米ドルと、北米・中国のわずか10‐20%程度となっています。

日本企業においても、AIの活用領域は、マーケティングや品質管理・予知保全などといった従来から分析が行われていた領域の高度化から、人事戦略、投融資判断と言ったこれまで分析が行われていなかった領域へと広がりを見せています。

日本企業が、AI活用を実証実験段階から脱し、実用化するために乗り越えるべき課題とはどのようなものでしょうか。PwCがAI活用を検討しているクライアントとコミュニケーションをとる中で、行動原理という側面から、特に、下記3点が大きな課題であると感じています。

1.目的が不明瞭

1.目的が不明瞭

AIに関するビジネスモデル検討で相談をいただくクライアントの多くが「AIを活用するように、と経営層から指示があったが、何をすれば良いのか」と頭を抱えている。

2.現在の技術から実現できることを考えてしまう

2.現在の技術から実現できることを考えてしまう

「できること」から考えてしまうと、結局1.と同様に「実証実験をしてみたが、大して効果が出ないではないか」という結論に繋がりAIの活用に対しネガティブな影響を与えてしまい、実用化に向けた検討が進まない一因となっている。

3.「試しにやってみる」が許されない

3.「試しにやってみる」が許されない

AIは大量のデータを学習することで高度化していくが、導入初期段階では、データによる学習が不十分なので、失敗もある。失敗を許容する文化がないとAIのような革新的技術の導入は進まない。

日本企業におけるAI活用の可能性

海外の先進事例からの学びを発展させ、AIの日本独自の活用のあり方を探る

短期的には、AI研究で先行する米国、中国と同等レベルに達するのは難しいと考えられますが、人材育成、先進事例の応用など、多面的な取り組みでAI領域のケイパビリティを拡充すれば、AIの利活用で日本も巻き返しを図ることは十分に可能です。

そして、中長期的には日本独自のAI活用のあり方を創出していくことが重要です。

日本企業がこれまで培ってきた匠(たくみ)の技術やオペレーションのノウハウなどをAI技術を使って継承したり、より精巧なものに磨き上げていくことや、“おもてなし”の気持ちを備えた優れたサービスをAIによって幅広く展開していくなど、日本企業独自の新たな価値創造のあり方は存在します。海外でもAIの本格的な活用はこれからです。2018年は日本企業が実証実験を脱し、実用化へ大きく踏み出す年となるよう、PwCは戦略立案から実行まであらゆる面でご支援します。

『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2018年1月号 特集:テクノロジーは戦略をどう変えるか』

「AIは失敗からも学ぶ 知的なリスクテークを恐れず 日本企業ならではの新たな利活用を試行せよ」

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