新薬開発成功への『橋渡し』

製薬企業におけるトランスレーショナルリサーチの役割

  • 2024-04-16

多くの製薬企業では、基礎研究の成果を臨床応用につなげるためのトランスレーショナルリサーチ(Translational Research:TR)を積極的に行うようになっています。細胞治療や遺伝子治療に代表される新しい技術の進展は、創薬の標的となる領域の拡大、新たな診断、治療法の開発につながっていますが、このような高度化する新薬開発において求められる有効性と安全性を確立するには臨床分野と基礎研究分野の双方における適切な知見が両輪として必要となります。実際のところ、臨床開発では臨床試験の成功率の低下や研究開発の長期化といった課題が顕著となっており、自社の研究開発部門が単独で新薬を生み出すことは難しくなってきています。このような背景から、社内外において効果的なTRを実施することの必要性が増しています。

本稿では製薬企業におけるTRを「基礎研究の成果を臨床に橋渡しする一連の研究過程であり、新薬や新規治療の開発プロセスを合目的に効率化するもの」と位置づけ、また、その具体的なゴールを「臨床開発におけるProof of Concept(PoC)の成功確率を高めること」と定義したうえで、製薬TRの現況と今後あるべき姿について論じます。

本レポートの概要

  • トランスレーショナルリサーチ(TR)は、基礎研究の成果を臨床の場に橋渡しすることで、医薬品開発の生産性向上を図り、次世代の治療法・診断法の開発につなげる重要なアプローチです。製薬企業は、トランスレーショナルリサーチを利用して新薬開発プロセスの効率化・加速化を図り、有効な治療法の迅速な提供を目指しています(図表)。
  • TRに期待される役割はサイエンスとビジネスの両面において多岐にわたりますが、その主要な目的のひとつを「臨床開発におけるPoCの成功確率を高めること(より確実なPoCを目指せる薬剤候補を特定・準備すること)」と定義できると考えられます。
  • 実際のTRではバイオマーカー研究や薬物動態研究における重要性が強調されています。これらの研究は、新薬開発の成功確率を高めるとともに、より効果的な個別化医療の実現を目指しています。
  • 製薬企業におけるTRの価値を最大化するためには、効果的な体制構築や適切な組織構造、部門間連携の促進が不可欠です。経営者は、トランスレーショナルリサーチ部門を科学的に妥当で客観的な評価者として位置づけ、研究開発の成功に向けて生産性を高める環境を整える必要があります。
  • 製薬企業におけるトランスレーショナルリサーチ部門は製薬業界において独自の価値を提供し、新薬開発の成功に大きく貢献することが期待されます。そのためには、専門教育プログラムの確立、エキスパートの育成、十分な科学的議論の場の提供が重要です。
図表1 トランスレーショナルリサーチの概念

詳細については以下のPDFをご参照ください。

主要メンバー

堀井 俊介

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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船渡 甲太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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佐久間 仁朗

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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野畑 万葉

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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製薬企業におけるトランスレーショナルリサーチの役割―新薬開発成功への『橋渡し』

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