児童相談所における調査・保護・アセスメント機能と支援マネージメント機能の分化に関する実態把握のための調査研究

2018-04-10

調査結果概要

PwCコンサルティング合同会社は、平成29年度子ども・子育て支援推進調査研究事業で、全国の児童相談所を対象に、児童相談所の調査・保護・アセスメントなどの「初期対応機能」と、親子関係再統合・再構築支援など「支援機能」の分化に関する実態を調査しました。


1. 調査の目的

児童相談所の「初期対応機能」と「支援機能」の分化に関する実態を明らかにし、今後の児童相談所の在り方を見直す際の有益な検討材料を提供すること

2. 調査概要

(1) アンケート調査

  • 対象:全国210か所の児童相談所(支所、分室を除く)※有効回答率:92.9%(195件)
  • 期間:平成30年1月5日(金)~1月19日(金)

(2)ヒアリング調査

  • 対象:アンケート回答児童相談所のうち、地域性や組織タイプなどにより選定した10か所
  • 期間:平成30年2月15日(木)~3月1日(木)

3. 調査結果

(1)児童相談所の組織タイプ

児童相談所の組織タイプ

回答した195か所の児童相談所のうち、「初期対応」と「支援」の機能が分化している(A、B、Dタイプ、上表の太枠囲み)のは69件で、全体の35.4%の児童相談所が機能分化していることが分かった。

(2)機能分化の主なパターン

機能分化の主なパターン

A、B、Dの69児童相談所に、機能分化のパターンを尋ねたところ、最も多かったのは「初期対応」と「支援」の部署が虐待相談対応の途中で業務を引継ぎながら交代する「並走交代型」(52.2%)だった。

(3)児童相談所の組織タイプ別 管轄児童人口と虐待相談対応件数

AからEのタイプ別に、管轄児童人口と虐待相談対応件数の関係をみてみると、管轄児童人口がおおむね7万人、虐待相談対応件数がおおむね400件を超えると、AタイプやBタイプなど複雑な組織体制が採用される傾向にある。

児童相談所の組織タイプ別 管轄児童人口と虐待相談対応件数

(4)児童相談所の組織タイプ別 児童福祉司数と虐待相談対応件数

AからEのタイプ別に、児童福祉司数と虐待相談対応件数の関係をみてみると、児童福祉司の人数(正規・非正規の単純合計)がおおむね15人、虐待相談対応件数がおおむね400件を超えると、AやBなど機能分化をして複雑な組織を採用している傾向がみられた。

児童相談所の組織タイプ別 児童福祉司数と虐待相談対応件数

(5)「初期対応」と「支援」の機能を分化する理由、しない理由

虐待相談の初期対応と支援の機能を分けて組織を設置している理由について尋ねたところ、「緊急的な措置が必要な相談に対して迅速な対応が可能である」や「初期対応・支援それぞれの業務を効率的に遂行できる」を挙げた児童相談所が多かった。一方、課題としては、アンケートでは「虐待事例を引き継ぐタイミングが難しい」を挙げた児童相談所が多く、ヒアリングでは、「初期対応と支援の担当が分かれることで各担当の精神的負担が大きい」ことや、定期異動を伴う公務員であるため「人材育成や確保が難しい」点が挙げられた。

「虐待相談の初期対応」と「支援」の機能を分けて組織を設置していない理由を複数回答で尋ねたところ、アンケートでは「虐待相談だけでなく、他の相談同様に一貫した支援が可能である」が多かった。課題としては、「事例対応が長期化した時に職員の精神的負担が大きい」や「事例対応が長期化した時に職員の業務量が増える」が多く挙がった。

 

利点

課題

機能分化する

・迅速に対応できる

・効率的(特に初期対応)

・初期対応から支援までの事例引継ぎが困難

・各担当の精神的負担が大きい

・人材の確保や育成が困難

機能分化しない

・一貫した対応が可能

・総合的な相談対応力がつく

・1件が長期化すると物理的、精神的な負担が大きくなる

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東海林 崇(とうかいりん たかし)

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古屋 智子(ふるや さとこ)

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