
2021-08-25
PwCコンサルティング合同会社は厚生労働省令和3年度子ども・子育て支援推進調査研究事業の国庫補助内示を受け、下記の事業を実施します。
【事業の概要】
障害児の数は年々増加傾向にあり、令和元年度には障害児保育を行う保育所は1万8,947施設、実障害児数は7万7,982人に上っている。障害のある子どもたちが保育所などに入所することは地域社会への参加・包容(インクルージョン)の最初の一歩ともなるため、非常に重要であり、すべての子どもが障害の有無にかかわらずともに成長できるような体制、支援が求められている。
令和2年7月に「保育所等における保育の質の確保・向上に関する検討会」の議論の結果が取りまとめられたが、その中でも特別な配慮を必要とする子どもの保育については、今後検討すべき課題として「在籍期間の前後や集団の中での他の子どもとの関わり合いも含め、保育士等による関わりや環境面での工夫、職員間及び家庭との連携等について、様々な知見や事例等を多面的に収集し、それらを基に個々の子どもに応じた支援を講じていくための観点や手立てを地域や現場で共有することが重要である」とされている。
こうした背景を踏まえ、本調査においてはアンケート・ヒアリング調査を通して、障害児(いわゆる「気になる子」を含む)保育に関する取り組みについて、市区町村における受入状況などの実態および保育所などにおける保育内容や関係機関との連携状況などの実態を把握する。
「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」とりまとめ(令和3年5月27日)において、子どもの最善の利益を実現するため、子どもが意見を表明する機会が確保され、周囲の関係者が意見を聴き、適切に考慮・反映する環境が整えられることの重要性が指摘されている。とりわけ、「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会」とりまとめ(令和3年4月22日)において、一時保護は子どもの重大な権利制限であることを踏まえ、子どもの権利擁護の観点から、手続の各段階において子どもの意見表明の機会の保障や意見表明の支援を行うべきであることが指摘されている。
本調査研究は、行政権限の適正な行使を担保し、子どもの権利を擁護する観点から、一時保護の手続において、子どもの意見・意向を受け止め、必要に応じて児童相談所等と調整を図り、対応の改善を促す機能を有する第三者機関として、児童福祉審議会に着目し、先行して児童福祉審議会を活用している自治体へのヒアリング調査等を通じて、①児童福祉審議会が第三者機関として一時保護の手続に関与する具体的なフローを整理し、いくつかのパターンを提示すること、②児童福祉審議会が第三者機関として一時保護の手続に関与するうえでの効果と課題を整理することを目的として実施する。
近年、虐待相談対応件数が増加し、児童福祉司などの職員は精神的・肉体的に大きな負担を抱えていると考えられる。令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「児童相談所職員のメンタルヘルスに関する調査」では、経験年数の浅い職員が十分な支援体制のない中で困難なケースに対応せざるを得ない状況が発生していることが明らかになった。ケースにうまく対応できないことは大きな心理的負担になり得るため、経験年数の浅い職員であっても困難な場面に対応できる専門性向上のための取り組みが求められている。
また、令和2年度「児童相談所における一時保護の手続き等の在り方に関する検討会」では、一時保護に際して保護者への説明が不十分であった事例について指摘された。一時保護や児童福祉法第28条に基づく申立などは子どもや保護者の権利の制限を伴うことから適切な説明が求められるため、当該場面における対応力強化のための取り組みが必要と考えられる。
これを踏まえ、本調査研究は、2か月を超える一時保護や児童福祉法第28条申立を含む虐待事例などの困難場面における保護者対応について、経験年数の浅い職員も参照できる対応ガイドを作成することを目的として実施する。
乳幼児揺さぶられ症候群などの「虐待による乳幼児頭部外傷」は重篤な場合には死に至るものである。「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第16次報告)」においては虐待による直接の死因は頭部外傷が最も多くなっている。
令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究「児童相談所における虐待による乳幼児頭部外傷事案への対応に関する調査研究」の児童相談所へのアンケート結果では、虐待による乳幼児頭部外傷が疑われる事案への対応件数は、回答のあった児童相談所の半数以上で年間0件ないし1件という結果であった。また当該事案への援助方針を検討する上で悩んでいるという意見も寄せられた。このことから、対応実績がある児童相談所のノウハウをまとめ周知することは、各地の児童相談所がケースワークを円滑に進める上で意義のあることと考えられる。
このため、本年度の調査研究では、乳幼児頭部外傷事案への対応実績のある児童相談所へのヒアリングなどを通じて、当該事案において児童相談所職員が直面する課題や、その課題への対応例を収集する。これにより得た情報を事例集として取りまとめ、児童相談所へ周知を図る。
児童相談所に寄せられる虐待相談対応件数は年々増加しており、令和元年度には19万3,780件と過去最高を更新した。こうした背景もあり、「児童虐待防止対策総合強化プラン(新プラン)」に基づいて児童福祉司や児童心理司の増員が図られた。そして令和元年の児童福祉法などの一部改正における附帯決議では、児童福祉司1人当たりの相談対応件数が平均で40ケースを超えないよう、さらなる増員に向けた人材・財源確保に努めることとされた。
また虐待相談対応件数の増加と同様、一時保護件数も年々増加傾向にあり、児童相談所・一時保護所の業務量を逼迫させている。「児童虐待防止対策の抜本的強化について」(平成31年3月19日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)により決定された一時保護所の体制強化を進めるため、より具体的な検討材料が必要となっている。
以上のような背景から本調査研究事業では、児童福祉司や一時保護所職員の勤務実態を明らかにし、児童福祉司1人当たりの対応ケース数や一時保護所の設置運営基準などを検討する際の基礎資料を提供することを目的として実施する。
虐待防止に関する人々の意識の高まりなどにより、児童相談所の虐待相談対応件数は年々増加しているとともに、相談内容も変化してきている。相談内容においては、強い介入権限を用いるより、地域資源を使いながら保護者の「困りごと」に寄り添う支援が望ましいと考えられる通告も多く寄せられているのが現状である。
このことを踏まえ、令和元年度、令和2年度の子ども・子育て支援推進調査研究事業において、児童相談所に寄せられる通告などについて、新規に開発したチェックリストを用い児童相談所職員がケースを振り分けるシミュレーションが実施された。さらに、通告窓口の一元的運用における「1. 前提となる考え方」「2. 振り分け方」「3. 対応体制」「4. 対応フロー」の4つのモデル案が構築された。
こうした背景を踏まえ、本事業においては、児童相談所および市町村が合同で通告ケースの振り分けを行う。合同振り分けを通じ、ケース振り分け案が児童相談所・市町村の双方にとって違和感ない振り分け先となっているか、チェックリストの内容が市町村にとって違和感がないか、市町村と児童相談所が同じ結果を導き出せるか、通告の一元的運用に対して児童相談所および市町村間に共通理解を構築できるかなどを検証する。
近年、虐待相談対応件数は増加しており、児童相談所の児童心理司の配置数増加や、児童への体罰禁止の法制化など、子どもの安全を守るための取り組みが高まりを見せている。国は児童虐待防止のために必要な保護者支援の一環として、保護者支援プログラムの活用を推進している。このような背景から、令和元年度「児童心理司の業務実態と専門性向上に関する調査研究」、令和2年度「日本における保護者支援プログラムの普及・啓発に関する調査」では、プログラム個別の特性などを把握し、適応可能なケースなどの整理を行った。
本調査研究は、これらの研究成果を踏まえながら、児童相談所外部機関と連携したプログラム活用を推進することを目的に実施する。具体的には、児童相談所において保護者支援プログラムの活用実態をアンケートで把握するとともに、特に外部機関との連携によって保護者支援プログラムを取り入れているいくつかの児童相談所を対象にヒアリングを実施し、連携する意義や手続き上のポイントなどを整理する。
母子保健分野においては、2008年にLancet誌において妊娠から子の2歳の誕生日までの栄養改善の重要性が提起された。また、SDGsでは「5歳未満の子どものstuntingやwastingについて国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦および高齢者の栄養ニーズへの対処を行う」と示されるなど、母子保健分野において栄養改善は重要な施策として位置付けられている。
このように国際的な機運が高まる中、日本の100年以上の母子保健分野における栄養施策などの経験を世界に発信し、持続可能な社会の実現に向けて貢献することが期待されている。
本調査は、日本の母子保健分野の栄養施策などに関して世界に発信すべき強みを明らかにしたうえで、2021年12月開催予定の東京栄養サミットにおいて日本の経験や知見を共有するために活用する資料を作成し、国際貢献に繋げることを目的として実施する。また、母子保健分野における日本の栄養施策の強みだけでなく、取り組むべき課題についても明らかにしたうえで、今後の政策検討のための基礎資料を作成する。
日本の母子保健制度では、母子保健法施行後に母子保健手帳や乳幼児健診など、日本独自の施策により、各種施策の推進、周産期医療や小児医療などの体制整備などの取り組みを進めており、妊産婦死亡率や乳幼児死亡率は世界有数の低率国となっている。
一方で、近年では児童虐待や子どもの貧困問題など母子保健に求められる課題は複雑化し、子どもの身体的発育の支援だけでなく、家族全体の心理社会的な課題への対応が求められている。特定妊婦への支援や産後ケア、産前・産後サポート事業を始め、さまざまな施策が実施されているが、乳幼児健診未受診の子供の虐待死など、制度の狭間で支援が届かない実態が浮き彫りとなっており、国、地方公共団体などにおいて、バイオサイコソーシャル的な観点での支援、保健・教育・医療・福祉が連携した支援を再構築することが求められている。
本調査は、諸外国での妊娠中から子育て家庭に対する母子保健施策の実態や心理社会的な課題に対する施策の方法、社会福祉や学校制度など他制度との連携方法などの実態を明らかにすることを目的として実施する。