調査研究課題9
児童厚生施設のあり方に関する調査研究
【事業の目的】
本事業は、総合的に児童厚生施設に関する状況を把握し、課題を整理、分析することを目的として実施した。具体的には、市区町村の児童遊園・児童館それぞれの担当部局、および大型児童館全館ならびに、児童屋内遊戯施設に対するアンケート調査及びヒアリング調査を実施し、定量・定性データ両面から得られた示唆をもとに児童遊園および大型児童館の現状と今後のあり方を検討した。なお、本事業では児童屋内遊戯施設を大型児童館の類似施設として位置付けた。
【調査方法】
児童厚生施設や都道府県、市区町村を対象に、量的調査および質的調査を実施した。具体的には、①児童屋内遊戯施設デスクトップ調査、②自治体アンケート調査、③大型児童館・児童屋内遊戯施設アンケート調査、④市区町村及び大型児童館・児童屋内遊戯施設ヒアリング調査の4種類の調査とした。①にあたっては、自治体が設置する児童屋内遊戯施設を対象とし、公知情報から特徴や施設概要を把握し、一覧化した。②にあたっては、全国47都道府県、1,741の市区町村へ悉皆調査を実施。③にあたっては、大型児童館18(悉皆)、児童屋内遊戯施設73(抽出)を対象とし実施。④にあたっては、アンケート回答施設からそれぞれ4か所程度、計9か所を抽出し実施したほか、全国的な児童館の関係団体としての所感を尋ねるために、児童健全育成推進財団にも実施した。②はメールによるExcelファイルの配布により、③はWebアンケート回答フォームのQRコードを記載した資料を含む一式の郵送により、④は半構造化インタビュー形式で対面またはオンラインにより実施した。アンケート調査の有効回答率は、②においては46.2%、③の大型児童館においては77.7%、児童屋内遊戯施設においては39.7%であった。 また、本事業を円滑に進めるため、児童福祉分野やこどもの遊び環境に詳しい学識経験者などで構成する事業検討委員会を設置し、5回開催した。
【調査結果・考察】
アンケート調査結果およびヒアリング調査結果より、現状、児童遊園については児童厚生員の配置や巡回、こどもの健全な発達に資する遊びのプログラムの提供などにおいて、本来期待される役割を十分に発揮しているとはいいがたい状況であることが明らかになった。一方、大型児童館については、多様な特色ある遊びの実施や、地域の他の児童厚生施設との情報共有・連携などの点において、本来の役割が概ね発揮されていると考えられた。また、大型児童館を屋内児童遊戯施設と比較した結果、大型児童館は「児童厚生施設の中核的役割」を果たしており、児童屋内遊戯施設は地域の子育て支援のニーズを踏まえた「屋内でのびのび遊べる空間」の意味合いが強いという傾向がみられた。
以上を踏まえ、児童遊園については、まず外遊びの場としての本来の役割を果たすために必要な3点の対応策案を検討した。①自治体職員への児童遊園の存在の重要性と役割の啓発、②児童館に勤務する職員による児童遊園での取組の実施、③児童館に勤務する職員からこどもに対する魅力的な外遊びの提案。他方、大型児童館については、その特徴・機能について児童屋内遊戯施設との比較を行い、今後も発揮すべき機能、強化すべき機能、新たに持つべき機能について整理した。大型児童館が強化すべき機能としては、①地域の児童館や子育て支援の関係機関に加え、近隣の児童屋内遊戯施設なども含む地域の社会資源との連携を通じた「地域エコシステム」の強化、②災害時の遊び支援の広域拠点としての機能の2点で、新たに持つべき機能としてはマクロとしての国(こども家庭庁)・メゾとしての大型児童館・ミクロとしての地域の児童館の連携機能の強化とした。
【提言】
考察を踏まえ、児童遊園および大型児童館に関する現状と今後のあり方の差を解消するために、主に国が実施すべき次の3つの施策案を提言とした。①「こどもにとっての遊びの重要性」特に「こどものための外遊びの場」を担保するための自治体への周知または通知、②大型児童館に関する強化すべき・追加すべき機能のガイドラインへの追記、③児童厚生員の役割の一部の強化に関するガイドラインへの追記。