
2023-06-29
PwCコンサルティング合同会社は、厚生労働省令和5年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)の国庫補助内示を受け、下記の事業を実施しました。
【事業の概要】
高齢者向け住まい(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)は、量的に急増していることに加え、事業者像、入居者像やサービス利用/提供の形態などが多様化し、質的にも大きく変化してきている。こうした変化を定点観測していくため、実態調査が行われてきた。特に、昨今、入所者像の重度化が進んでいることから、看取りを含む医療対応が求められるケースも増えている。
本調査研究は、これまでの調査研究を踏まえつつ、高齢者住まい運営事業者の運営実態(定員数、職員体制、施設設備など)や入居者像(要介護度、認知症の程度など)、介護・医療サービスの利用/提供状況といった基礎的情報を把握・分析することを目的として実施する。
また、今年度事業では、令和3年度・4年度研究の成果も踏まえ、介護保険制度改正・介護報酬改定の論点となることが想定される看護職員や協力医療機関をはじめとする医療機能との連携に着目し、生活施設である高齢者向け住まいにおける医療対応の実態を把握することを目的とし、調査・分析を行う。
なお、事業を進めるにあたって、令和4年度老人保健健康増進等事業「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究(PwCコンサルティング合同会社)」、令和3年度老人保健健康増進等事業「高齢者向け住まいにおける運営形態の多様化に関する実態調査研究(PwCコンサルティング合同会社)」等、過年度の成果物も参考にする。
認知症の要因の一つとして難聴が指摘されており、QOLや認知機能に影響を与え、介護予防や生活の質を維持していくうえで難聴の早期発見と介入が重要であるといわれている。一方、加齢性難聴などは気づかないうちに進行し、適切な支援や受診に繋がりにくいといった懸念も指摘されている。このため、難聴高齢者の早期発見と適切な介入に向けた仕組みの構築が求められている。
以上の背景をもとに、本事業では、難聴を早期発見し、適切な介入につなげるための仕組み構築のための課題分析を行い、その解決策等をモデル事業から明らかにすることを目的に実施する。
本事業では、上記目的を実現するため、難聴の専門家の参画をえながら、通いの場や医療機関等(以下、「通いの場等」という)高齢者が集まる場や外出機会が少ない高齢者が受診する医療機関等において難聴のリスクがある高齢者を抽出し、適切な介入につなげるモデル事業を複数の市町村で実施した上で、有識者等により組織する委員会において課題分析等を行い、報告書としてとりまとめる。なお、関連する機器の適切な利活用方法にあたり、関係者に求められる役割等についても分析する。
なお、事業を進めるにあたって、令和2年度老人保健健康増進等事業「自治体における高齢難聴者の社会参加に向けた適切な補聴器利用とその効果に関する調査研究事業(PwCコンサルティング合同会社)」の成果物も参考にする。
厚生労働省が発表した「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」では、第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づいた都道府県による推計から、令和5年度には約233万人、令和7年度には約243万人、令和22年度には約280万人の介護職員が必要となる見込みであることが示された。令和元年度時点での介護職員数は約211万人であり、将来的に上記必要数を満たすためには介護人材の確保が必要となる。
このような状況を踏まえ、厚生労働省は多様な人材確保策に取り組んでいる。その施策のうちの一つである「介護職の魅力向上」については、平成30年度に大規模イベントを実施したことに続き、令和元年度以降「介護のしごと魅力発信等事業(以下、「魅力発信等事業」とする)」として年代や就業状況などセグメント別に多様な手法・チャネルを用いて情報発信をしてきた。魅力発信等事業として丸4年が経過する中、その価値を公平な視点で測るとともに、一層良い取り組みとするためには、確立された枠組みに基づいて評価し、必要に応じて戦略やアプローチ方法を更新することが重要である。
また、介護のしごとの魅力発信については、都道府県でも地域医療介護総合確保基金を活用した事業(以下「都道府県事業」という。)が実施されている。国全体として介護のしごとの魅力発信を推し進めるためには、国事業と都道府県事業が相互に連携し、必要に応じて役割分担をしながら事業を実施することが望ましいため、都道府県事業についても国が実施する「介護のしごと魅力発信等事業」とあわせた戦略検討が必要である。
上記の背景を受け、本事業は魅力発信等事業の価値を示すとともに、より効果を上げるための改善策検討に資することを目的として実施するものである。具体的には、魅力発信等事業の成果を明らかにして今後の戦略を検討するとともに、都道府県事業における評価の実施基盤を整えるための活動(手引きの作成など)を実施する。
なお、事業を進めるにあたって、令和4年度老人保健健康増進等事業「介護のしごと魅力発信等事業の評価分析に関する調査研究(PwCコンサルティング合同会社)」の成果物も参考にする。
介護職員の確保・専門性向上が喫緊の課題となっている中、介護福祉士養成施設等(介護福祉士養成施設および福祉系高校を指す。以下、養成校等という)においては、2019年度からの養成課程への新カリキュラム導入、外国人留学生の増加等を含む学生像の変化などがあり、これらの変化を踏まえた養成校等の教員の指導力強化が課題となっている。
令和4年度事業では、養成校等の教員を受講対象者とする「介護教員講習会」実施機関によって、運営の体制や講習会の内容に差があり、一定の標準化が必要であることや、講習会受講者である教員側も、授業展開・講義準備・学生の個別指導や評価等にかかる手法の習得等、様々な課題があることが明らかとなった。
本調査研究では、令和4年度事業で実施した教員への実態調査のデータを活用し、教員の課題別・講義における対応状況別等の観点から追加分析を行い、講習会に求められる要件を整理する。また、令和4年度事業で大枠を整理した講習会の課題項目を前提とし、全国の講習会の事業者(講師含む)に対してヒアリング調査を実施し、事業者運営・講習カリキュラム等、複数の観点から事業者における課題を整理する。さらに、当該調査の分析結果を踏まえ、事業者に向けたガイドラインを作成する。
なお、事業を進めるにあたって、令和4年度老人保健健康増進等事業「適切な介護教員講習会のあり方に関する調査研究事業(PwCコンサルティング合同会社)」の成果物も参考にする。
介護職員の確保・専門性向上が喫緊の課題となっている中、介護福祉士養成施設等(介護福祉士養成施設および福祉系高校を指す。以下、養成校等という)では、2019年度からの養成課程への新カリキュラム導入が行われ、養成校等と実習先となる介護施設(以下、実習施設という)の双方に向け、介護実習におけるガイドラインが作成された。
しかしながら、実習施設の実習指導者によって実習指導方法や実習指導の質に差が生じているといった実態や、養成校等の教員と実習指導者の間の連携不足のため実習の質が担保されていないといった実態が指摘されており、質の高い実習教育の提供に向けて改善の必要性が指摘されている。
また、ここ数年は、新型コロナウイルス感染症の影響により、「一部の日程を実習施設で実施できなかった」とする養成校等が多かったという実態もある。実習施設で実習ができなかった場合、学内実習をはじめどのような代替手段が採られているか、その場合でも十分な効果が得られているのか等を明らかにした調査はこれまで見られない。
このため、本事業では、介護実習に関する養成校等の教員等が行う実習準備や実習中の巡回指導の実態、および実習施設の実習指導者が行う受入れ準備やの実習対応の実態等を調査し、当該調査結果をもとに、養成校等と実習施設の連携の在り方についても検討を行う。また、今後、実習施設での実習が困難な状況(災害、感染症)が生じた場合を想定し、専門職の教育/学びの質を担保するための工夫に関する情報を収集し、取組事例集としてまとめる。
令和3年度介護報酬改定において、「寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進」として、施設系サービスについて、利用者の尊厳の保持、自立支援・重度化防止の推進、廃用や寝たきり防止などの観点から、全ての利用者への医学的評価に基づく日々の過ごし方などのアセスメントの実施、日々の生活全般における計画に基づくケアの実施を評価する「自立支援促進加算」が新たに創設された。こうした自立支援にかかる介護を広く実施していくためには、各施設・事業所が現在独自に行っている取組について、客観的なデータも踏まえつつ、好事例を横展開していくことが求められている。
令和3年度老人保健健康増進等事業「介護現場での自立支援促進に資するマニュアル作成事業(PwCコンサルティング合同会社)」では、自立支援促進加算の趣旨・理念の理解促進と普及を目的として、自立支援促進に係る好事例を収集し、事例集を作成した。さらに、令和4年度老人保健健康増進等事業「介護現場での自立支援促進に係る調査研究事業(PwCコンサルティング合同会社)」では、自立支援促進加算の算定施設(悉皆)及び職員を対象として、現在行っている取組を調査し、今後推進していくべき自立支援促進に資する介護について、有識者の参加する検討会において検討等を行った。
本事業では、令和3・4年度老健事業で収集した自立支援に係る介護の好事例や各種調査結果を踏まえ、自立支援促進加算を算定している全国の介護保険施設を対象として、利用者ごとに実施されている自立支援の内容やその実施体制を明らかにするとともに、利用者ごとの支援計画及びケアプランの特徴を明らかにすることを通じて、今後推進していくべき自立支援促進に資する介護について、有識者の参加する検討会において更なる検討等を行うことを目的とする。