
2024-09-11
PwCコンサルティング合同会社は、厚生労働省令和6年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)の国庫補助内示を受け、下記の事業を実施しました。
【事業の概要】
要介護認定事務については、認定の公平性、中立性を担保しつつ、申請から認定まで原則として30日以内(介護保険法第27条11項)という原則の下、各自治体において事務の効率化、適正化に取り組んでいる。
一方で、要介護認定者数は年々増加しており、第1号被保険者の要介護認定者数は令和7年度には745万人に達する見込みとされている。(厚生労働省公表「第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」より)
厚生労働省では、これまでにも、認定審査会の簡素化等により、適正かつ迅速な認定の推進と自治体及び介護認定審査会の事務負担軽減に取り組んできたところではあるが、地方分権改革でも度々地方からの要望・提案が出される等、認定事務の効率化と負担軽減はなおも自治体における大きな課題として認識されている状況にある。
こうした状況を踏まえ、令和2年度には、要介護認定を行う調査員の要件に「介護に係る実務経験が5年以上である者」等を追加する対応も行われているが、令和5年度の地方分権改革の地方からの提案において、居宅介護支援事業者の認定調査員が対応できる認定調査の範囲の拡大といった要望も出されており、認定調査員の確保と質の向上は、継続して取り組むべき課題となっている。
本調査研究では、有識者による検討委員会を設け、これらの課題についての実態を把握するとともに、認定調査員人材を自治体がより確保しやすくするための取組に関する調査研究及び実証を行い、認定調査員人材の具体的な確保策を検討することを目的とする。
令和3年度介護報酬改定では、「寝たきり防止等、重度化防止の取組の推進」として、施設系サービスについて、利用者の尊厳の保持、自立支援・重度化防止の推進、廃用や寝たきりの防止等の観点から、全ての利用者への医学的評価に基づく日々の過ごし方等へのアセスメントの実施、日々の生活全般における計画に基づくケアの実施を新たに評価する「自立支援促進加算」が創設された。こうした自立支援にかかる介護を広く実施していくため、令和3~5年度老健事業では自立支援促進に向けた好事例の横展開に向けた事例集作成や実態調査を進めてきた。
令和3年度老人保健健康増進等事業「介護現場での自立支援促進に資するマニュアル作成事業(PwCコンサルティング合同会社)」では、自立支援促進加算の趣旨・理念の理解促進と普及を目的として、自立支援促進に係る好事例を収集し、事例集を作成した。また、令和4年度老人保健健康増進等事業「介護現場での自立支援促進に係る調査研究事業(PwCコンサルティング合同会社)」では、自立支援促進加算の算定施設(悉皆)及び職員を対象として、現在行っている取組を調査し、今後推進していくべき自立支援促進に資する介護について、有識者の参加する検討会において検討等を行った。さらに、令和5年度老人保健健康増進等事業「介護現場での自立支援促進に係る調査研究事業(PwCコンサルティング合同会社)」では、現在実施されている自立支援の内容やその実施体制、利用者ごとの自立支援に向けた個別支援計画及びケアプランの特徴を明らかにしてきた。
これまでの老健事業で収集した自立支援に係る介護の好事例や各種調査結果を踏まえ、本事業では、自立支援促進加算のための施設としての取り組みや利用者ごとの介入内容の効果・業務量等を自立支援促進加算の算定有無別に定量的・定性的に評価・比較できるよう、評価指標や調査手法を検討することを目的とする。
高齢者向け住まい(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)は、量的に急増していることに加え、事業者像、入居者像やサービス利用/提供の形態などが多様化し、質的にも大きく変化してきている。こうした変化を定点観測していくため、実態調査が行われてきた。
本調査研究事業は、これまでの調査研究を踏まえつつ、高齢者住まい運営事業者の運営実態(定員数、職員体制、施設設備など)や入居者像(要介護度、認知症の程度など)、介護・医療サービスの利用/提供状況といった基礎的情報を把握・分析することを目的として実施する。
今年度事業では、特に、サービス提供主体との関係性が多様な住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)といった、いわゆる“外付け型”の高齢者向け住まいに関し、サービスとの関係性に着眼した実態を把握し、調査結果をもとに事業モデルの類型化・特徴整理を試みる。
在宅高齢者が住み慣れた生活の場で療養し、自分らしい生活を続けるために地域における包括的かつ継続的な医療介護連携の推進が求められている。一方で、中山間地域等では医療資源の不足による医療提供体制の維持が懸念され、ICTの十分な活用による効率的・効果的な医療提供体制の維持、医療介護連携の推進が期待されている。
本調査研究事業においては、歯科医療機関等と在宅高齢者の口腔に関する相談等について、ICTを活用してモデル事業を実施し、適切な口腔ケアや治療を実施するフローの検討を行う。また、中山間地域の医療機関や介護事業所等に対して、歯科専門職とのICTを活用した具体的な連携内容の調査を実施する。併せて、本事業の内容を取りまとめた内容について報告会を開催する。
難聴になると、耳が聞こえづらくなるだけでなく認知機能にも影響を与える可能性があると言われており、生活の質を維持するためには、難聴の早期発見・早期介入が重要である。一方、加齢性難聴は本人が気付かないうちに進行し、適切な支援や受診に繋がりにくいことが懸念されているが、難聴を早期に発見し適切な支援に繋げることができれば、難聴の進行や認知機能の低下を遅らせる可能性が高まり、将来の要介護リスクを軽減することも期待される。
令和5年度老人保健健康増進等事業「難聴高齢者の早期発見・早期介入等に向けた関係者の連携に関する調査研究事業(PwCコンサルティング合同会社)」では、自治体等による難聴高齢者の早期発見・早期介入に関する取組を推進するため、自治体が難聴高齢者の早期発見・早期介入を行うモデル事業を実施し、その結果や検討委員会による議論を踏まえ、自治体等が新たに取組を開始する際に参考となるような「難聴高齢者の早期発見・早期介入等に向けた関係者の連携に関する手引き(PwCコンサルティング合同会社)」(以降、「手引き」という。)を作成した。
本事業では、昨年度に引き続き、自治体において手引きを活用した難聴高齢者の早期発見・早期介入に関するモデル事業を行い、手引きの実効性や取組のプロセスの検証を行う。また、自治体における難聴高齢者に対する支援の取組状況や手引きの活用ニーズを把握するための質問紙調査も実施する。これらの結果を踏まえ、手引きの内容を見直し、必要な改訂を行い、難聴高齢者の早期発見・早期介入の取組を推進することを目的とする。
高齢化が進み介護ニーズが高まる中、介護人材確保は喫緊かつ将来にわたる課題であり、介護分野への参入促進は極めて重要となっている。介護分野への参入を促進するため、都道府県等では介護に関する入門的研修、職場体験、マッチング等を組み合わせ、実際の入職までつなげる一体的支援を強化したモデル事業(介護の入門的研修から入職までの一体的支援モデル事業)が実施されることとなった。国は、今後このモデル事業を横展開し、より多くの自治体において介護の入門的研修から入職までの一体的支援が行われることを目指している。
上記の背景を受け、本調査研究は、自治体が自治体の介護人材確保対策に資することを目的として実施する。具体的には、定例会議の運営や個別のヒアリングを通じ、モデル事業実施状況の把握、効果測定、課題整理、好事例の収集、都道府県等による効果分析への支援等を行う。また、自治体が入門的研修やその後のフォローアップをどのように行い入職候補者を介護の現場に導いているかについて整理し、取組事例集としてまとめる。
なお、事業を進めるにあたって、令和5年度老人保健健康増進等事業「介護のしごと魅力発信等事業の評価分析に関する調査研究事業(PwCコンサルティング合同会社)」や、令和4年度老人保健健康増進等事業「介護のしごと魅力発信等事業の評価分析に関する調査研究(PwCコンサルティング合同会社)」等、関連する過年度の成果物も参考にする。
介護福祉士合格者数の80%以上を占める実務経験ルートに関しては、平成27年度国家試験(平成28年1月実施)より介護福祉士実務者研修(以下、「実務者研修」という。)の受講が義務化され、はや10年が経過しようとしているが、受講管理や評価方法などは実務者研修実施者に委ねられており、ばらつきがあることが想定されている。また、実務者研修に受講者を送り出す施設・事業所における送り出し時の指針や研修受講中のサポートの実態が分かっていないほか、受講生においても実務者研修受講の目的に温度差があることが想定され、研修の質について、一定以上を担保した平準化がされにくいことが懸念される。一方、これら実務者研修にかかる課題を取り上げた調査はこれまでほとんど見られず、効果的な実務者研修の運営/送り出し/受講に関する情報が明らかとなっていない。
このため、本事業では、実務者研修の実施/送り出し/受講の実態を定性的に把握したうえで、研修における一定の課題を整理し、当該整理状況を踏まえて研修実施の実態を定量的に把握する。そのうえで、実務者研修の質の担保と向上をどのように図るかの対応策の検討を行う。さらに、上記検討の結果を踏まえ、実務者研修実施者、受講者の送り出し元の介護施設・事業所、受講者に向けた一定の対応方針となるとりまとめ資料を作成する。
昨今、様々な在留資格を保持する外国人介護人材の受入れが進み、外国人がキャリアアップしつつ活躍できる分かりやすい仕組みを作ることが求められる中、在留資格「技能実習」、及び在留資格「特定技能」の外国人介護人材が国家資格を取得するために受講が必要となる介護福祉士実務者研修(以下、「実務者研修」という。)においては、介護事業者や従事する外国人介護人材に十分な情報提供がなされていない点、実務者研修実施者リストの多言語対応が不十分である点、スクーリング受講が必須となる科目における外国人介護人材向けの分かりやすいテキストの作成や、e-Learningなど自己学習を支援する教材の提供などの支援が不足している点など多様な課題が指摘されている。
一方、実務者研修の運営については、ここ2023年までの10年間で研修実施者数に3倍強の増加が見られ、新規事業者が多いことが想定されるほか、多くの研修実施において、使用テキストの実態やカリキュラム提示がホームページ上になされてないといった指摘も見られることから、実施団体による研修内容に違いがあることが想定されるものの、その実態は明らかとなっていない。
このため、本事業では、実務者研修の実施/送り出し/受講の実態を定性的に把握し、外国人介護人材にかかる実務者研修受講にかかる一定の課題を整理する。また、これらデータを踏まえ、実務者研修の質の担保と向上をどのように図るかの対応策の検討を行う。さらに、上記検討の結果を踏まえ、実務者研修実施者向けの外国人介護人材における指導のポイントの作成、及び、外国人受講者向けの実務者研修受講時の学習補助教材を作成する。
高齢化の進展や価値観の多様化、複合的な課題を持つ世帯の増加などにより、地域包括支援センターの業務負担感が制度創設当初に比べ増大している。多様な生活課題を抱えている高齢者が地域で安心してその人らしい生活を継続するためには、高齢者や家族が課題に応じたあらゆる社会資源を適切に活用できるよう、地域包括支援センターが総合的な相談を受け、包括的および継続的に支援を行うことが必要とされているものの、それを担う主任介護支援専門員の役割が明確でないことや、センターが連携する居宅介護支援事業所そのものの業務負担などが指摘されているところである。
これらの背景を踏まえ、本事業では、先行研究等を踏まえて包括的・継続的ケアマネジメント支援事業の一定の課題整理を行う。また、当該課題整理を踏まえ、市町村・地域包括支援センターへのヒアリング調査(定性調査)を行うこととしている。調査結果は、次年度以降、市町村・地域包括支援センターを取り巻く包括的・継続的ケアマネジメント支援事業の課題について定量的に調査するための調査項目の基礎資料として活用されることを想定している。
要介護認定は、介護サービスが必要な状態であることを示す要介護(要支援)状態にあるかどうかを判定するための基準として、介護保険制度創設時に導入された仕組みであり、同制度の入口として非常に重要な役割を担っている。
要介護認定は、認定調査員が申請者の状態を調査し記録する認定調査と、主治医の診察の結果を記録する主治医意見書の内容からコンピューター判定による一次判定を行い、地域の有識者からなる認定審査会においてこれを基に「介護の手間」を評価軸として議論し二次判定を行うという方式によって認定される。
また、要介護認定の一次判定を行うロジックは、認定調査の74項目および主治医意見書の一部の項目で確認された申請者の「能力」に関わる情報や、「介助の方法」および「障害や現象(行動)の有無」といった状態に関わる調査結果情報を入力することで、「行為区分毎の時間」とその合計値(要介護認定等基準時間)が算出される設計となっている。この各項目と行為区分毎の時間の関連性は、介護職員が要介護状態にある高齢者を対象に行ったケアを1分単位で観察・記録したいわゆる「タイムスタディ」のデータを統計的に整理・推計し作られた樹形図モデルで表されており、制度開始から2009年にかけて見直しがなされてきた。
要介護認定制度およびその判定の仕組みについては、規制改革実施計画(令和6年6月21日閣議決定)において、「厚生労働省は、現行の一次判定は、平成21年以降、判定の基となるデータの見直しが行われておらず、(中略)介護現場で要する手間をより正確に評価する観点から、在宅介護、通所介護等の幅広い介護サービス利用者のデータを追加しつつ、現行データを最新データに更新することも含め検討するとともに、認知症である利用者について、認定調査項目(認定調査項目の選択肢を含む。)等の検討を行い、必要に応じ、見直す」とされたところである。
こうした指摘を踏まえ、本事業では、以下を目的として調査研究を行う。